さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

ホンマの勝負はやはり良いものです 日中対抗戦、渡邊卓也の技巧輝く 金子虎旦は初メインでTKO勝ち

2023-10-29 07:32:33 | 関東ボクシング


ということで昨日はBoxingRaiseのDANGAN興行、日中対抗戦を見ておりました。


実質メインはこれだったかな、というのはセミの渡邊卓也vsリウ・ウェイウェイ戦。
大柄なサウスポー、リウの左ストレート、右フック返しが怖いが、渡邊は巧みに上下の打ち分け、フェイントを駆使して打ち込み、ボディブローのダメージもあって、4回までは攻勢。

このまま行けば渡邊のTKOもあるかな、と思うほどでしたが、打ち込まれたと見えたリウが5回、6回と右フックの好打で渡邊をふらつかせ、下がらせるなどして逆襲。
しかし7回、左アッパーを上に返し、レバーパンチも再三決めた渡邊が流れを取り戻す。
最終回は巧く捌いておいて、ラストは左フックカウンター、リウがマウスピースを落とす。これで駄目押し。

判定はクリアに渡邊。歴戦の技巧派、明白に巧さで差を付けて、目出度く区切りの40勝目。さすが、という試合でした。

リウは大柄な体格、耐久力があり、パワーも渡邊より上でしたが、力攻めで自分のやれることだけやる、という感じで、相手を見てどう対して、という部分はほぼ皆無。言えば若手の段階。
ただ、素材としてはかなりのものに見えました。この選手が若い頃からボクシング一本だったら、もっと良い選手になっていたかも。
キックの世界では相当強い選手なんだろうな、と思わせるものがありました。



メインの金子虎旦は、4年ぶりのリングというサウスポー、ツァイ・ファンを6回TKO。
ブランクが長いというファンでしたが、コンパクトなフォームから小気味よく打ってくるサウスポーで、良い選手、と見える。
しかし打ち合いになると正面から、手を下げてボディへのパンチを連打してくる。
2回、金子は攻め込まれながら、ガードの下がったファンに左フックカウンターでダウンを奪う。
再開後、両者危ない打ち合いになるが、金子が攻め込んで右ストレート、左返しで二度目。

金子優勢、とはいえファンの連打、コンビもまだ鋭い。
ここで金子、左ジャブを中心に、正対して当てて行き、右ストレートは打ち終わりを狙われないように?控える。
左フック上下に散らし、試合を落ち着かせてから、徐々に右ストレートのダイレクトを決める。
この切り替えは、序盤の、熱くなっての打ち合いとは違って、冷静な運び。
最終回6回、左のレバーパンチが効いてファン後退、金子が詰めたところでストップとなりました。

金子虎旦、帝拳ジムのB級デビュー組が、他所の主催興行で初メインというのは、あまり聞かない話ですが、相手が「あまり強くない」選手ではない、本気の闘志を持った相手でもあり、やって実のある試合だった、と思います。
もちろん課題もありましょうが、最後はしっかりストップ勝ちですし、しっかり大役を果たしました。



坂本博之会長のSRSジム、強打の苗村修悟は、フー・ロンイーに3回TKO負け。
距離もリズムも、連打するパンチの種類も良く似通った同士が、最初から激しくパンチの交換をしましたが、唯一体格というか骨格というか、その部分ではっきりフーの方が大きい。
Sフライとフライの違い、くらいに見え、まともに打ち合ったんでは、苗村分が悪い、というのは明らかでしたが、さりとて捌いて外して、という闘い方の幅は、苗村にはなく、徐々に打ち負けてストップされました。



観客席には中国人観客の姿も多く、場内は展開次第で、それこそ中国ホームの試合みたいな雰囲気。
そして、中国人ボクサー達は、日本人への対抗心なのか、或いは元々のモラルの高さなのか、優勢でも劣勢でも変わらず、闘志がみなぎっている。
この選手達が、それぞれの階級、段階において、中国全土最強、最高の選手ということはないのでしょうが、少なくとも劣勢だからすんなり負ける、という選手はひとりもいない。

こういう雰囲気の中、そういう選手と闘うというのは、非常に意味あることだ、と感じました。
いまだに「あまり強くない」相手と、素知らぬ顔で試合を組んで、バカ殿様の試し斬り、みたいな試合で鮮やかに勝って、何が嬉しいのか知らんが大喜び、みたいな試合が散見されますが、やっぱりこういうのが「ホンマ」です。


とはいえ、上記の通り、この日の選手達が「中国代表」選手なのかというと、それは違うでしょうし、さらに上のレベルの選手がいるなら、そういう選手も招いてほしいものですね。
そこで日本側もさらに上位の選手を出して、ということは、実際にはなかなか起こらないんでしょうが...正直、いつまでもその辺を避けて通れる余裕が、今の日本ボクシング界にあるのかどうか。
中国人の観客を、興行面で、言えば「当て」にした、という印象だった今回の興行を見て、色々と時代は変わっていくのだろうな、という気がしました。



しかし変わらないのは、国籍どうあれ、政治がどうあれ、リングの上で闘志ある者同士が闘えば、優勝劣敗の掟によって二人のボクサー、その命運が分かたれるとしても、そこには何の嘘も恨みもない、純粋な得心があるはずだ、ということです。
少なくとも、私はそう信じますし、ボクシングかくあれかし、と変わらず思いますね。



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