最近、4団体統一王者誕生の事例が増えてきていますが、かといって階級最強を証明し「続け」よう、という気は、井上尚弥以外のボクサーからは、あまり伝わってこないなあ、というのも実際のところ、です。
Crawford's Trainer: Jaron Ennis Don't Bring Nothing To The Table https://t.co/DmmYFioJgb pic.twitter.com/n1n14UuuSN
— BoxingScene.com (@boxingscene) February 7, 2024
スーパーライトとウェルターで4団体統一という偉業を成したテレンス・クロフォード、その巧さと強さには感服するばかりなれど、ジャロン・エニス戦に対する態度は、どうもいただけません。
トレーナーのブライアン・マッキンタイアという人が、要はエニスと闘ってもスーパーファイトといえる大金が得られるわけではないからやらない、カネロ・アルバレスと闘いたい、と言っております。
この辺はもう、本人のみならず周辺が、ここから先、年齢的にも余裕がないクロフォードを一試合稼働させるたびに、得られる限りの大金を得よう、得ねばならない、と血道を上げているように見えます。
そしてそういう方向に、本人を誘導している面も、少なからずあるように感じます。
クロフォードには、自分がかつて、マニー・パッキャオのようなスター選手たちと闘えなかった頃、どういう気持ちだったのか、ちょっと思い出せよと言いたくなります。
実力証明よりもビジネス優先。その商業主義に阻まれ、実力者でありながら今の地位に就くまでに、必要以上に長い時間を要し、それに憤っていたのは、いったい誰だったのか。
そして、その撤を次世代の旗頭たるジャロン・エニスにまた踏ませるのでは、悪例の繰り返しではないのか。
時代の趨勢に棹さし、実力証明を優先することこそ、王者の誇りではないのか。
まあ、そんな甘いものではないよ、ということもよくわかりますが、それにしてもなあ、と。
お金を理由に最強挑戦者を避けられるんだったら、それはかつて自身が苦しめられた商業主義の構図を、甘んじて受け容れねばならない、ということになるんですが、ね。
で、階級違いというと、こんな話が。ホンマかいな、という。
‼️ Eddie Hearn has declared that he will be making an official offer to Gervonta Davis today to fight Conor Benn next in April/May in the USA: “I think Gervonta Davis vs Conor Benn is a fight that can really light up America and the UK.” [@MatchroomBoxing] pic.twitter.com/HqWfk8pEi3
— Michael Benson (@MichaelBensonn) February 7, 2024
ジャーボンテイ・デービスとコナー・ベン。斜め上から落ちてきた青天の霹靂、という感じの話です。
デービスのベストウェイトがどこなのか、判然としませんがまあライト級だとして、ベンはウェルター級のはず。
自らのドーピング違反で流したクリス・ユーバンク・ジュニアとの対戦は、157ポンド契約で行う予定だったそうですが。
先日、ピーター・ドブソンを判定で破った試合はDAZNでやっていて見ましたが、相変わらず力ずくで打っていって、当たったら目出度いな、みたいな感じは変わっておらず。
ウェルター級でクロフォードやエニスと比べるところにはだいぶ遠い、と見えましたが、なるほど下の階級の相手、デービスに当てたら、押し込めるぶんだけ、勝負．．．とは言わんでも「絵」にはなるかな、という気はします。
大方、そういう構想というか目論見というか企みを持った者が、周辺にいるのでしょう。それなりに、普通よりは大きな儲けになる、ということも含め。
なんかもう、こういう話ばかりが目に付き鼻につき、というのがボクシング界の常になってしまいました。
それ故に、サウジマネーの大盤振る舞いが、こういう話を札束で押し流してくれへんかな、という期待でもって、受け容れられている面もありましょう。
