漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

それから

2006年09月04日 | 読書録
 昨日、真鶴までの電車の車中で

 「それから」 
 夏目漱石著

 を読みました。
 なるほど、こんな話だったんですね。何となくあらすじだけは知っていたから、ずっと読んだ気になっていたけれど、全く印象は違いました。
 何となく知っていたストーリーでは、主人公が友人に譲った女性をやっぱり好きだったのだということに気付いて、奪ってしまうというものでした。それだけの知識では、ただの姦通小説としか思えませんでしたが、実際に読むとこの小説の核心は実はそこには無くて、実社会では全く無力な存在にも関わらず、例えば「自分らしく生きる」とか、そんなことばかり考えて他人を軽く見てばかりいる主人公が、現実の世界に直面せざるを得なくなるという話でした。
 「三四郎」もそうですが、現代でも全く色褪せず、読むことのできる作品ですね。むしろ、「ニート」というものが大きな問題とされる今こそ、あるいは若い人達に向かって実は画一的な『個性』を売るマーケットが肥大している現代にこそ、切実かもしれません。
 
 「それから」は、実はずっと昔、高校生の頃、森田芳光監督松田優作主演の映画で観た事があるのですが、映像がとても綺麗だったという以上には覚えている部分がありません。それで今日、DVDを借りてきました。原作を読んだ印象を踏まえつつ、もう一度観てみたいと思います。