ということで、前座試合など含めての雑感を。
全体的に、試合内容自体はよかった、といえる興行ではあったんですが、
まあ中にはそうでないのもあり、それ以外にもあれこれとありまして、ざっと振り返ります。
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セミファイナルの八重樫東は、ハビエル・メンドサのステープルメイトという
マルティン・テクアペトラに2-1で判定勝ち。苦しい防衛戦でした。
試合前日かその前か、何せ近いところで放送されたドキュメント番組を友人に見せてもらったとき、
八重樫が左の肩と腕に、かなりきつめのテーピングをしている映像がありました。
試合が迫った段階での映像だったので、あ、これは...と思っていたら、案の定だったみたいです。
立ち上がりから、明らかに我が身をかばって動き、打っている。
打つパンチの選択も、制限がある模様。
対するテクアペトラは、良い軌道のストレートを打つが、打つ前から右肩が前に出ている「探り打ち」で、
これでは少々当てたところで効かない。
パンチのない選手の典型で、これには多少安心。
とはいえ2回、さっそく打ち負けたように見える。八重樫はポンポンと打ってくるテクアペトラを持て余す。
3回からボディを攻め、4回も右を好打するが、動き自体がやはり重い。
テクアペトラは中盤、ジャブや右カウンターで粘る。八重樫、6回後半は攻めて取る。
終盤は微妙な回が続いた後、最終回は八重樫が攻め、テクアペトラの構えがついに崩れる。
最後の最後で、本来の実力差が見えました。
全体的には僅差で八重樫かと見ましたが、TVで細かいところを見るとまた違うのかもしれません。
ただ、この内容を仮にメキシコでやっていたら、大喜びであちらだっただろうな、とは思います。
それがこの試合の判定の「正解」である、というわけではないですが。
前回のメンドサ戦と比べると、八重樫自身の不調がすべてだったように見えました。
テクアペトラに関しては、きついようですが、この程度の選手だったから助かった、という印象でした。
井上の拳と同様、八重樫のコンディションもまた、今後に向けて心配の種です。
指名試合とか、上位との対戦などでこの調子だったら、さすがに厳しかったでしょうね。
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井上拓真はOPBF王座の防衛戦。
インドネシアのアフリザル・タンボレシを2回で沈めました。
初回からやや小柄なタンボレシを圧倒、右を決める。
2回、左フックを決めて倒し、追撃の右で二度目でストップでした。
これがプロでわずか二度目のKOとは、やや意外な気もしますが、イージーな相手が少ない
そのキャリアを振り返れば、それもあり得ることでしょう。この日は圧勝でした。
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ある意味、この日の試合で一番、強烈に「ボクシング」だった試合が、松本亮のTKO負けでした。
ここ数試合、国内上位との対戦をせずに、世に言う「世界路線」とやらを進んでいた松本ですが、
弱い相手との圧勝か、そうでなければ安易に打たせて負傷までする不安な試合、という具合で
散発的にメディアに出る世界戦や前哨戦やという表現との乖離甚だしい、というのが、
誰の目にも共通する松本の現状だったと思います。
ことに昨年暮れ、WBAアジア王者(だったかな)とかいう触れ込みの、割と普通の選手相手に
初回から棒立ちのとこをまともに打たれて頬を切り、2回に正面から打ち合って倒し返した試合は、
部分的にではあっても、何かが「切れ」てしまっているかのように見え、普通の気持ちでは見ていられないものでした。
その状態からどう立て直してくるか、それが今年の松本の課題だと思っていたら、
状況はさらに悪化していて、8勝5敗というメキシカン、ビクトル・ウリエル・ロペスに
初回から危ないところに踏み込まれ、攻め立てられるスタート。
初回こそ右カウンターを合わせましたが、腰のあたりが緩いロペスに、2回以降も打たれる。
とにかく相手の動きやパンチへの反応が乏しい。
その上、近づいても離れても同じように、顔から手が離れた構えのまま。
それはロペスでなくても手を出したくなろうというものです。
3回、ロペスのワンツーが飛ぶ。当たる。ボディへの攻撃、これもきついのが入る。
4回、松本ますます劣勢。ボディで止められ、左フックをまともに食らう。
もう、見てられないというレベル。止めてもいいかと思うほど。
結局5回、右食って、連打が来たところでストップでした。
油断していいの打たれたとか、そういうのではなくて、終始しっかりと打ち負けての完敗でした。
ロペスは戦績も見た目も、はっきりいって冴えたところがなく、体つきも緩い選手でした。
これはもう、ロペスには失礼ながら、彼が勝ったのではなく、松本が負けた試合、だったと思います。
試合後の話や報道では、松本はかなり深刻な体調不良だったそうです。
それがこの日だけの話なのか否かは不明ですが、もしそうでないのなら、
ここ数試合のマッチメイクも、ある意味では納得がいく部分がありますね。
大橋ジムの次代を担う立場だったはずの松本ですが、これまた心配な話です。
万全の体調を取り戻して、しっかり再起してもらいたいですが。
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それ以外の試合についてもざっと。
井上浩樹はデビュー三戦目も初回KO。相手はビモ・ジャガーというインドネシア人。
少し抵抗されましたが、ボディから攻めて二度倒しました。
この試合、私はトイレからの帰り道。試合が始まったので、インターバルまで待って
席に戻ろうと、入り口のところで見ていたら、そこまで行かずに終わりました。
結局、この試合だけ立ち見でした。
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第一試合だったはずのクウエ・ピーターというガーナ人ボクサーの試合は、
何故か予備カードに回り、世界戦の前に行われました。大橋ジム移籍初戦とのこと。
相手はインドネシアのビンセント・オーリンという選手。
この試合は、ある意味、会場に足を運ばないと絶対に見られない、貴重な試合でした。
初回早々、何が起こったかわからなかったのですが、オーリンがキャンバスに座っている。
倒れた様子を表現すると「へちゃっ」という感じ。
その姿、まるで濡れ雑巾の如し。
レフェリーのマーチンさんがスリップを宣し、立つよう促す。
試合再開、またインドネシア人がキャンバスへ。またもスリップが宣告される。
場内どよめき。これは大変なものが見られそうだという予感に満ちる。
しかしまたしても「ダウン」シーンが起こる。これはスリップではないようで、
タイムキーパーのカウントする声が場内に。「ワーン、ツー...」
するとカウントがわずか2のところで、今度はマーチン主審がTKOを宣告!