それにしてもデービス、ヘイニーは上行っちゃいましたし、ロマチェンコとは絡まないし、シャクールは引退（笑）したし、ライト級完全制覇、という感じには、なかなかならないですね。
これまた、周りも含め、そんなこたあどうでもええがな、という感じなんでしょうけど。
ボクシングにおける「チャンピオン」って言葉の意味は、いったい何なのだろうか、と考えると、もう気が滅入ってきます。
最強の称号、それを手にし、掲げ「続け」るために闘う者、その誇りを仰ぎ見ることが、ボクシングを見ることだと、かつては思っていましたが、今は違います。
もちろん圧倒的な強さ、巧さを持つ者たちを見ることに変わりないですが、同時に、極めて身勝手な部分を多々含めた、人生設計を見せられているのだな、と思うことが増えました。
もちろん、そういう思いをせずとも見ていられる王者もいるにはいて、それが我が国のヒーローである、という幸福には、救われる思いではある、のですが。
クロフォードに言わせれば、エニスに勝ってもファンは「彼はまだ若すぎた」「経験不足だった」と言うだけだと。確かに容易に想像できます。カネロ戦の方が金になるだけでなく、得られる名声も「なぜか」上なのですよね。「米国での超ビッグマッチ」という「名誉」が得られる。イベントの大きさとしては、スペンス戦より上になるのでしょう。
クロフォードはスペンス戦での圧勝で全てを手に入れた、と思いきや、スペンスのコンディションや怪我を疑う声が後を絶たない。今の時代、選手は常に不当ないちゃもんや誹謗中傷にさらされていて、米国のそれは日本の比ではないように思います。誰にも文句を言わせたくないと思ったら、それこそカネロに勝利するくらいしかないのかもしれません。周りはともかく、本人が欲しいのはお金ではないのでしょう。
この話が頓挫するとしたら、三階級も下の選手と対戦するカネロに対して、大きな批判やファンの拒絶が起きた場合ですが、あまり期待は出来ず。チャーロ弟との戦いは、対戦自体がカネロの評価を下げると思いきや、そうでもなかった。米国の「識者」と呼ばれる人の中にも、「カネロのレジュメにチャーロという大きな名前がまた一つ加わった」などと言う人がいて、正気かと。
どうしたらボクシング界が正常になるのか全く分かりません。サウジアラビアさんがベテルビエフ-ビボルのようなカードを実現してくれるのは有難いですが、最初に大枚はたいたのは、フューリー-ガヌーなのですよね。結果として「いい勝負」になっちゃいましたが、カードとしてはキワモノで。本気でボクシング界の現状を憂いているなら、その桁外れの資金で認定団体の一つも買い取って、タイトルやランキングを正常化し、本物の「世界王座」を作ってくれよと思うのですが。まあでもそれは業界がやるべきことで、そこまで求めちゃいけませんね。
ジャーボンテイ・デービスとコナー・ベンの方は、エディ・ハーンが勝手に言ってるだけで、実現しないのではないかと。コナー・ベンにそこまでの商品価値はないですし、ライアン・ガルシアにすら当日のリバ制限をつけたデービス陣営がやるとも思えず。
階級またぎのビッグマッチが、最も大きなビジネスになることが当たり前になってもう長いですからね。ボクシングとは「そういうもの」になってしまっているんでしょうね。若く勢いのある挑戦者を退けることに価値が認められないというのは、本当におかしな話です。
スペンス戦にはそういう見られ方もあるのですかね。それを払拭したいなら、なおさらエニスと闘えば良いのにと思うんですが、
もう、何やっても言われるんですかね。なんともかとも。
カネロとチャーロ弟の試合は、試合前後にどうというより、内容に全部出てたと思うんですけどね。あれがそんな輝かしい勝利でしたかね。まあ、そう書かないとしょうがない、みたいなところに上手く立つのも、カネロならではの巧みさなんでしょうが。
ボクシングが各々のご都合、勝手に歯止めを欠けられる力をほぼ完全に失って、どこまで行くんだろうかと思います。本当にサウジマネーで世界のボクシングを統べてくれと思ってしまいますね。まあ、そこまで本気ではないだろう、とは容易に想像できますが。王族の気まぐれで放り出されても困りますし。