非国民通信

ノーモア・コイズミ

消費者が気にしないこと

2021-04-11 22:05:01 | 雇用・経済

アマゾン労組、結成ならず 従業員の反対多数(時事通信)

 【シリコンバレー時事】米インターネット通販大手アマゾン・ドット・コムがアラバマ州ベッセマーで運営する物流倉庫の従業員らが、労働組合結成を問う投票を実施し、9日に反対多数で否決された。全米で第2位となる80万人超の従業員規模を誇るアマゾンで、労組が結成されるか注目されていた。

 投票実施の背景には、過酷な労働環境の是正を求める声が高まったことがある。アマゾンは新型コロナウイルス禍で加速した巣ごもり消費を追い風に利益を伸ばす一方で、感染対策の強化が不十分として従業員が各地でストライキを起こしていた。
 投票は郵便で3月29日まで実施。独立政府機関の全米労働関係委員会(NLRB)が今月9日、反対が1798票となり、賛成738票を大きく上回ったとの集計結果を発表した。

 

 同じアマゾンでもヨーロッパ拠点では組合が結成されているところも多いそうですが、アメリカでは反対多数で否決されたことが伝えられています。労組もピンキリ、日本の多数派労組のように会社の決定を追認するだけ、従業員の待遇よりも民主党の応援の方が大事な組合もありますが、どうしたものでしょうね。

 大手企業の問題が報じられるのは有名税的な部分もあって、実際には世間の注目を集めることのない中小企業においてこそ本当の問題が潜んでいる場合も少なくありません。客観的な事実としてアマゾンは競合他社よりも高めの賃金水準を設定しており、その辺は労働環境も悪ければ賃金も低い無名のブラック企業よりはマシとも言えます。

 一方で今回の投票を前に会社側の露骨な組合潰しがあったとも伝えられている他、過酷な労働環境を示す一例として「プラスチック瓶に用を足すしかない状況になった」との証言まで出てきたわけです。後者については会社側も事実として認めている状況で、まぁ労務面の問題は否定できないところなのでしょう。

 非人道的な労働の結果として消費者まで届けられる商品をどう扱うべきか――これに対する市場の回答は極めて政治的です。アメリカが強制労働云々との口実で中国/ウイグル製品の輸入を禁止したとき、これに追随する流れは日本でも見られます。しかし技能実習と称して外国人を非人道的な環境で働かせて生産された商品を日本市場が拒んでいるかと言えば、答えは否です。

 フェアトレードという、ままごともあります。フェアトレードとは理念こそ尊いものの、その実はチョコレートやコーヒー、手芸品など適用される範囲は限定的なまま絶望的に広がりを見せない運動でもあるわけです。例えば消費者がiPhoneを買うとき、その生産工場では従業員が自殺にまで追い詰められるような過酷な体制が組まれていたことなど誰も気にはしませんから。

 「かわいそうな子供たち」へのこれ見よがしの同情心や、アメリカの覇権を脅かす存在を潰すのに好都合だから、そうした理由で商品が選ばれたり排除されたりすることは至って普通の光景です。一方で、負けず劣らず激務であったり薄給であったり差別的であったり等々、ブラックな労働によって作られた製品が市場に受け入れられるのも日常的な風景です。

 従業員の待遇が悪いから――そうした理由で問題のある企業の商品やサービスが消費者から忌避されるようであれば、もう少し世の中は変わったことでしょう。アマゾンで買い物をするとき、その物流倉庫で働いている人の待遇をほんの少しでも考えてみる人が増えてくれればな、と思います。まぁ、競合他社がアマゾンよりまともかと言えば、そこは別問題ですけれど。

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