非国民通信

ノーモア・コイズミ

JTは利益を確保する方針だそうです

2009-12-06 11:05:48 | ニュース

たばこ、増税分以上に値上げの方針 JT社長(朝日新聞)

 日本たばこ産業(JT)の木村宏社長は4日、記者団に対し「増税の幅以上に価格政策は検討しなければならない」と述べ、たばこ税が引き上げられた場合、増税分以上の値上げをする方針を示した。たばこの消費量の落ち込みは避けられないとみて、価格転嫁で補う考えだ。

 健康志向の高まりなどを背景に、国内のたばこ市場は年5%弱の縮小が続いている。木村社長は「2600万人の愛煙家を考えれば、いかなる増税にも反対する。これまで1本1円以上の増税は経験がなく、決して小幅な増税ではない。健康を旗印に、乱暴な議論になっている」と、政府税制調査会の増税方針を批判した。

 たばこ税の引き上げに関しては「本来取るべきところ(=法人税、所得税)」をスルーして「取りやすいところ」に手を伸ばしている印象も拭えないだけに、相応の批判はあってしかるべきだとは思います。とはいえ、このJT社長の語るところはいかがなものなのでしょうね。まぁ煙草会社の社長として自分の業界を守ろうとするのは当然の反応として理解はしますけれど、何かとツッコミどころに事欠かない気もします。

 中には認めたがらない人もいるようですが、喫煙によって生じる健康被害は深刻なものがあって、それが医療費の増大にも繋がっている、だから増税によって煙草の価格が上がり、喫煙人口が減ればその分だけ医療費の負担も軽減される――たばこ税引き上げにはそうした論拠があるわけです。こうした論拠に対して、いつだったかこれまたJTのお偉いさんが反論していたのをどこかで読んだ記憶があります。曰く「喫煙者が減れば国民の健康が促進されて増えて寿命が延びるから、かえって高齢化が進み医療費の負担も増大する」と。言っていること自体は間違っていないのかも知れませんが、随分と酷い話ではないでしょうか。増税に反対するにしたって、もうちょっとマシな理由はないのかと。

 そして今回の木村社長の方針として、たばこ税が引き上げられた場合は増税分以上の値上げをするそうです。う~ん、便乗値上げ? 便乗値上げで利幅を増やしつつ、値上げの責任は増税した政府に押しつけようという魂胆でしょうか。自分たちは「お客様(=喫煙者)」の側に立っているフリをすることで、「値上がりは政府の増税のせいだ! JTは被害者だ!」と非難の矛先を逸らそうとしているように見えないでもありません。自分たちの取り分は減らないように、ちゃっかり価格転嫁しておきながら……

 世論調査レベルですと、煙草が値上がりするなら禁煙する、一箱500円以上なら5割が禁煙するなどと報道されています。だからたばこ税を引き上げても税収が伸びるとは限らない云々という議論もありますし、JTからみれば煙草の売り上げが減るので、その分を価格に転嫁にせざるを得ないという流れにもなるようです。しかし、5割の人が「禁煙したい」と回答したとしても、実際に煙草をやめられる人はどの程度なのでしょうか?

 だってほら、ニコチンは大麻なんかよりも格段に中毒性が高いわけです。煙草をやめるのは大麻をやめるよりも難しい、そう考えれば「値上がりしたから」程度の動機で禁煙できる人がそれほどまでに増えるとは、なかなか考えられなかったりします。中毒を甘く見てはいけませんから。実際のところ、増税で末端価格が上昇し「やめたい」と思っても、ついつい吸い続けてしまう人が多いのではないでしょうか。だから煙草税の引上げは税収確保の手堅い方法ではありますが……見方によってはヤク中の患者をカモにしているみたいでもありますね(その点では便乗値上げに走ろうとするJTも同罪)。まぁ、日本だっていずれは先進国の水準に合わせる必要があると思いますが、意外にハードルは高そうです。

 

