さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

充実のウェルター級に、技巧派王者誕生 長濱陸、無敗クドゥラとの熱戦に勝利

2020-02-28 09:35:05 | 関東ボクシング



ということで、3月から全試合が中止となったボクシング、当面最後の興行ということで、昨日はBoxingRaiseのライブ配信を楽しく見ておりました。
この興行自体は、色々心配でもありましたが、試合は選手諸氏が全力で闘う熱戦続きでした。

しかし何と言ってもメインの熱戦に尽きる、というところで、簡単に感想を。


OPBFウェルター級王座決定戦は、無敗の日本ユース王者、アフガンの強打クドゥラ金子の戴冠なるか、と目された試合でした。
相手は当初、韓国人選手だったそうですが、上位ランカー長濱陸に変更、試合開催も一ヶ月遅れ。

これがどう作用するものか...当初の通りなら、普通にクドゥラが勝つのだろうけど、元々ミドル級、未完成なれど筋の良さも感じるボクサーファイター長濱が、徐々に階級下げてウェルターでベストフィットすれば、良い試合になるだろう、と思ってはいました。


初回、思ったよりもさらに長濱が良い。ジャブが上だけでなく下にも飛んで、ペース掌握。クドゥラ、最後に右一発だけ。
2回、長濱が距離を取って左から当てていく。左ボディジャブのヒット目立つ。バッティングでクドゥラ痛そう。カットあり。

3回、長濱左のボディジャブからワンツー、右クロス好打。さらにワンツーをボディへ。
クドゥラ、まだ序盤だが動きが重い。少しだが口が開いているようにも。
4回、クドゥラ左ボディ当てるも、長濱が連打でお返し。右フックヒットして回り込む。
クドゥラ一発に対し、長濱はボディを組み込んだ連打、間が空けばジャブ、という具合。手数もヒット率も断然上。

4回の途中採点は4対0が三者。誰の目にも明らかに長濱リード。

5回、クドゥラのワンツーが長濱のガードの間を通る。長濱クリンチに逃れる。
クドゥラなおも攻め立て、右をヒット。拍子木の音をまたいでゴングまで猛攻。初めてクドゥラの回。
ただ、長濱もしっかり左返していて、応援の声が期待するほどのダメージではない。

6回、クドゥラ攻めたいが長濱がこつこつボディを打ち、下がらない。クドゥラの方が押されて下がり、ロープ背負う。
長濱、巧いインファイトを見せる。クドゥラ左フックも、長濱右クロス返す。クドゥラ得意の右アッパーも浅いヒットに留まる。

7回、クドゥラ手数増やして出る。長濱乱れずジャブ上下、右クロス、左ボディの連打で攻め返す。
長濱もう少し強打したいところだが。
8回、長濱の手数がまさり、クドゥラ出たいのに押されて下がる。長濱押して攻め、ボディ打ちを忘れない。

途中採点は7対1で揃う。これまた同感。

9回、長濱左ボディからワンツーヒット。左ボディジャブで下がらせ、右サイドに出て右フック。良い攻撃。
長濱少し疲れも見えるが、力まず当てては動いている。クドゥラは相当「削られた」状態で、ヒットがあっても本来の威力にはほど遠い。

10回、両者顔も腫れ、きつそう。クドゥラ、右のボディブロー。これがまともに入って長濱後退。ガードを締めて前に出てしのぐが、手がぱったり止まる。ダメージあり。
クドゥラ左ダブル、右クロスで追撃するが、長濱懸命に上体を振って外す。しかし長濱、膝が伸びているのがはっきり見える。
元気なクドゥラなら一気に攻めて、KOチャンスを作れる場面だが、そこまでには至らず。クドゥラ、5回以来のポイント。

11回、クドゥラがロープ際から左フック好打。追撃したいがワンツー返される。
長濱きつそうだがクリンチで休み、手を出してまた休み、という具合で凌ぐ。両者、際どく右相打ち、長濱の方が浅いながら当てる。
クドゥラ出て、ワンツー当てる。長濱少しのけぞる。地味に数を当てているのは長濱だが、自らクリンチに出る回数が多い。印象はどうか。ややクドゥラか。迷う回。

