非国民通信

ノーモア・コイズミ

仕事「以外」のことで忙しい

2010-07-07 22:56:51 | ニュース

就職留年7万9000人、大卒予定7人に1人(読売新聞)

 卒業年限を迎えながら留年する学生が全国の大学で少なくとも7万9000人いると推計されることが、読売新聞の「大学の実力」調査で明らかになった。

 根強い企業の「新卒一括採用」を背景に、就職が決まらず翌年に再び「新卒」として就職活動(就活)に臨む学生が急増している。卒業予定者数は約56万8000人で、7人に1人は留年している計算になり、就職戦線のさらなる激化を招いている。就職留年の実態が具体的に明らかになったのは初めて。

 成績が悪いから卒業できずに留年するのではなく、単位は取得したけれども就職のために留年する大学生が7万9000人、およそ7人に1人の学生は勉強ではなく就職のために大学に残るとの調査結果が明らかになりました。私の学生時代ですと公務員試験のために浪人や留年する人は珍しくありませんでしたが、今や普通の民間企業志望でも7人に1人は就職できずに留年する、何とも凄まじい時代です。求人対象が新卒者に集中しているにもかかわらず、この体たらくなのですから目も当てられません。

便所掃除を徹底しても、生産性は上がらない(日経ビジネスONLINE)

 掃除を重要視する経営者は多い。率先して便所掃除に精を出す経営者も珍しくない。当たり前のことを徹底できる組織にするのに、掃除はうってつけということらしいが、筆者はどうも眉唾だと感じている。

 物流現場の運営においても「整理・整頓・清掃・清潔・躾」を意味する「5S」の徹底は管理の基本とされている。実際、何がどこにあるのか分からないような現場では、いちいち時間を無駄にしてしまう。

 しかし、掃除の行き届いた現場が必ずしも良い現場とは限らない。その反対に、雑然とはしているけれど、抜群に生産性の高い現場、儲かっている現場を、これまで筆者は数多く目にしてきた。

 QCサークル活動も同様で、これもまた一般には日本的経営の強みとされ、物流現場でも広く実施されているが、果たしてその活動が生産性にどれだけ貢献しているのか、疑問に感じることが少なくない。

 トップの思いつきに振り回されるのが労働現場の常ですが、トイレ掃除もトレンドの一つですね。従業員としてはたまったものではありませんが、この手の精神主義的なカイゼン活動をやらせて悦に入る経営者も多いのでしょう。しかるにカルトじみたトイレ掃除はさておくとして、相対的にはマトモに見える5S活動やQCサークル活動の類が成果を上げているかというと、これもまた甚だ疑わしいことのようです。詳細はリンク先をお読みいただければと思いますが、5S/QCサークル活動と生産性は、負の相関関係にあることが示されています。5S/QCサークル活動を「やらない」職場の方が、明確に生産性は高いのです。

 生産性の高い職場は元から5S/QCサークル活動を必要としていないとか、労働力管理の失敗を5S/QCサークル活動でごまかしている等の指摘もあります。しかし、5S/QCサークル活動そのものが仕事の邪魔になっている可能性も考えられるでしょう。ともすると業務改善活動そのものが目的化され、本業の妨げになっている、そんな本末転倒した職場もまた決して珍しくないように思います。お偉いさんは社員の5S/QCサークル活動への取り組みを見て悦に至るけれど、生産性は上がらないまま……

 ところが日本の労働生産性は先進7カ国中15年連続の最下位で、とりわけ物流業も含めたサービス業の生産性が低いという(日本生産性本部「労働生産性の国際比較2008年版」による)。

 サービスの生産性は国際比較が難しい。1つひとつの新聞に雨よけのビニールをかけて指定された場所に投函する日本の新聞配達と、玄関先に裸の新聞を放り投げる海外のそれを、同じ1件の配達として比較するのはフェアではないだろう。

 しかし、そうしたサービスレベルや品質の違いを除外しても、まだ日本のサービス業の生産性が低いのだとしたら、その原因はどこにあるのか。少なくとも現場作業員のモラールやスキルにあるとは筆者には思えない。

 日本のサービス業の生産性が低いとすれば、それは合理性を無視した精神論を振りかざし、献身的な活動を現場に強要する管理者側に原因がありそうだ。必要以上に掃除を礼賛する経営者は、その元凶ではないかと疑っている。

 生産性が低くなる要因としては、長時間営業故に時間当たりの生産性が低くなる等の要因も付け加えておくべきでしょうか。たとえば昼しか店が開いておらず、誰もが昼の内に買い物を済ませるような社会と、どこも24時間営業で客はいつ来るかわからない社会、時間当たりの生産性が高いのはどちらになるか、その辺は一目瞭然ですよね。そのほかにも挙げられている新聞の配り方など、過剰なまでのサービスの質の高さが生産性を下げている部分もありそうです。そして業務改善活動、トイレ掃除などの精神論など、生産性向上に寄与しない「余計なこと」に労力をさいているのも大きいと考えられます。

 たとえば新人研修と称して自衛隊に体験入隊させたり等々、「仕事とは関係ないこと」を教え込もうとすれば、当然ながら生産性は低下するわけです。余計なことを止めて、仕事に集中すれば生産性も上がるし労働環境もちょっとはマシになりそうな気がしますが、それではお気に召さないのが日本の経営感覚というものなのかも知れません。冒頭の新卒採用のケースだって、過剰な厳選を行うことで生産性を引き下げてはいないでしょうか。雇用側は採用活動に余計な時間と費用を費やし、学生側は勉強を止めて就職活動に全身全霊を捧げる、それでいて厳選に厳選を重ねて選び抜いたはずの新入社員に「今時の若者は~」「ゆとり世代は~」と不平をこぼすとしたら何とも不毛なことです。業務改善活動に厳選採用、そして精神論を振りかざしておけば、何か「やるべきことをやった」感覚になれるのかも知れません。しかし生産性を上げるのに必要なのは、「余計なこと」に労力を費やさないこと、経営者の趣味に走らず、仕事だけをやることではないでしょうかね。

 

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2 コメント

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Unknown (シトラス)
2010-07-11 12:38:57
社会主義が崩壊した理由の一つとして、労働者に何の得にもならないスローガンだけたたき込んで、実際の利益がもたらされなかったからだという説があります。

説教をするのが国家ではなく企業なだけで、実利よりも精神的なものを重視しているという点では似ていると思います。

余談ですが相変わらずみのもんたは留年した学生に対し「選ばなければ仕事はある」とかのたまっていました。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-07-11 14:23:27
>シトラスさん

 ソ連なども現実よりも建前が優先されていたイメージがありますね。実際にどうであるか、よりも国家理念が実現されていると強弁することの方に忙しい、社会の立て直しよりも「世界観」を維持することに躍起になっている部分もあったように思います。では日本がそうした傾向とは無縁かというと、とてもそうは考えられない辺りが何とも言えません。
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