Casa de lápiz:鉛筆庵

鉛筆庵に住む鍵盤奏者が日々の生活の徒然・音楽などを綴ります。

夢みたものは・・・

2011-02-20 22:40:43 | 音楽
楽譜をあれこれ眺めながらいじっていて、結局これは譜めくり最優先ということで原本をコピーして製本し直したのがこの週末に一冊。しかしあれこれめくりやすいように考えて製本したにも関わらず、譜面台に乗せたら・・・ううう譜面台一杯と言うか、広がり過ぎて厳しいというか・・・で、考慮中。がさがさごそごそ・・。
そんな楽譜の中で、この間譜読みと練習を頼まれたのが立原道造(1914年7月30日-1939年3月29日)の詩に木下牧子さんが音楽を付けた「夢見たものは・・・」
この曲を初めて聴いたのは、どれくらい前だったろう?でもその音楽が流れ出した瞬間に、心が静かに静かになって全身で聴いていたのを思い出す。音に乗って言葉が紡ぎだされ、それがダイレクトに響いたのだった。
この機会にと楽譜を読み、調べてみた。
この曲は木下牧子さんが知り合いの結婚式のお祝いに作られたものであったという。
そしてこの詩が立原道造の詩集『優しき歌 Ⅱ』の最後の歌、それはまさに彼の人生の最期の詩でもあったということ、ここで歌われていたのは24歳の立原道造と19歳の水戸部アサイとの恋、それが彼の死を前にした最後の恋であったということを同時に知ったのだった。
全てを突き抜けたところにある確信のようなもの、透明な明るさに彩られているのが特に印象に残ったのは、そういう理由があったからだったのか、など一人で頷いて合点してしまった。

『優しき歌 Ⅱ』の詩集の構成と、「夢見たものは・・」の詩。

『優しき歌 II』
序の歌/I 爽やかな五月に/II 落葉林で/III さびしき野辺/IV 夢のあと/V また落葉林で/VI 朝に/VII また昼に/VIII 午後に/IX 樹木の影に/X 夢見たものは

X 夢みたものは……

夢みたものは ひとつの幸福
ねがつたものは ひとつの愛
山なみのあちらにも しづかな村がある
明るい日曜日の 青い空がある

日傘をさした 田舎の娘らが
着かざつて 唄をうたつてゐる
大きなまるい輪をかいて
田舎の娘らが 踊りををどつてゐる

告げて うたつてゐるのは
青い翼の一羽の 小鳥
低い枝で うたつてゐる

夢みたものは ひとつの愛
ねがつたものは ひとつの幸福
それらはすべてここに ある と

こうした背景を知った上で改めてこの曲を見てみると、全く違う風景がまた見えてきて興味深い。
コメント
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