場内哄笑の中、初回TKOで試合が終わりました。
見るからに勝つ気がないというか、早く帰りたがっているというか、
余計に殴られるのイヤ、というか、いずれにせよ戦意の欠片もないインドネシア人に対し、
二度もスリップ宣告をして闘わせたものの、それでも駄目だと判断するや、最後はカウント2でバッサリ斬る。
マーチン主審が示した、何者にも侵されることのないレフェリーの尊厳に、
言いしれぬ感動を覚えた一戦でありました。
いや本当に、そりゃ過去にいろんなの見ましたけど、これほど凄いのは滅多にないですね。
普通なら、はははと笑っておしまいですが、ある意味感動的ですらありました...(^^;)
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最後に、この日の試合以外の部分について、少し?だけ。
一昨年の東京体育館、昨年末と今回の有明と、三試合続けて井上の試合を見てきましたが、
来るたびに、確実に客の入りが悪くなっているように見えました。
ことに昨年末と比較しても、人がほぼ皆無のブロックの数が増えていましたし、
私の近辺の、リングの四辺を正面から見られる良い席も、最後まで空席のままでした。
もちろん時期も場所もカードも違い、それが反映されたのかも知れませんが、
我々ファンが史上有数の強さだと見る、井上尚弥を擁してもこれか、と思わざるを得ません。
結局は、現在の世の中において、個々のボクサーがいかに奮闘しようとも、
ボクシングというスポーツそのものへの評価が、全体的に低下しているのでしょう。
その理由については、過去にもさんざん書いてきましたので繰り返しはしませんが...。
しかし、そういう話とは別に、やはりこの日の進行の拙さはなかなかのものでした。
早期決着の試合が多かったせいもありますが、世界戦二試合の前に、40分と25分の休憩が入る。
セレモニーなどを入れるともっと長かったか。ただただ退屈なだけ。
そりゃ、メインを生中継するためには仕方ない、でおしまいなのでしょうが、
何もそれを、7時45分固定でやる必要がありますかね。
たとえばメインを7時から開始して、それ以外をディレイという方法でやれば、
その分、無駄な時間を削れると思うんですが。
まだ、全てをつぶさに見たわけではないんですが、TV放送自体も、
けして良い出来のものだとは言い難い、拙いものだったという評も聞きます。
それでなくとも衰退していくTV放送業界の都合に、いつまでも振り回されるばかりでなく、
違う方向性のビジネスモデルを模索しつつ、観客をもう少し大事に扱う、扱えるような
興行体制を構築するべきではないかと。
私なんかは、興行側やTV局の都合優先で、客に負担や退屈を強いる拙い進行にも、
これがボクシング業界の限界や、と諦めてしまっている、飼い慣らされた側の人間ですが、
もし初見の方がいたら、さすがに呆れてしまうことでしょう。
もう一回ボクシング見に来よう、と思ってくれる可能性がある観客を、
自らの手で振り落としてしまっているようなものです。あまりにもったいないことです。
個人的な経験で言えば、ボクシングをライブで見ることの魅力は、とても大きなものです。
何度か、初見の方と同道したことがありますが「凄く良かったです、また見に来たい」と
言われた経験があります。
また、この日の有明からの帰り道には、若い女性が大きな声で
「野球とかより全然良いねー、ボクシングまた見たい」と言っているのが聞こえたりもしました。
何か、救われたような気持ちにもなりました。
ボクシングそのものの魅力は、やはり間違いなく、確かなもののはずです。
だからこそ...と思わずにはいられません。
松本君の適正階級は一体どこなのか。本来のボクシングはどんなのか。最近それが全く見えないのが気がかりです。体調不良以外に何かボクシングに集中出来ない要因があるのかと感じる次第です。バンタム級でホープと呼べる岩佐君、赤穂君、大森君に続いて松本君までKO負けで次は誰に期待したら良いのか。
かなり先ですが丸田君でしょうか。
リングインから私にはやる気満々に見えました。
会場の大きなモニターに映る顔を見ても目がギラギラしていて「こいつ(松本)を喰ってやる!」というのが私には見えました。ゴングが鳴る前から「これは・・もしや」と思えました。
ゴング以降も果敢に松本を攻めたてていましたよね。
あ~。。やっぱりなあ。。予感的中。
体調が万全な松本でも彼に勝てましたかね?
