漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

Another

2012年05月22日 | 読書録
「Another」 綾辻行人著 角川書店刊

を読む。

 ミステリーの要素があるホラー。ある学校の決まったクラスには、いないはずの人間がひとり増えていて、しかもそれが誰だか誰にもわからないという、座敷わらし的な設定が物語の根底にある。筒井康隆の短編に「座敷ぼっこ」という幻想的な作品があったのを思い出した。ただし、「Another」の方はかなり凄惨な物語になっている。
 面白かったのかといえば、現代版「座敷ぼっこ」というアイデア自体はともかく、初期設定には多少無理があって、力技で書き始めているような気はした。分量が半分くらいだったらもう少しよかったかもしれないと思う。それほど幅広い展開があるわけでもないのに、この分量は長すぎるし、同じような記述が何度もあるのは、多少疲れる。前回記事の「太陽黒点」と同じように、最後まで読んでから最初に戻って読めば、また新鮮な読み方ができるというトリックが使用されているから、そこはさすがだと思ったけれど、元々がそうしたアイデア一発の本格推理の作家のようだから、大長編は向かないのかもしれない。
 聞くところによると、現在続編を執筆中とのこと。もしかしたら、これを「貞子」化させようというつもりなのだろうか。

 昨日の金環日食は、曇りかなと覚悟していたけれど、思った以上にはっきりと堪能できて、嬉しかった。