 ←応援よろしくお願いします


コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 医療費が無料だと疑問視する... | トップ | ただの娯楽で終わってくれ »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
値上げすれば (Bill McCreary)
2009-12-06 17:50:37
消費量は(程度はともかく)減りますから、これはある意味ぎりぎりの選択ではあるでしょうね。私は煙草嫌いなので、ぜひ周囲の人間にもやめてほしいと考えていますが。

>見方によってはヤク中の患者をカモにしているみたいでもありますね

まさに同感です。煙草代に「治療費」という名のクーポンを添加しているみたいで…。l

さて、私のブログにも記事の趣旨を理解しないで馬鹿なコメントを執拗によこす人物がいて大変迷惑しました。管理人さんなどは、この種のコメントをたくさん受けていると思います。まったくどうしようもない馬鹿です。
返信する
Unknown (非国民通信管理人)
2009-12-06 18:57:02
>Bill McCrearyさん

 記事の方、拝見しました。定期的に出てくるんですよね、エントリ本文に書いてあることを公然と無視して難癖付けてくる人って。まぁ適当にあしらって追い出すか、黙って削除するか、ですね。
返信する
ドンマイ (nakayosi)
2009-12-07 01:54:01
非国民さんお久しぶりです

カモにされても、吸い続けて90歳まで生きてやろうと思ってます。困ってる人が多すぎて死にたくても死ねませんから~タバコで死ぬなんて運が悪いだけなんよ(笑)
返信する
JTにとっての転換期 (ヒイロ)
2009-12-07 21:34:31
具体的に言うことはできませんが、タイトル通りのことは今までに何度もあったと思います。

この機会に、「タバコ事業に依存して利益を確保する」ことから少しでも離れてもいいのではと思いました。
企業自体が「タバコ依存症」ではお話になりませんから。
他の事業があるのだからやり方次第では何とかなる気がしていますが。

企業ですから「儲けるな」と言う気はありません。それでも、法人税減税の恩恵に与ったの連中には、「一部でもいいから働いている人や社会に還元しろよ」といつも思っています。
返信する
一寸した「財源論」 (こっぱなお役人(北のほう))
2009-12-07 22:31:38
財政法
第五条  すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。
日本銀行法
第三十四条  日本銀行は、我が国の中央銀行として、前条第一項に規定する業務のほか、国との間で次に掲げる業務を行うことができる。
一  財政法 (昭和二十二年法律第三十四号)第五条 ただし書の規定による国会の議決を経た金額の範囲内において担保を徴求することなく行う貸付け
二  財政法 その他の国の会計に関する法律の規定により国がすることが認められる一時借入金について担保を徴求することなく行う貸付け
三  財政法第五条 ただし書の規定による国会の議決を経た金額の範囲内において行う国債の応募又は引受け
四  財務省証券その他の融通証券の応募又は引受け
五  貴金属その他の物品の保護預り

で、非常時規定ではあるのですが、特例国債(赤字国債は財政法違反です…実は…で毎年特例法でクリアしているという)を日銀に直接引き受けさせるという手があったりするんですよね…
で現状を考えると…デフレって非常時じゃないんでしょうかねぇ
まあ、たばこ税の前に本来とるべきところ(法人税と所得税)の税率を元に(というか20年前に)戻せばいいとは思いますが…
たぶん来年7月から上がるんだろーなー

とりとめのない喫煙者からの一言でした
返信する
Unknown (非国民通信管理人)
2009-12-07 23:41:30
>nakayosiさん

 そうですよねぇ、何があっても吸い続ける人は多いと思います。JTが言うほど販売数は落ちない、何ともボロい商売です。

>ヒイロさん

 JTですと食品や医薬品もそれなりにでていると思いますが、売上比率はどうなんでしょうねぇ。どこの会社だって社会情勢に応じて主力商品は変遷していくもの、JTだって煙草にしがみつくばかりが能でもないはずですし。

>こっぱなお役人さん

 まぁ世論的にはデフレは許容範囲、ただしインフレは絶対にダメ、と言うレベルですから。たばこ税も先進国の水準に合わせるべきだとは思いますが、税制や社会保障の面でも同様に先進国の水準を目指してくれませんとねぇ。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ニュース」カテゴリの最新記事