先週木曜日のホール、比嘉大吾復帰戦のTV放送は関東ローカルでしたが、友人の厚意により見ることが出来ました。
比嘉とジェイソン・ブエナオブラの試合はフル、吉野修一郎vs富岡樹戦はラウンドカットされての放送でした。
これは残念。CSフジの生中継放送、何とか復活してもらえんですかね...。
比嘉大吾は119ポンド契約で再起でしたが、体つき自体に、特に無理も無駄も感じませんでした。
むしろ、これでよく112に落としてたなぁ、と思うくらい。
スピードもパワーも、やはり相手が違うから、多少目減り気味に見えるのは当然として、通じないとかいう風では全然ない。
これなら数試合こなして、コンディションが上がってくれば、充分バンタムでやれるだろう、という印象でした。
何しろ長期ブランクのあとで、しかもけっこう背の高い(170センチ弱、というところか)サウスポーを再起初戦に当てるという、何考えてるのかようわからんマッチメイクでしたから、多少もたつく感があっても、やむなし。
もっとも比嘉はサウスポーをあまり苦にしないようで、普通に内外に踏み込んで、深いパンチを打っていましたが。
サウスポー相手に、右を外から振り上げるようなパンチは、当てやすい反面、相手からも見やすいので、なかなか簡単には攻め崩せないものの、それでも威力はあり、6回に相手を「決壊」させてTKO勝ち、というのは、順当な流れにも見えました。
今後について、眩いほど明るい展望が見える、という試合ではなかったけど、まあ普通に無難に...相手のタイプを考えたら充分、という再起戦勝利に見えたんですが、あちこちで報じられているように、試合後のインタビューには驚かされました。
こちらの記事が一番詳しいですが、場内の応援団からの声援に、気持ちを動かされている反面、内心には迷いがある、ということなんでしょうが。
何しろ、フジテレビのインタビュアーが気の毒に思えるほどでした。そんなこと言われてもなあ、という。
結果、応援団に大吾コールを要請するという、いかにもな「お茶濁し」に出ましたが、いつもなら「しょうもないことを」と思うところ、今回に限っては無理もない、と同情したくなるほどでした。
正直言って、そんな試合なら最初からせんほうが良い、と斬って捨てたい気持ちもあります。
しかし、本人は色々と言っていましたが、結局のところ、もっとボクシングをしたい、燃えるような気持ちで闘いたい、という思いでいるのでしょう。
そして、それがかなわぬ理由について、全てを言えるわけではない。その現状をどうにかしたい。しかし...という。
その内実について、傍目にはわからない、見えない部分の話もあれこれとあるでしょう。
ただ、傍目に思うのは、ボクサー本人が思うことが全て正しいわけではないにせよ、さりとて、周囲の人間の立場、面子が何よりも優先され、選手の思いを全て踏みつけにして良いわけでもないだろう、ということです。
全ての状況は、あくまで、選手の心技体が充実し、その上で闘い、その内容と結果を多くに見てもらうために、整えられているべきものである。
言ってみればそれこそが「プロ」の本分であろう、と。
比嘉大吾本人のみならず、周囲にいる全ての人々に言いたいことは、それだけです。
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で、放送の扱いはともかく、この日の「メイン」では、見られたラウンドの限りですが、その「本分」がしっかり見られたような印象でした。
初回早々、左との「間」をそれまでより縮めて当てた右でダウンを奪った、富岡樹のセンスに目を見張りましたが、吉野修一郎は若き才能に対して怯まず、じりじりと攻め立て、強打で挽回していく。
7回はまた富岡がジャブ、逆ワンツーを好打するも、8回に吉野が攻め立て、富岡が手を出せなくなり、ダウンと同時にTKO。
富岡は足を使って捌く流れを保ちたかったが、終盤の8回にそれを崩され、クリンチしてでも吉野を食い止めたかったところでしょうが、それが出来なかったのが残念でした。
吉野の攻めが厳しいものだったのも確かですが、富岡の側にもこの辺は「不備」があったかな、と。
吉野の強さは、中谷正義が去った日本のライト級では、間違いなく最強と言えるでしょうし、タイトルマッチ二度目の挑戦も敵わなかった富岡も、光るものを充分に見せてくれた。
日本タイトルマッチとして、どこに出しても通る、納得感のある試合。
両者が持てる力をほぼ全て出し切った上での決着が見られた、そんな試合でした。
そして、比嘉大吾もいずれ、こんな試合を闘えるところに、なんとか辿り着いてほしいものだなぁ、と、そんなことを思ったりもしました。
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そんなことで、一曲。
THE BLUE HEARTS「月の爆撃機」です。