最終回、きつそうだった長濱が踏ん張る。先に打って回り込み、頭下げてクリンチ。「凌ぐ」ことに徹した割り切りが見える。
見映えは悪いが、予想不利の立場での試合で、強打者相手にリードした展開での最終回なのだから、当然の選択。
その上でボディジャブをしっかり打ち、距離を確保してもいる。そしてまたクリンチ。

クドゥラ、間合いを外されたかと思えば、巧く身体を寄せられる、という具合で、思うように攻めさせてもらえない。
焦って出たクドゥラの右を、小さい動作のスウェイで外した長濱、その体勢から身体を回しての右ショートカウンター。
まるでメイウェザーばりの一撃。最終回にこれをやるのだから、まだ余力があったということか。ポイントは長濱。


採点は9対3が二人、10対2がひとり。私もだいたい同じ。
長濱陸がクリアな判定勝ちで、OPBFウェルター級王座獲得、クドゥラ金子に初黒星をつけました。



長濱陸は井上岳志、永野祐樹といったところに敗れてはいますが、日本の重いクラスの選手の中で、体格に恵まれ、スタイルも基本的には筋の良さを感じさせて、これはもう少し磨けば、良いところに行くだろうなあ、と思う選手でした。
新人王のときはミドルでしたが、体重には余裕があったのか、クラスをひとつ下げ、ふたつ下げて、今回の戴冠となりました。
昨年は移籍もしていて、好選手の多い角海老ジムという練習環境も、この日の充実した試合ぶりに繋がったのでしょう。

永野祐樹を破り、日本最強を証明した小原佳太にとって、次の脅威は強打クドゥラか、拳が癒えれば九州の雄・別府か、と思っていましたが、大柄で技巧に優れ、しぶとさのある新たな敵が浮上してきた、という一戦でした。
試合後のインタビューでは、両方の拳を傷めていた、という話でしたが、それが癒えて、要所でもっと力を込めて打てるようなら、さらに今後が楽しみです。

クドゥラ金子、BoxingRaiseの動画で多くの試合を見て、府立地下でも一度直に見ましたが、今回は予想外の完敗、という印象でした。
元々大柄な長濱と比較すれば、ある程度小さく見えるかも、とは思っていましたが、それだけに留まらず、身体つきが「薄く」見え、最初からいつもの力強さが欠けていたようにも。
長濱とは逆に、クラスを上げての再起を考えた方が良いのかも、と思ったりもしますが、実際のところはど知れようもありません。
しかし、これまでの試合で見せた、正確な強打と、今回も片鱗だけは見えた迫力ある攻めは、やはり魅力的です。

外国人ボクサーの常で、たったひとたびの敗戦が何もかもを覆してしまうなんてこともあったりしますが、是非、そんなことのないように...と、ファンとして「余計」なことかもしれませんが、願っております。




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6 コメント

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Unknown (宇弓)
2020-02-28 10:24:47
これぜひ行きたかったんですが、
なんか件のウイルス騒動のあおりで、当日券販売ナシとかで結局行けませんでしたが、

いやいやクドゥラやられたんですね。
まあ前戦の尹との試合をホールで見てましたが、
確かに攻撃力は魅力的だけど、ちょっと体全体の動き感が少ない感じなのが気になって、

国内レベルじゃ攻撃力だけで何とかなっても、
そっから上はちゃんと動ける相手だときつくなるって、
典型的な日本レベルの強打者パターンになるかも??
と確かこちらにも書いたと思いますが、
・・・案の定、このクラスで国内じゃ結構動ける長濱陸さん相手だとその部分を突かれたと。

