高速無料化、半数が反対=民主支持層にも異論-時事調査(時事通信)
時事通信社が17日まとめた世論調査によると、民主党が衆院選マニフェスト(政権公約)に掲げた主要政策のうち、賛成が最も多かったのは「公務員の天下り根絶」の73.0%。反対が最も多数を占めたのは「高速道路の無料化」の50.3%だった。
調査は9~12日に全国の成人男女2000人を対象に個別面接方式で実施。九つの政策の中から、「賛成」、「反対」の政策を自由に挙げてもらう方法で行った。回収率は67.4%。
それによると、「天下り根絶」に次いで賛成が多数だったのが「子ども手当創設」(44.4%)で、「ガソリン税などの暫定税率廃止」(43.1%)、「温室効果ガスの25%削減」(40.0%)が続いた。反対の政策では、「高速無料化」のほか、「八ツ場ダム、川辺川ダム建設中止」(24.6%)や「子ども手当創設」(21.1%)を挙げた人が多かった。
それぞれの政策を支持政党別にみると、「天下り根絶」は民主党支持の80.1%、自民党支持の67.2%がそれぞれ賛成するなど、支持政党にかかわらず高い評価を受けている。一方、「高速道路無料化」については社民党支持の66.7%、民主党支持の50.0%が反対だった。同党支持の中で次に反対が多かったのが「子ども手当」の18.4%だったことをみても、高速無料化の不評ぶりが浮き彫りになった形だ。
時事通信の別記事では内閣支持率が上げられていますが、それに寄りますと鳩山内閣自体の支持率は歴代3位の60.6%だそうです。一方で上に引用した個々の政策への支持を見ますと、「天下り根絶」が内閣支持率を上回る73.0%もの支持を集めた一方で、2番目に賛成が多かったとされる「子ども手当創設」ですら44.4%と、歴然たる差が開いています。う~ん、やはり公務員叩きが奏功したのでしょうか。天下りが好ましいものではないにせよ、それほど優先順位の高い問題、国民の生活に影響のある問題とも思えないのですがねぇ。
内閣そのものの支持を上回るのは「天下り根絶」だけで、その他の政策に関しては必ずしも十分な賛意が集まっているわけではなさそうです。内閣は支持するけれど「八ツ場ダム、川辺川ダム建設中止」には反対、「天下り根絶」には諸手を挙げて大賛成だけれど、「子ども手当創設」には反対、そういう人が多いのでしょう。ただこの辺は小泉旋風の時と同じこと、支持者は構造改革や郵政民営化に賛成するつもりで票を投じたのであったかもしれませんが、とにかく選挙に勝ってしまえば、あとは「民意を得た」ものとして議席数にものを言わせられるようになるわけです。鳩山内閣だって同様、政策単位で見れば反対の声が強いものであっても、内閣そのものへの支持を背景にごり押しできる状況が整っています。さて、どうなることやら。
ちなみに「「天下り根絶」は民主党支持の80.1%、自民党支持の67.2%がそれぞれ賛成」だそうです。この結果を時事通信は「支持政党にかかわらず高い評価を受けている」とまとめていますが、もうちょっと邪推できそうな気がします。より強く天下り根絶を支持しているのは民主党支持層ですが、それは民主党支持層が元から持っていた傾向と言うより、天下り根絶を支持する人が民主党も支持するようになった結果ではないかと、そうも考えられないでしょうか。「官」を敵に見立てたカイカクは既に小泉時代から始まったものの、能力不足の際だつ麻生内閣時代に頓挫しつつあった、麻生内閣では期待したような天下り根絶が実現不可能と見た人々が、今度は民主党にカイカクの夢を託すようになった、その結果が今に繋がっているのではないかと。
北九州―阪神間で長距離フェリーを運航する阪九フェリー(北九州市)は17日、大型フェリー6隻のうち2隻を収支改善のために売却することを明らかにした。昨秋来の不況や高速道路料金を大幅に割り引いた「千円高速」の影響で利用が落ち込み、10月から一部路線を減便し、船員らのリストラにも踏み切った。
売却するのは、減便で使わなくなった大型フェリー(約1万5千トン)の2隻。すでに海外企業との価格交渉に入っている。同社幹部は「不況と高速道路料金の値下げのダブルパンチで客を奪われた。政府が高速を無料化するなら、さらに厳しくなる」と理由を説明する。
同社によると、毎年の旅客数は四十数万人、乗船するトラックも20万台強あったが、現在はその7割程度に落ち込んでいる。売上高もピークの07年度の110億円から、今年度は70億~80億円程度に減る見通しという。
このため、1日2便運航していた北九州・新門司―大阪・泉大津間を今月から1便に減便。9月末には約340人いた従業員のうち、船員約30人をグループ会社などに出向、派遣させ、発券や予約業務に携わっていた派遣社員やパートの計約50人との契約も打ち切った。
さて、民主党の目玉政策の中でも際だって反対が多いのが「高速道路無料化」です。まぁ自分で車にならずとも、日常生活の中で普通に購入する商品の大半はトラックで運ばれてきたものです。だから誰しも間接的に高速道路を利用している、その点では高速道路料金の値下げ、無料化の恩恵とも無縁ではないのでしょうけれど、やっぱり弊害も大きいような気がします。上の例は不況の影響もあって純粋に高速料金値下げの影響だけではないようですが、それでも「千円高速」が自動車以外の交通機関に与える影響は無視できるものではなさそうです。「千円高速」でもごらんの有様なら、無料化した場合はどうなるのでしょうか。
まぁ時代とともに交通機関だって移り変わるもの、馬車や人力車のように、いつの間にか不要になっていくものもあるわけです。だから何が何でも既存の公共交通機関を存続させなければならないとは言いませんが――フェリーの場合はどうなんでしょう? 高速料金の値下げ/無料化にもプラスの側面はありますが、「温室効果ガスの25%削減」を掲げる以上は自家用車の利用が増えすぎるのも困りもののはず、しかしフェリー路線が不採算で廃止になってしまえば猶更、車を走らせるしかないですよね。そして引用記事で紹介されている阪九フェリーでは「派遣社員やパートの計約50人との契約も打ち切った」そうですが……
まぁ、その辺が国民の望むところに近いのではないかという気がします。結局のところ「官」のやることは全てムダという感覚があって、そこに給与を支払うなどとんでもない、と。公共サービスの価値を国民が「認める」ようにならない限りは、自分たちの首を絞め合う状態が続きそうです。
>慎太郎の夢は終わったさん
悪質な業者の中には、高速料金をドライバーに持たせるところもあると聞きますね。ならば物流事業者に限定して無料化にすればいいのではないかと思うのですが、どうもそう言う方向性では議論されていないようです。結局は公約を守るか守らないか、みたいな議論になっちゃうのかも知れません。
浮いた高速費の行方も気になります。
たとえば、某ダムの関係ですが、「洪水予測4mを”たった”15cm下げるだけ」という意見(この人はだから無駄といってましが)がありましたがその15cmで下流堤防の破堤を防げたりするのが水政の怖いところなんですよね。
まあ、そういう人には泥水かぶってもらうのが一番説得力のある説明かもしれませんが…
まあ、おそらくマスコミの求めている究極の政府は「公務員は全部ボランティア(つまり無給)でかつ神のごとく間違えを起こさない人たちの集まり」にしたいのかなぁ~と思いますね…
無料化で生まれる新たな雇用も期待できないことはないのでしょうけれど、現に職を失っている人がいて、その流れが加速されるであろうことを思うと心の痛む部分もありますよね。
>貝枝五郎さん
高速を走らせるより、船でまとめて運んだ方が省エネの面では遙かに有効ですね。温暖化ガス削減も高速無料化もそれぞれ意義はあるのでしょうけれど、相互に矛盾し合っているのは何だかなぁ、と。
>源内山人さん
なんと言いますか、「国民に必要なもの」よりも、「有権者が喜びそうなもの」を優先している感じですね。「天下り根絶」は歓迎される、「高速道路無料化」もやればやったで意外に好評なのではないかと思いますが、前者は国民の生活にはほとんど影響がない、後者は弊害が大きい、どうも政治の役割としては……
有権者の下衆根性を満足させるだけのように思います。
まあ、ポピュリズムで政権維持するためには必要なことなのでしょうが・・・。
「高速道路無料化」…国民が切実に求めていたわけでもなく、せいぜい「だったらいいなぁ・・」程度に思っていることを、マニュフェストに謳ったからといって弊害も無視してごり押しするのはどうなんでしょう。「絵に描いた餅」を「生の餅」にしようと必死になっているように見えますが・・。
差し迫っている水問題については『どうなっているの?日本と世界の水問題』(アットワークス)などが世界的な水不足や不平等について論じていますが、そもそも陸路ではなく海路をとおることで、水素結合という特性から生じる水の持つ高度な運搬能力をふまえ、実にわずかのエネルギーで大量の輸送が可能になるわけです。
関連したネタとしては『世界』(2009年8月号)の特集が「道路が暮らしを食い尽くす」です。また、同10月号168ページには「環境と都市生活にやさしい21世紀型の都市交通政策を求めて」という記事もあります。
(一方で、いくら海路が陸路より効率的であるといっても、老朽化した船のリサイクルについては別途かんがえねばなりませんが、その点は『世界』(2009年8月号)の「背の悪リサイクルの光と影」(260ページ)をご覧ください)
無理化で‥‥50人が
雇用対策打ち出せない時
50人も‥罪だよ