入院医療費の自己負担について、サラリーマンら現役世代は3割と法律で定められているが、建設業者らが加入する11の国民健康保険組合(国保組合)は実質無料にしていることが朝日新聞社の調べで分かった。5国保組合は月1万円程度に負担軽減している。これらの国保組合への国庫補助は2008年度は計1378億円で、医療費の4~6割を負担している。国庫補助は医療保険の財政支援が目的。法定給付を大きく上回るサービスを提供する組合に税を投入し続けることを疑問視する声が出ている。
国保組合へのアンケートや内部資料をもとに集計した。高い水準の保険給付をしているのは、大工や左官、配管工など建設関連の業者らでつくる全国建設労働組合総連合(全建総連)の組合員と家族が加入する国保組合。医療機関の窓口で3割を負担した後で、国保組合から払い戻しを受ける。負担軽減の対象者は計91万人。
給付内容は組合ごとに異なり、東京土建国保組合(家族含めて加入者23万2千人)では本人、家族とも入院時の負担はゼロ。本人は通院時も月5千円以下。29都県の建設関連業者が入る中央建設国保組合は本人(14万9千人)の入院・通院時の自己負担を月5千円以下に抑えている。
まぁ例によって否定的なニュアンスで報道されているわけですが、入院医療費の自己負担分を実質無料にする、これって「あるべき姿」なのではないでしょうか。医療や教育は無料であるべきと考える立場からすれば、この全建総連の組合こそ模範であり、モデルとして見習われるべきものであるように思われるのですけれど。
ちなみに建設業の組合と言ってもゼネコンの組合ではなく個人や零細事業者のための組合のようです(詳細)。病気やケガで仕事ができなくなれば、即収入の道が断たれてしまうような労働環境に晒されている人々のための保険なのですから、入院医療費の自己負担分を無料化するぐらいしても罰は当たらないと思います。でもたぶん、そこに否定的な目線を投げかけるのは朝日新聞だけじゃないのでしょうね……
厚生労働省によると、全建総連系の国保組合は22あり、保険給付に対する国庫補助率は平均47.5%。12組合が5割を超え、長崎県建設事業国保は60.3%に達する。ただ、高額療養費関連事業への補助など計約30億円や、都道府県の補助分が含まれておらず、実際の補助率はさらに高いとみられる。
全建総連の勝野圭司社会保障対策部長は「払い戻しの費用は(組合員が負担する)保険料だけで賄っている。払い戻しがあるだけで、裕福な組合だという議論は一面的だ」と反論している。
実際問題として、全建総連系国保組合への国庫補助率は、他の国保組合の平均より高いみたいです。その辺の理由についてはこちらでも語られていて、要は個人加盟がベースなので、労使折半というわけには行かない、すなわち事業主から保険料が徴収できないから相応の国庫補助が必要になるということです。他の個人加入型の組合の場合がどの程度なのかは知りませんが。
ただ補助率が高いとしても、それを労働者のため、保険加入者に対するサービス向上のために用いているのですから組合としての筋は通しています。そして保険加入者への払い戻しが多いのは、それこそ組合の経営努力の結果でもあるはずです。まさか放漫経営で財政が火の車であれば国庫補助率の高さも納得できる、めでたしめでたしと言うわけでもないでしょう。あるいは内部留保を積み上げる大企業よろしく、資本を労働者への還元ではなく積立金の貯め込みにでも振り向けていれば許されるのでしょうか。組合の経営努力で保険加入者へのサービスを向上させた結果として世間からの非難を浴びたり補助金の減額を検討されたりするとしたら、これまた随分と酷な話です。
まぁ美しい国では横並び意識が強いと言いましょうか、「部分的にポジティヴ」なものが最も非難を浴びやすいような気がします。つまり「一部だけでも救われる」システムこそ最も嫌悪され、それよりはと「誰もが等しく救われない」システムの方が歓迎されがちなのではないでしょうか。例えばほら、「正社員だけでも雇用を守る労組」とか「(公共事業など)一部地方と土建屋だけが潤う富の再分配」なんか、ボロクソに言われていますよね。もちろん、例示した両者ともに「不完全」という点で批判の余地は大いにあります。ところがこうした「不完全」なものが否定された結果として、「正社員の雇用すら守られない」「全くと言っていいほど富が分配されない」社会が作られてきたわけです。今回の全建総連系国保組合の場合だってそう、この組合の加入者だけが医療費無料化に近い状態にあるとして、ではこうした「不平等」を是正した結果はどうなるのでしょうか?