まあなんにせよクドゥラは、現時点じゃ前評判てか期待値が高過ぎた感じですかね。
まああのキャラと生い立ちとか、いろんな意味で期待値上がる要素は多かった感じですが。

しかし長濱陸さんはアジア1を証明したいから日本王座も狙うとか言ってて、
その意気や良し!!
受けて立て小原☆

しかしやっぱ行きたかったなあと思わせるいい興行だったようですが、
・・・別に客の自己責任なんだから、興行やるんならばチケ売ってくれればいいのにと思いますが。
こちとらデング熱騒動真っ只中の代々木にも、
ロマゴン八重樫見に行って感涙してたんだっての(殉死笑

・・・・んまあなんにせよ、
速いとここのウイルス騒ぎが収束してくんないと、
もう日本全体スポーツ観戦どこじゃない感じでかなわんですが。

だってこれもし東京五輪中止なんてことになったら、
今年はボクシングはじめ、もうあらゆるすべてのスポーツ興行なんて全部やれないんじゃ??

それこそケンシロウ君とか京口とか、みんな海外で安い金でも敵地行ってでもやらないと、
金満第1主義の各団体は、日本やアジアの事情なんてガン無視で、
あっという間に休養王者とか暫定王者とかやられまくる気が(憂慮

・・・そういう意味では、瓢箪から駒というかなんというか、
否応なく日本ボクサーの海外進出が促進される年になるやもですが。
そもそもが井上はもちろん、
井岡選手や岩佐や伊藤は海外でやりたがってんだしと。
返信する
コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2020-02-28 20:02:40
>宇弓さん

前回は足止めて打ち合って済んだ、という試合でしたが、今回は長濱がこれまで以上、最高の仕上がりで、クドゥラはどうにも...という状況でぶつかった、という印象でした。今回の試合に関しては長濱のクリアな勝ちですが、それでも5回、10回と、たった一発で猛攻への流れを作ってもいて、良い状態のときならあそこから...と思ったりもしました。これまでのクドゥラが過大評価だった、というのを、この一敗で断じられるものかというと、私はまだ保留、というところです。
興行中止に関しては、無観客試合にして配信を見て貰う、という方針の格闘技団体もある、という話をある方から聞きました。もちろん、普段から配信をビジネスとして確立させているところだからこそ出来ることです。ボクシング界の後進性が、有事の際にあらわになった一例かもしれませんね。
今後の収束なるかどうかは、もう実際どうなのか、という話とはほぼ関係ない「趨勢」がどうなるか、という話でしょう。甲子園、春の選抜大会が行われるかどうかが、次の分岐点になるかも、という意見があるそうで、なるほど開催時期も微妙、大メディアと関わりが深いスポーツ団体の代表格でもあり...もしも情勢が変わらず、ないしは悪化して、甲子園も...となったら、話は一気に五輪にも繋がってしまうかもしれませんね。
こうした「有事」において、ボクシング界も色んなものが炙り出されるのかもしれません。それはそれで、興味を持って見ておこう、と。そう言い聞かせて、かろうじて冷静さを保ちつつ、ですが。

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Unknown (宇弓)
2020-02-29 09:27:15
だから長濱陸さんの試合後の、
クドゥラはいつも同じ距離で同じ位置にいるから対応しやすかったってコメントが、
まさに私が動き感が足りないと感じたのと同じなのかなと。

攻撃力があっても、常に一定の距離と位置で打って来るならば、
その位置と距離をちょっとずらすだけで、打たれないし、食らっても連打はもらわないから対処できると、
私みたいな素人でもそう思うんだから、長濱陸さんがそこを突かないわけはないと。

だからその辺が竹迫とかにも通じる話ですが、
正面からの打ち合いにはめっぽう強いけど、
長濱陸さんや加藤くらいに動ける相手とやったら、途端にバタバタするっていう、
・・・やはりこの辺が、純・日本レベル強打者で終わるか、その上に行けるかの差なんだろうなあと。
村田はデビュー戦で、あれだけ動ける柴田をぼっこ凹にしてんだし(強笑

