さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

何とか見られました

2011-02-01 00:01:39 | 関東ボクシング
今日はTV観戦を諦めていたのですが、TV大阪を視聴できるネットカフェに潜り込んで、
放送を見ることが出来ました。TV大阪が映らないお店もあったのですが、さいわいにも二軒目で、
視聴出来るお店に当たりました。うまく見られて良かったです。


今日のダブル世界戦、内山の試合はもちろんですが、そこまでしても見たいと思った理由のひとつは、
なんといっても下田昭文の世界初挑戦があったから、ということも大きかったです。

左のカウンターに抜群の切れ味を持ち、勘も良く、身のこなしも良く、センス抜群でありながら、
どうもあちこちにボクシングの基本というか、それ以前の常識が身についていないようなところがあり、
加えて精神面での脆弱さ、不安定さをさらけ出しつつ闘うこのサウスポーは、
良くも悪くもファンの耳目を引きつける存在であり、私もご多分に漏れなかったということです。

どうも話を聞くと、もうひとつ練習熱心とはいえなかった時期があり、
そのせいで体力面で自信を持てず、その心理面が時に冷静さを欠いた試合ぶりに出ていた、と
概ねそういう感じだったそうです。しかしダウンを食っての負傷ドローとなったホセ・アルボレダ戦の後、
敵地名古屋での大橋弘政戦などに象徴されますが、そのあたりは目に見えて改善されていて、
もう昔の不安定な、子供っぽかった下田は既に過去のものになっていました。

願わくば、挑む相手が海外の強豪だったら、下田一人に集中して見られるのにな、というところでした。
挑む相手は李冽理、あのプーンサワット攻略で一躍ニューヒーローとなった王者です。
ええカードやけど、どっちにも負けてほしくないなぁ、と矛盾することを思いながら、試合を見ておりました。


試合が始まってまず「下田自信満々、李は重い」と、ぱっと見て思いました。
やや気負いすぎかと思うほど気合いの入った下田がぐいぐい出て、李はというと押されて下がるばかり。
プーンサワット戦で見せた軽やかさと鋭さが最初から感じられませんでした。

試合は3Rにダウン応酬、5、8Rに下田が倒し、それ以外にも下田がほぼ圧倒して終わりました。
下田は相変わらず、攻撃はワン、ツーでリズムが切れ、好機にコンビネーションがまったく出ませんでしたが、
こと心身のタフネスは以前と段違いで、終始攻勢を譲りませんでした。

李は単発のカウンターに目を見張るものがありましたが、全体として後手で、大差で敗れました。
あれだけボディを打たれて、よく耐えたものだと思いますが、プーンサワット戦で見せたステップと
確実にポイントを拾った速い連打がほとんど見られず、ちょっと残念でした。


下田は試合後のインタビューでもなかなか立派な態度で、感心しました。
以前、山中との再戦だったですかね、応援団がインターバル中に
「落ち着け、落ち着け、し、も、だ!」とコールしているのを聞いて大笑いしたことがありましたが、
今の下田にはそんなコールも、もはや不要でしょう。

今は大半の攻撃が単調かつ細切れのものしか無い下田ですが、好機を逃さぬ攻撃の緩急が今後の課題でしょう。
下田は王座を手にしてなお、まだまだ改善点、伸びしろがあるという意味で、見方によっては本当に恐るべき選手です。
精神面ではもう不安はないと思いますので、技術面でさらに成長を期待したいですね。


さて、内山高志と三浦隆司の強打対決は、思った以上に激しい試合になりました。

以前、代打挑戦者となった三浦について、軽い代役などではないと書きましたが、
立ち上がりは「こんなに差があるのか」と思う展開でした。
サウスポーを苦にしない内山の的確で強い左の前に、三浦はほぼ何も出来ない状態。
だから3R、三浦の一撃で内山が倒れたときは本当にびっくりしました。

内山は試合後「一瞬目を外したら打たれていた」と語っていましたが、そんなはずはないでしょう。
やはり打たれた衝撃がすごかったのでしょうね。
三浦が全てを賭けて打った左の迫力が、試合の様相を一変させました。

5Rにも三浦の好打があり、かなり内山も失速したかに見えましたが、
6R以降は持ち直した内山が攻勢、三浦の右目が腫れ上がり、8R終了後、三浦陣営が棄権。
この判断も理性的なものだったと思います。遅いくらいだ、という意見もありましょうが、
今までの日本のボクシングの常識からすれば「進歩的」な決断であったことは確かですね。

李と下田の激戦に触発されたかのように、こちらも両者譲らぬ激闘でした。
130ポンド級、世界と日本の王者対決がこれほど見応えのあるものになったことは、
ボクシングファンとしてとても嬉しいことですね。

次の試合は海外になるかも、と報じられていた内山、現実には難しいこともありましょうが、
東洋最強の看板をひっさげて、今回はかなわなかった米大陸の強豪との対決に進んでほしいです。
対する三浦は、総合力では及ばなかったものの、日本王者の誇りを見せてくれたように思います。


ということで、なんとか見られたダブル世界戦、どちらも熱戦で、見て良かった、と思える試合でした。
どちらも日本人同士の対決となって、普通なら物足りなかったり、何か不満を言いたくなるようなものですが、
今日の試合に出た4選手とも、世界戦と名の付く試合に見劣りしない健闘を見せてくれたと思います(^^)


