Casa de lápiz:鉛筆庵

鉛筆庵に住む鍵盤奏者が日々の生活の徒然・音楽などを綴ります。

バベル/BABEL

2007-05-13 00:30:37 | 映画 は行
         公式サイト
2006年/アメリカ/143分
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、役所広司、菊地凛子、アドリアナ・バラッザ

切ない・・切なさに心がひりひりする。

物語はくっきりした色とその対比、そして一発の弾丸によって否応なく結びつけられた三箇所の乾いた景色と、人の心の渇きも同時に映し出して展開する。

モロッコのかさかさした乾き、土も岩も家も乾いている。その中を切り裂く弾丸の音もやはり乾いてこだまする。
そしてメキシコのぱさぱさして風に舞う砂漠の砂、ぽしょぽしょ生えている木の緑も何となく白っぽく映る。唯一このメキシコの部分だけは、「ハレ」の部分ということもあって人の肌の温もり、人と人とのつながりを感じる。だけどそこを一歩出たら、やっぱり人も景色も乾いているのだけれど。メキシコからアメリカに戻る国境警備員とのやりとりには不法入国に神経を尖らせている現実を突きつけられる。それは「メルキアス・エストラーダの三度の埋葬」を思い出させる。国境警備というものはそういうものなのね。
日本は広がる都会の風景が無機的で乾いている。それでいて風景のそこここに、特に夜景の光のにじみ方に、湿気を感じる。(そのギャップが新鮮!)こういう風に日本は見えるのだ、とふっと突き放して見ていることに驚く。空気はそんなに湿り気が感じられるのに、だからこそ余計に人と人とのつながりの希薄さ、渇きが伝わり、その中で人が抱え込む孤独の淵の深さ、暗さが一層強く浮き彫りになる。

この世界に存在する様々な不条理に人は翻弄され、その中で苦しみ絶望するけれども救いがないわけじゃない、いや、きっとあるのだと作品は最後に語りかけてくる。観ている私も「言葉」以外の「何か」があるのだと何処かで信じたいのだ。その「何か」は「愛」?それとも「想像力」?
だけど、やっぱりこの世の不条理と個人個人がそれぞれに抱え持つ孤独に心がどうしようもなくひりつく。
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2 コメント

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ドモドモ-♪ (Puff)
2007-05-15 18:56:13
何だかやり切れない映画だったけれど、
最後に抱き合うシーンを観たら少し救われたような気になりました。

メキシコ編では改めて「国境」を感じましたねー
ワタクシたちは島国なので普段は感じることは無いけれど、
その他の国々は悲喜こもごもいろんなことがあるのでしょうね。
それにしても米国から出る時と入る時とではあんなに対応が違うとは・・・
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Puffさま~! (rubicone)
2007-05-16 00:16:59
重い作品でしたが、見応えありましたね~!
自分では気付かないけれど、世界は何処かでつながっているんですね・・・。
Puffさんの仰るように「抱き合うシーン」で救いを感じることができたので、ちょっとだけほっとしました。
陸続きの国境の緊迫感、不法移民に神経を尖らせている米国のイライラが伝わってきた国境警備隊員の対応に、観ていてはらはらしてしまいました。
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