だからクドゥラにしても竹迫にしても、
今後どれだけ動きながら攻められるか、もしくは相手を動かさないように攻められるかってのが課題になるのかなあと。

それこそ井上父が幼少から井上にやらせてたように、
動きながら打つ!!打つ前に動く!!打ったら必ず動く!!
ってのがどれだけ身につくかですが、

ある程度キャリアが固まってる今から、しかもそれでやってきて成功体験バッチリあるのに、
そんなに効果的に変われるかどうかが興味深いですが。
少なくとも現状のレベルでは、長濱や加藤以上に動けてパンチもある相手には確実にやられるわけで。

しかし春のセンバツが今後のスポーツ界の指針になるってのはなるほどですね。
あの新聞社がバックなの巨大なビジネスを中止できるのか、
あれが行われるならば、別に他の競技もいいじゃんってことになし崩しになりそうだし⦅爆

いや本当に、こんな新型ウイルスなんて、科学的や医学的に完全に解明されてないようなもんは、
絶対これが安全でこれがダメなんて基準や指針は誰にも出せないわけで、

致死率とかだって、別に普通の風邪やインフルに比べて特別高いわけでもないんだから、
あとは世間的にこれをどこまで受け止めて許容するかって、
ある種「気の持ちよう」の問題なんだから、

・・・本当に、
とにかく今世界中に流れてるこの、
何かよくわかんないけどヤバいんじゃ??って厄介な「雰囲気」ってものが、早く収まってくれないものかなあと。

本当に、トイレットペーパー買い占めとか、
マジで社会全体が、デマとかなんとかごちゃまぜで、
どんどんあの震災の時のような暗く危うい空気になって行ってるしと(危惧
返信する
コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2020-02-29 13:08:57
>宇弓さん

その辺、動くことと打つことの配分を巧くやれる選手は、少年時代からボクシングを始めた好素材に多いような気がしますね。そういう相手に対し、動いているときはなかなか打てるものではない。しかし、柴田国明がかつて言ったように、ボクシングは「つまりは、止まった瞬間を打てるかどうか」なのだとすれば、クドゥラは「出来る方」だと思っています。今回も二度、それが出来て攻勢を取りました。村田と竹迫、クドゥラでは、例示された試合の時点における、ボクサーとしての成熟度も違うので、比較は難しいというか、なんとも言えないところですね。竹迫も再戦では(反則打が余計でしたが)捉えて打ち込む場面は作っているわけですし。
もちろん、動きと打つことを矛盾無く両立させる指導は、大いに必要です。そこは同感ですね。井上尚弥は、素質ある少年ボクサーに、導入教育の時点で、打って動く、動いて外すことを基本として正しく身に付けさせた成功例、として称えられるべきです。単に怪物と言って片付けていては駄目だ、と。

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Unknown (椿)
2020-03-08 04:35:08
リングに上がったらクドゥラがいつもと違う。顔似艶ないし、身体がひと回り小さい。
スピードもないし、脚に踏ん張りがない。
試合後、応援に来ていたクドゥラの弟に声かけて聞いてみた。
軽量後に食べた肉にあたり、吐き気に下痢、胃が痛く気持ち悪く当日の昼まで寝ていたそうです。
話し聞いてる時に弟の元へやってきたクドゥラ選手は涙顔で"ごめんなさい"一言言ってエレベーターで帰ってしまいました。
この1敗からがクドゥラ選手のスタートのような気がします。
ベストコンディションでなくても勝てるクドゥラ選手を見ていきたいですね。
返信する
コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2020-03-08 16:09:50
>椿さん

確かにクドゥラが良い状態ではないのが、序盤から見えましたね。早々に口も開いてましたし。体つきも「薄く」見えました。長濱が元々、上のクラスの選手であり、それと比較してしまうと余計にそう見えましたね。
しかしその辺の事情は、目に見えない部分の話でもありますね。減量自体もきつかったのかもしれません。長濱の闘いぶりが過去最高に良かったのも確かです。
クドゥラの今後に、まだまだ期待しています。この一敗だけで色々と「追い込まれる」ようなことのないよう願っています。

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