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日本時間で昨日、南アフリカで高山勝成がIBF王座に挑んだ一戦は、3Rノーコンテストとなったそうです。
映像が見られないので何とも言えませんが、これもまた、思わぬ形での試練ですね。
挑戦者決定戦を敵地で闘い、勝利して手にした指名挑戦権ですので、再戦の保証があって然るべきかとは
思うのですが、なかなかそう綺麗な話になるのかどうか...なんとか再戦が実現してもらいたいものです。



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6 コメント

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それでも勝つ強さ (アラサーファン)
2011-02-01 20:23:03
下田君の切れ味と躍動感は目を見張る物がありましたがそれ以上にレツリ君の元気のなさが目につきました。私はレツリ君が調整に失敗したと思います。元々フェザー級の彼がこの寒くて汗の出ない時期にリミットより300gも軽い。実際に動きはギクシャクし、身体も流れる。本調子ではなかった様に見えました。
内山さんのダウンには驚きましたが右拳の負傷、カットが有りながらそれでも力の差を見せてくれましたね。サウスポー相手にあれだけジャブをヒットできる技術、アクシデントにも動じない強い精神力、作戦を変えられる懐の深さ、見事でした。
試合も面白かったですが一番笑ったのは解説の徳山さん。下田君の試合後、トレーナーの田中繊大さんを見て一言ポツリ。
「繊大さん、痩せた?」
吹き出しました。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2011-02-02 11:26:21
>アラサーファンさん

下田はあれだけガードを高く上げたまま、終始自分から仕掛ける試合展開で闘い続け、最後まで落ちませんでしたね。以前は相手をダウンさせたあと、追撃すればいいものを何故かガード下げて挑発するという時間の無駄遣いをして相手を生き返らせる、という意味不明なことを何度もやっていましたが、今の彼はそういう「くだらなさ」とは完全に縁を切ったようで、逆に見ていて気持ちが良くなるほどの躍動感がありますね。李については、まあ目に見えない部分の話になってしまうのですが、私も同感で、初回立ち上がり早々から「これは...」と思いました。そもそも初防衛戦でのこのマッチメイクにも、やや厳しいものを感じていましたし...まあ、これまた目に見えない部分の話ですけど、ちょっと気の毒なところがありました。

内山と三浦の試合も迫力満点でしたね。数あるスーパー(ジュニア)クラスの中で、130ポンドと140ポンドだけは選手層の厚さからして設置せざるを得ない、と古いファンも認めるこのクラスにおいて、世界と日本の王者がこれだけ見応えのある攻防を見せてくれたことにまず拍手です。内山は左を苦にせず、骨折にもめげず終始冷静でしたね。

徳山さんは元世界王者というより、焼き肉屋の大将としてのコメントが散見されましたね(笑)ちなみに浜田剛史以降、長らく日本人世界王者が出せなかった帝拳ジムの最近の好調ぶりは、ある人に言わせると「ひとえに田中繊大効果。それ以外の何物でもない」のだそうです。一時は「アマチュアの好素材をかき集めては、ことごとく駄目にする」なんて陰口も良く聞かれたジムですが、指導力がアップすれば、自然とこういう結果が出るのですね。
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生観戦しました (レノンバッファ)
2011-02-05 00:39:20
仕事を強引にうっちゃって、急遽生観戦してきました。
下田の躍動感あふれるボクシング、見ていてほれぼれしましたねぇ。
よくもまぁ、あの動きが12ラウンド落ちないもんだと。
ダウンの応酬だとか、カットとか、かつての下田なら精神状態が乱れ一気に雑になってしまったであろう局面があったにもかかわらず、
最後まで高テンションのボクシングをキープした姿に成長を感じました。ほんとに努力したんだろうなと、インタビュー聴きながらウルっと……。
センスと野生がこの日ついに折り合い、開花した。
内山と三浦もすごかった。

この日の有明コロシアムは極寒だったんですが、リング上は熱かったです!

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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2011-02-05 23:35:15
>レノンバッファさん

下田は本当に良い雰囲気のあるボクサーになりましたね。まだ稚気が残っていて、技術面でも未完成で、真面目にガード上げて、全部自分から仕掛けて...「評論」をすれば言わなければならないことはいくつもあるんですが、何かもう、見ていて清々しいとかいうのを通り越して、眩しいくらいです。あとは周囲が上手く導いてあげてほしいですね、もっと巧く、強くなれる選手だと思いますので。

有明コロシアムの雰囲気、TVで見ていても良かったですよ、本当にボクシングが好きな人たちが大勢集まって、歓声も上滑りしたものじゃなく、何か地を這うような声が、会場を下から突き上げているかのような感じに聞こえました。
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おひさしぶり (類人猿)
2011-02-11 21:34:06
途中から見たのですが、良い試合でした。下田選手の体には張りがありました。良い体調でリングに上がったのでしょうね。対して李は・・・・・アラサーファンさんの言う通り、調子悪そうに見えました。

下田選手はもしかして・・・・・下からのパンチに弱いのでしょうか。李のアッパーが数回、上手い具合に入っていました。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2011-02-12 13:35:40
>類人猿さん

下田は表情も身体も醸し出す雰囲気も、何もかもが輝いて見えましたね。きっと精神的には今が一番、ボクサーとして幸福な時なのかも知れません。李冽理の体調については、プーンサワット戦の軽快さとの落差を感じたのは確かですね。何とも言いにくいところではありますが。

下田はいつ行くか、いつ待つか、という判断を、相手を観察して決めるというより、本能任せみたいなところがありますね。時に反撃を食うのも仕方ない面がありましょう。もしもっと鋭く狙いを持ってアッパーで迎え撃てる強打者が相手になったら危ないでしょうね。今後の課題のうちのひとつでしょう。
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