上野国立博物館で開催中の「日本国宝展」、行って参りました。
平日午後イチ行ってみたところ、開催してから初めての平日の10分待ちとのこと。土日祝祭日の行列は当たり前の平成館ですが、早い時期からの平日行列は珍しい。
待つこと10数分。
館内を巡りながら、早い時期の行列がわかりました。
やっぱり国宝は違うのです!
玉虫厨子に普賢菩薩像、縄文のビーナス、寝覚物語絵巻、等伯の「松に秋草図」、雪舟の「山水図」、三千院の観音&勢至菩薩。
通常の展覧会では、国宝と重要文化財が一緒に展示されているため、その違いというのはハッキリ意識されることはないのですが、国宝はまさに国の宝!
わが国が、私たちのご先祖さまが、如何に高い文化と知識、技術を持っていたのかということを再認識させるものでありました。
平安時代、まだ貴族の世の中だった時の鎧兜は、時代をあらわすように優美な姿。
草摺(くさずり) と呼ばれる、腰のあたりにぶらさがる小板が、桜の皮と思しきもので編まれているなど、日本人が1000年以上前から細部までこだわる民族だったことを伺わせました。
実物を見て驚いたのが雪舟の「秋冬山水図」でした。
あっさり描いているようで、意外に描き込んでいるのです。
山水図を見るのは初めてではないのですが、それに気づいたのは今回がはじめて。
目立つ線はすべて一筆で決めているのですが、背景の空などの淡い濃淡は薄墨で何度も塗り重ねて描いており、まるで白い絵具を使ったと見間違うほどです。
油彩のように何度も薄墨を塗り重ねる技法は、郭煕(かくき)や李唐といった北宋時代の画家の特徴。
ただ、見ての通りこの人たちの絵は水墨画というには異様に描き込んでいるのが大きな違いです。
雪舟の山水図は一見シンプルに一筆で決めている部分と、微細に描き込んでいる部分が混在してるのですね。
背景を先に描いたのか、輪郭を先に描いたのかわかりませんが(たぶん後者ですが)、目立つ線は一筆で決め、背景の空の微妙なトーンの変化は時間をかけて描き込んでいるようです。
雪舟は明に渡り、明の画壇には学ぶものなしと、宋朝時代の水墨画を持ち帰ったと言います。
しかし、宋朝の描き込んだ水墨画から吸収したものは、どうやら微細なトーンの変化だったようです。
中国のアートは実は西洋絵画的な完成度を求めるのに対して、日本の美術は言い方を変えると、もっといい加減で不完全なものも愛でる、というのが面白いところですが、この山水図にはその代表的な例に思えました。
ともかくも百聞は一見に如かずで、この「日本国宝展」。
ぜひお出かけいただきたいのですが、ひとつ体調を万全に見ていただければと思います。
国宝というからには、さまざまな経緯があって完成した文物なので、必ずしも良いものばかり憑いているわけではなさそうです。
最初に入った玉虫厨子から法華経、大般若経などの経文を見るうち、わたくしはいい知れぬ疲労感を覚えました。 それが見て行くうち、徐々に疲労感が消え、第五室の「仏のすがた」に入るやいなや、不思議な爽快感に変わりました。
5m50cmもある五重塔や観音&勢至菩薩などの仏像。
あの疲労感と爽快感はいったい何なのでしょう。
不思議な思いを感じながら、平成館を後にした次第です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます