非国民通信

ノーモア・コイズミ

ガザとドンバス、イスラエルとウクライナ

2023-12-31 22:24:53 | 政治・国際

 一口にネオナチと言っても、その定義の範囲は人によりけりでしょうか。対象を反ユダヤ主義やヒトラー崇拝に限定した狭義のネオナチ観もあれば、ナチス的な振る舞いとの類似性を根拠にした広義のネオナチ像もあるわけです。また一時はネオナチ組織として日本の公安からも認定されていながら、ロシアと戦っているからと言う理由で認定されていた履歴もろともホワイトウォッシュされたウクライナの武装勢力もあるなど、当人達の思想信条以上に政治的な都合が幅を利かせるとも言えます。

 もしナチズムの定義として「ユダヤ人を標的にすること」を絶対条件とするのであれば、イスラエルがそこに当てはまることはないのかも知れません。しかし国内主要民族の生存圏から異分子を抹殺していこうという思想をナチズムの要件とするのならば、イスラエルこそが現代におけるナチスの正統な後継者であると言うことが出来ます。80年前と現代で違うのは、ゲルマン人がユダヤ人になり、ユダヤ人がパレスチナ人に変わっただけのことですから。

 そしてキエフ政権には「2022年までは」ネオナチとして認定されていた組織が幅を利かせており、ナチスと協同してソ連と戦ったウクライナ人を国家の英雄として祀ってきた事実があります。そうしたウクライナを「非ナチ化する」ともロシアは主張しているところですが、これに関して「ゼレンスキーはユダヤ人(ゆえにナチズムではない)」と擁護する声も西側メディアから繰り返されてきました。しかしユダヤ人国家であるイスラエルこそが、「ナチス的な振る舞い」に最も忠実であることは意識されるべきでしょう。

 ガザとウクライナを巡って、欧米諸国は矛盾した態度を見せていると言われるところです。もちろん西側諸国のダブルスタンダードは今に始まったことではありませんけれど、これに関しては前提が違った批判にも見えます。そもそもガザとウクライナでは比較対象として立場が合わない、むしろ並べるべきはガザとドンバスであり、イスラエルとウクライナであるはずです。そしてこの流れでロシアと対比するものがあるとしたら、イランあたりではないでしょうか。

 2014年にウクライナではクーデターが起こり、投票によって選ばれたはずの大統領が追放されました。権力を握った反ロシア派武装勢力は国内のロシア系住民の弾圧に走り、ロシア系住民の多い東部ドンバス地方との内戦が始まります。このドンバス地方のインフラや住民の生活を支援してきたのがロシアで、そこから8年を経て直接介入へと至ったわけです。ガザに追いやられたパレスチナ人と立場が近いのはドンバスのロシア系ウクライナ人であり、同様にシオニスト政権と立場が近いのはキエフ政権であることは言うまでもありません。

 実際のところハマスによる反転攻勢が大きな成果を上げたとき、ゼレンスキーは真っ先にイスラエルへの連帯を表明しました。アメリカを後ろ盾とする陣営の同志であるだけではなく、思想信条の面でネタニヤフとは共感できるところもあったのでしょう。2022年までウクライナで何が起こっているか知らなかった人がそうであるように、それまでガザで何が行われていたか知らない人は、ロシアが/ハマスが戦争を始めたかのごとく勘違いしているわけですが、今に至る背景はもっと深いところにあります。

 ロシアは長らく、ドンバス地方住民の自治権と恩赦をウクライナに要求し続けてきました。結局のところキエフ政権の攻撃は止まずロシアによる直接介入が始まったのが2022年ですけれど、イスラエルとガザを巡っても同じことは起こるでしょうか。「国際社会」からの煮え切らない支援はガザにも送られていますけれど、これがパレスチナ人の抑圧された状況を解決することは考えにくく、最終的にはシオニスト政権をなんとかする必要があるわけです。そこでイランあたりが直接の軍事介入に踏み切るとしたら──それを上策とは思いませんが、大義はあると言いたいです。

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