ムンク展、見てきました。
今まで繰り返し開催されてきたムンク展ですが、今回はあの「叫び」が来るということで、金曜日の午後1時で20分待ち。まあ想定内でしょうか。
ムンクという人は、優れたデザイナーでもあるというのは、前にも拙ブログの記事に書いたことがありました。
ムンクの「叫び」~凄さの秘密とは?
ムンクは誰が描いても「叫び」に見える構図を編み出したわけですが、やはり今回の展覧会を見て実感したのは、ムンクの絵はムンクでないと描けないなということです。
絵画というのは、心の中に澱んでいる文字通り「澱」(おり)を吐き出す意味があります。ムンクのように実際に精神を病んでいた人なら、それはなおさらです。
ムンクが病んでいたのは、今で言う「うつ」だったそうで、これは誰もなりうる病気ですね。だから現代人の間でもムンクの絵に共感する人は多いのかもしれません。
うつに関しては私は門外漢であるので、それについて何とも言えませんが、ごく短期間で描いただろう筆跡を見ると、調子の良い時に一気に描いたのではないかと思います。
私自身の考えだと、絵を描いて「心の澱」を出していたとすると、もっと時間をかけて出すのではないかと考えます。だから、うつがひどくなっていない、限られた時期に一気に描き上げていたのかもしれません。
その点、4点ある「叫び」は、どれも丹念に描かれているので、ムンク自身このテーマを繰り返し描くことで、自己治癒をしていたことも考えられます。
また、この画題は当時からたいへんな人気で、版画など、かなりの点数を求められていたこともあるでしょう。
興味深かったのは、いわゆる「自撮り」を最初にした人がムンク だったと言うことです。当時は高価だったコダックのカメラで、ムンクは自分自身の姿を撮影したのですが、これがなかなかの男前です。
ボナールもそうだったけど、あちらの画家には男前な人が多いですな。
自画像が多いと言うのも何やらうなずける話ですが、それ以外に自画像というのは、それを描くことによって自分の内面に向き合う意味があると思います。
私自身はイラストで自分の似顔絵を描くことはあっても、自画像によって自分自身に向き合うなど想像もしたことがありません。 絵によって、自分に向き合うと言うのは、なかなか大変な作業です。
一時期、ユングの部屋の時代は、自分の心の中を掘り下げる作業をしたことがあるのですが、 もう多分できないでしょう。
やったら死ぬ(笑)。
ムンクは私にとって、ダリとともに、自分が画家になるきっかけを作ってくれた尊敬すべき画家でしたが、歳とともに自分が変わってきたのでしょうか。
それとも、若い私が彼らの本当の絵を理解しなかったのでしょうか。
今回の展覧会では大いに感銘を受けたものの、受けるチャンネルが変わってきたように思えます。