非国民通信

ノーモア・コイズミ

ヤクザよりも悪質だったのは

2016-10-30 22:00:25 | 雇用・経済

上司からエアガン・つば…佐川急便22歳自殺、労災認定(朝日新聞)

 佐川急便で上司からエアガンで足元を撃たれたり、つばを吐きかけられたりするパワハラを受けて自殺した男性(当時22)の遺族が、労働災害と認定されなかったことを不服として国を訴えた訴訟で、仙台地裁(大嶋洋志裁判長)は27日、労災と認め、遺族補償金などの支給を認める判決を言い渡した。不支給とした仙台労働基準監督署の処分を取り消した。

(中略)

 男性は直属の上司から日常的に仕事のミスで注意を受けていた。自殺する直前にはエアガンで撃たれたり、つばを吐きかけられたりする暴行や嫌がらせを受け、SNSに「上司に唾(つば)かけられたり、エアガンで打たれたりするんですが、コレってパワハラ?」と投稿。自分のスマートフォンにも「色々頑張ってみたけどやっぱりダメでした。薬を飲んでも、励ましてもらっても、病気の事を訴えても理解してもらえませんでした」と書き残していた。

 

「配達員が屈強でかなわない…」恐喝未遂容疑で組員逮捕(朝日新聞)

 荒川署によると、大場容疑者は6月12日、インターネットで高級腕時計(販売価格約86万円)を注文。翌日、佐川急便の男性配達員(38)が荒川区町屋3丁目の組事務所に品物を届けに来た際、大場容疑者が古玉容疑者にモデルガンを突きつける「ヤクザ同士の内輪もめ」の場面を見せつけ、代金を払わずに商品を脅し取ろうとした疑いがある。

 ところが、この配達員は、同行していた同僚男性(44)とともにモデルガンと商品を取り上げ、110番通報。容疑者2人は慌てて事務所から逃走した。大場容疑者は「配達員が屈強でかなわないと思った」。古玉容疑者は「大場(容疑者)がやったことだ」と容疑を否認しているという。

 

 さて、どちらも佐川急便の話で、奇しくも発表されたのは同じ10月27日だったりもするのですが、いかがなものでしょう。端的に言えば、モデルガンを振り回す暴力団員ごときよりも、エアガンを実際に撃ってくる佐川急便の上司の方がずっと手強いようです。そもそもヤクザは脅すまでが商売であって本当に危害を加えたら警察沙汰で、それに比べると会社の上司の方が歯止めは利かない、部下に対して日常的に暴力を振るっている管理職なんて珍しくないわけです。一見すると治安が良いように見える日本ですが、本当の無法地帯は会社組織の中にこそ存在するのかも知れません。

 もしかすると佐川急便で働いていれば、「本当に撃ってくる奴」と「単に脅しで終わる奴」の見分けが付くようになる、暴力団が相手でも対処できるようになるのでしょうか。それはさておき冒頭の自殺の場合ですが、一度は労働基準監督署から突っぱねられてしまったことが伝えられています。遺族が裁判に訴えることでようやく労災と認められたわけです。これもまた日本の現状を表していると言いますか、労働者を保護する判例があっても、それは法廷闘争に持ち込まれて初めて意味がある、裁判所の外は結局のところ無法地帯であると判断せざるを得ません。

 前にも書きましたけれど、殺人を禁止する法律があっても人が殺されることはどこの国でもあるわけです。法制度の存在が安全を保障するものではありません。経済系の言論では、日本の社員は保護が手厚すぎるみたいな荒唐無稽が連呼されることも多いですが、それがいかに実態からかけ離れた代物であるかは考えるまでもないでしょう。企業が従業員に対して無法を行っていないか絶えず監視し、違反者を逮捕してくれるような労働警察などいないのです。被害が発生して手遅れになって、それが法廷に持ち込まれて初めて労働者側に勝ち目が出てくる、これが現実なのです。

 とかく「お客様は神様です」みたいなネタを真に受けて傲慢に振る舞う「客」も問題視されますが、本当に「神様」にでもなったつもりで暴虐を繰り返しているのは、むしろ客よりも会社の上司だったりはしないでしょうか。建前はさておき実態として、「何よりも上司を大切にする」社風の企業は、結構あるものです。日本の体育会系的な上下意識がそのまま持ち込まれている、それを組織として是認している職場は少なくありません。その結果として実務よりも「偉い人のご機嫌取り」が優先になって、それが現場の仕事を増やしているケースも頻繁に目にします。客の信頼を損なう行為には五月蠅い我々の社会ですが、本当に厳しい目が向けられるべきは従業員の扱い方の方、そう変わっていく必要があるように思います。


コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 企業優遇のツケは誰が払うのか | トップ | コンピュータには無理な仕事 »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
「ヤクザ」より「堅気」の方がタチが悪い (不平湯)
2016-11-17 00:36:49
久々にコメントさせて頂きます。

>日本の体育会系的な上下意識がそのまま持ち込まれている、それを組織として是認している職場は少なく
ありません。

「教育」「指導」という名目の下での暴力が、「日本株式会社」の「社風」であることがわかりますね。会社(工場)組織の中で「思考停止」のロボットであることを強いられる。それを「常識」とする企業は「ヤクザ以下」と言ってよいのではないのでしょうか。「奴隷根性」こそ、「堅気」というやつの「本質」では?と愚考致しております。

「わが志は遊侠にあり、仕官にあらず」
(清水次郎長)

彼の言から学ぶことは多いと思います(笑)。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

雇用・経済」カテゴリの最新記事