一部だけが優遇されていると考えれば問題があるように見えますが、一部だけでも好ましい状態にあるというのは、本当は非難されるべきではなく未来への一歩として尊重されるべきだと思います。皆で「平等に」後退するよりは、誰か一人でも前に踏み出せる社会の方が、まだ全員が前へと歩める社会に近いですよね? 特定の組織が自分のところだけでも「あるべき姿」を維持している、これが批判的に受け止められているわけですけれど、それはすなわち権利を守ろうとする個人に非難を浴びせる社会ゆえのことにも見えます。こうした負の平等を求める価値観が変わらないといけません。
この件に限らず、母子加算や生活保護受給者(ちょっと違いますが)に対する声も、根底にあるものは同じに思えます・・・
そこには、国の懐具合を心配する麗しい「美しい国民性」とともに本来目指すべき方向ではなく、「下にあわせないのはけしからん」という、まさにお上にとっては願っても無い状況にまっしぐらといった哀しいメンタリティーといえます。
公務員たたきもしかりですね・・・
ほんとに敵を作って、叩くのが好きな国民のようです(泣)
管理人さまもいわれていたように自分の得になるほうに思いが行かないのが不思議なんですが・・・
ていいますか、医療費がかさんで生活がとんでもなく苦労するなんてのはごくありふれた日常的光景のわけで、「昔はよかった」みたいなことを書くのは本当にいやなのだけど、以前の朝日新聞は、このような事例をここまで否定的なニュアンスで報道することはなかったと思います。けっきょく読者がこのような実情を嫌っているのでしょうね。ほんと、どうしようもない馬鹿です。
そう、結局のところ「上」ではなく「下」に合わせる方を国民が望んでいるところがあると思います。おかげで支配する側としては楽なことこの上ないのでしょうけれど、支配される側の生活は「楽にならざり」でしょうか。せめて自分で自分の首を絞めていることに気づいてくれませんと……
>Bill McCrearyさん
読者あっての新聞ですし、昨今は特に読者に媚びる傾向がメディア全般に強いですから、単に朝日新聞の主張である以前に、新聞購読層の共感するところのもであるでしょうね。医療費が全額保険で賄われるというのは本来、理想であるはずなんですが、他人の厚遇こそ許せないと思う人が多いのでしょう。
法的に問題がないし、共催としても然るべき要件も整備しているなら「ほっとけよ」という話なのですが叩きたいだけの連中に迎合するのは劣化の証左かもしれません。
個人事業主は建前だけでなく、実質不安定な立場なのですから、こういう制度がないと誰も職に就く人がいなくなることは明らかです。
権利に関わることを悉く特権呼ばわりしていたら世界の笑いものになるのですが。
まじめなのはよく分かるのですがその善意を人に押し付けるのがウザいです。はっきり言いますが。(みんなで「一緒に地獄へ落ちようキャンペーン」?ネタだとしても笑えない
そもそもはじめからうまくやりくりできる人なんてなかなかいないんじゃないでしょうか。
貯蓄に回してそれっきりの人も中には、いるかもしれません(その時では。
ですが、あれこれ試行錯誤してやっていくそういうところからでもいいんじゃないかと思うんですけどね。(必ずしも勉強のために使う必要もないでしょうし
使いたいときに使う、でいいんじゃないでしょうか。
現状じゃ「使えない(稼ぐ時間もない)」のが・・・・というところなんですから(そこでまた「切り詰めろ」などという・・・またまた(ry。
まぁ世界の笑いものにされた分だけ、より自分たちの世界に籠もっていくのではないでしょうかね。カルトと同じようなものです。
これはどこに向かって言っているのですか?
ご自分が言われているかも知れないって考えたことはありますか?