私は「ビクトル・ウリエル・ロペスが松本に勝った試合」
だったと思いました。
お読みいただいてありがとうございます。いろいろありますがボクシングは最高です。今後ともよろしくお願いします(^^)
>R35ファンさん
八重樫は今回、ウェイトトレーニングの強化箇所を変えたという話でしたが、その過程で起きた負傷なのかもしれませんね。松本については、120ポンドという、余裕を持たせた契約体重だったと思うのですが、どうやらそれとは別の問題だったようです。強い相手と当てられる状態にない、というマッチメイクだったのが、それでも負けてしまったというのは深刻ですね。丸田陽菜太はもう少し上のクラスになりそうですね。それこそライト級まで視野に入れてもおかしくないような長身です。実際はフェザーまでで抑えるのでしょうが...。
>gakuさん
ロペスの闘志は確かに満々でしたね。聞けばセミとメインに出た陣営の選手で、練習もしっかりやってきたのでしょう。ただ、今まで8回戦の経験もないそうで、松本にしたら負けてはいけない相手だったと思います。体つきも緩いなあと見えました。松本の状態があまりに悪いこともあり、そういう表現をしました。大橋会長が再戦を組むと言っているそうですが、しっかり雪辱できるかどうか注目ですね。
これは僕の感想ですが、試合が始まるまで大きなモニターのVTRをずっと大音量で繰り返し流したり… あれ冗談抜きでめちゃめちゃうるさいんですよね。流すにしても何故1度くらい止めないんだと思ったり…
メイン試合をテレビに合わせてかなりの空き時間が出来るなら何故その時間を会場にいる元世界王者や選手等をリングに上げてちょっとしたトークショーをしようとか思わないのか? この興行なら具志堅さんや村田選手がいましたし、試合以外でも盛り上げることが出来たはずです。
興行主は観客はボクシングだけ見れば満足だろとか思わないで色々と考えるべきだと思います。
まったく同感です。まあ、たいていの場合、興行主がメインイベントの段になると、コーナーに入って客に尻向けてんですから、そこからして異常というか。客のことを気に掛けながら「勝負」が出来るわけもないです。むべなるかな、ですね。
あのモニターの大音量もうるさいですよね。誰かと話すこともできやしません。内容も、最初から「ボクシングファン=日陰者」みたいな関東ローカルのバラエティとか、選手紹介のドキュメントとか、まあ芸のないこと。こないだはミュージックビデオが流れましたが、これがまた音楽性のハードルを徹底的に下げた「イベント用音楽」。どうにもこうにもです。
選手やOBのトークショーは良い案ですね。もっともそれが出来る人材は限られているでしょうが。元選手に限らずライターや評論家諸氏でもいいですよね。
何せ、こういう興行は将来的に、TVならばスカパーに売るべきだと思います。日曜昼間、1時くらいから全試合生中継で。地上波にはセミメインのみ深夜録画でいいですよ、もう。どのみち大した数字も出ず、継子扱いなんですから。そしたら、身銭切って暇割いて見に来てる客(我々、けっして「TV番組収録の観覧」をしとるわけではないのです)が、肩身の狭い思いをせずに済みます。徐々にそういう方向にシフトしていってもらいたいですね。
ある意味最も見たかったピーター対オーリンはやってませんでした。
井上浩樹選手と拓真選手はしっかりした技術とパンチがあって、真吾氏の手堅い指導を感じました。拓真選手の相手は変則でやりにくいように見えましたが、しっかり仕留めたのは流石でした。
しかし尚弥選手の先々と仕掛けて間合いをコントロールする術は2人とも使っていないようでしたね、アレは指導ではなく本人のオリジナルなのでしょうかね。
松本選手は普通に考えたらロングレンジからジャブ突いて、後は距離と展開に応じて捌けば問題なさそうでしたが、そういう状態でもないというか、距離を感じれないとか思考が働かないとか根本的な問題がある様な表情でしたね。今後が少し心配になりました。
私も前座の部分だけ確認しました。あの試合は放送ありませんでしたね。まあ、会場まで足を運んだ者へのプレミアムということで...。
井上拓真は相手のミスの後を、鋭いタイミングで狙えますね。返しのパンチの強弱の付け方などに、独特のものを感じます。井上浩樹は正直、何ともまだ。スピードもパンチもなかなかだとは思いますが。共通しているのは、井上尚弥の能動的な仕掛け、崩しはまだ身につけていないところでしょうか。
松本はおっしゃるとおりで「それ以前」に問題あり、という試合でした。再起だ再戦だ雪辱だというより先に、しっかり休養を取るべきなのかな、と。