さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

否応なしに時代は変わる

2011-05-19 22:29:29 | その他
時代というものは、変わるときには否応なしに変わるもんだなぁ、と思っています。


高山勝成、山口賢一ら、いわばフリー組の海外進出を影ながら応援したい、とか書いていたのがつい昨年のこと。
しかし今年になり、あっという間に日本のトップボクサーたちが海外で闘う方向性が定まった感があります。

MGMで鮮烈な初回KO勝ちを見せた石田順裕は、7月9日にポール・ウィリアムスとの対戦が決定。
同じ興行で下田昭文がリコ・ラモスとの初防衛戦。
この興行は全米に中継されるイベントであり、WOWOWでも生中継が行われるそうです。

そして話はこれだけにとどまらず、日本のタイトルホルダー達ほぼ全員に、海外での防衛戦が噂されています。
西岡利晃はラファエル・マルケスと交渉中。粟生隆寛も次期防衛戦は米国で行う可能性あり。
内山高志もひょっとしたら、という話だそうです。
今のところ、国内での次期防衛戦を予定しているのは最軽量級の井岡一翔くらいなものでしょうか。

これら一連の動きは、けっして選手や陣営の心意気の話ばかりではないでしょう。
日本のボクシングジム、プロモーターがかつて思い描いていた、従来型の成功...
アルファベット・タイトルをひとつ獲り、8千人~1万人規模の会場で高いチケットを売り、
地上波のTV局から放映権料を得て、後援者のご祝儀がそこに加わる、といった形での成功が、
もはや国内ではほぼ見込めなくなった、という現実から来ているのだと思います。

この現実は、ことに、この10年くらいの間に、誰にも否定できないものになりつつありました。
辰吉丈一郎の事実上の引退、畑山隆則の短命、若き西岡利晃の挫折により、日本のボクシング界は、
対世間という面においては、スター不在の時期を過ごしてきました。

その事実に危機感を抱いた業界の支配体制は、実力派の徳山昌守や長谷川穂積が自分たちの意のままにならない
マネージャーと契約する選手だったこともあり、対世間へのアピールとして、亀田兄弟という御輿を担ぎました。
この極めて愚かしい舵取りは、目先の経済的利益と引き替えに、ボクシングというスポーツの社会的信用を失墜させました。

これは日本の業界関係者が、従来型の成功を少しでも維持しようと務めた結果の失敗である、とも言えます。
彼らは、選手との独占的な契約により、プロモートとマネージメントの権利を同時保有し、自らの権益のために、
世界のリングと隔絶した、敢えて言うなら自ら望んで隔絶した状況を作り、時には世界的に見れば価値がない試合を
ボクシングに詳しくない世間に対して「世界タイトルマッチ」と称して、提供してきました。

そういう状況の中で体制側のプロモーターは、徳山昌守vs長谷川穂積戦の構想を拒否し、
徳山が失意のまま王座を返上して引退したのち、長谷川穂積の獲得に成功します。
そして長谷川は勝ち続け、徐々に正当な評価を受け、一定の知名度を得て、スターの座に就きます。
しかしその長谷川の長期政権の影で、やはり時代は少しずつ変わり始めていました。

一昨年、帝拳プロモーションが入札で負けたことにより実現した西岡利晃のメキシコ遠征は、大きな驚きでした。
あの帝拳ですら、選手を海外に出す時代が来たのか、と。

我々が(人によっては涙して)喜んだ西岡利晃の大器晩成は、しかし日本での興行において、かつて辰吉丈一郎を、
或いは鬼塚勝也を擁したプロモーターが得たような、従来型の成功を保証しうるものではないという現実。
確かに厳しく言えば、西岡は「遅かりしチャンピオン」なのかも知れません。
しかし、雌伏の時を経て王座に就いたとき、彼への評価とはまた別のところで、ボクシングというスポーツそのものが
その価値を大きく下落させていたこともまた、事実だったのでしょう。

おそらくTV局は、この経済不況下において、自らその信用や評価を下落させているボクシングに対して、
もっといえば業界が提供する「世界タイトルマッチ」に対して、さしたる価値を認めていないのでしょう。
長谷川メインの複数世界戦興行にしても、結局は長谷川個人の持つ一定の視聴率獲得能力が評価されての放送であった。
それ故に、長谷川が敗れて再起の意思表明が無い今、西岡や粟生の次戦が海外で、という話が次々と持ち上がっています。


しかし、決して良い話ばかりとはいえない内実はどうあれ、やっと時代が変わりつつある、ということは、
ファンとしては喜ばしいことでもあります。
今まで得られたものが日本国内で得られないなら、それを得るために、勝ち取るために海外に出て行く。
ボクシングは結局、勝負の世界なのですから、それは自然なことだし、健全なことだと思います。

さらに言うなら、今まで、プロモートとマネージメントの権益を両方とも我が手にしていた業界の傲慢が、
ようやく正されるのであれば、それはどのような原因であろうとも、まずは歓迎したい気分です。

もちろん、先の石田や、一昨年の西岡のように、見事な勝利と、それにまつわる歓喜ばかりが待っているわけではないでしょう。
今後、我々が若手時代から応援してきた日本のホープ達が、厳しい敗北を味わい、数々の悲嘆が生まれると思います。

しかし、それらの積み重ねの果てに、優れた才能が、然るべき指導と試合の機会を得て、真にワールドワイドな舞台に立ち、
栄光を目指して闘い、時にそれを勝ち取る時があるはずだ、と信じてもいます。


まずは石田と下田ですね。WOWOWによる生中継、大いに楽しみです(^^)



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と、ここまで書いて石田vsウィリアムス戦が中止になるらしい、と知りました。

うーん、やはり険しい闘いです...。



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