解散近し!橋下人気引っ張りだこ…与野党ともあやかり作戦(読売新聞)
次期衆院選をにらんで、大阪府の橋下徹知事に自民、民主両党が接近している。橋下知事は4日、東京・永田町で自民党の若手や重鎮の国会議員に招かれた勉強会をはしごし、17日には大阪市内で民主党大阪府連のシンポジウムに参加する。与野党ともに、〈橋下人気〉を引き寄せたいとの思惑が見え隠れする。
4日午前、自民党本部で若手議員ら約15人が勉強会を開いた。大きな拍手で迎えられた橋下知事は「このまま総選挙になったら自民・公明は確実に負ける」と切り出し、「国民は変化を求めており、霞が関を変えるという期待は民主党にある。国民が民主党に感じている可能性をひっくり返すくらいの政策を打ち出してもらいたい」と訴えた。
呼びかけ人の一人、松浪健太衆院議員(大阪10区)は「自民党が知事と同じスタンスで地方分権を推進することをアピールできる」と満足そう。選挙目当てとの憶測は否定するが、「選挙ポスターは、橋下知事とツーショットができればありがたい」と本音を漏らす。
橋下知事は同日午後、同党の中川秀直・元幹事長や菅義偉・選挙対策副委員長の政策勉強会にも出席する。
一方、昨年の府知事選で対立候補を擁立した民主党大阪府連も17日、地方分権をテーマに開くシンポジウムに、橋下知事をパネリストとして招く。開催日は知事側の都合にあわせて決めた。同党府連の国会議員は「知事が民主党の政策を支持するという意思表示をしてくれれば、強力な後押しになる」と期待を寄せる。
土曜か日曜辺りの朝日新聞に、THE FACTS河村たかしの名古屋市政が来るべき民主党政権のモデルケースになる云々と載っていました。民主党(民主党系会派)が与党を務める地方自治体なんていくらでもあるわけで、何も河村市政を試金石とする必然性などないと思うのですが、「人気のあるところ」というのがポイントなのでしょうか。「国民の声に耳を傾ける」以上、人気者に従うのが党の路線になるのでしょう。
……で、地方自治体の首長の中では最も「国民の支持」があるであろう橋下に、自民、民主の両党とも擦り寄っているそうです。そして両党の橋下への評価はおしなべて高いようですが、一方の橋下当人はと言えば、政策面では民主党に、心情的には自民党に期待するところが大きいようです。「霞が関を変えるという期待は民主党にある」が、自民党にこそ「国民が民主党に感じている可能性をひっくり返すくらいの政策を打ち出してもらいたい」と。
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こちらでも書いたことですが、一部の民主党支持者(民主党支持ブロガー、ただし「特定の政党を支持しているわけではない」と断りを入れたがる人々)が民主党を支持する理由は、少なからず疑わしいものになりつつあります。長年続いてきた自民党の保守政治ではなし得なかったことを実現するため、小泉改革の惨禍を繰り返さないため、発端はそういう理由であったものが、いつの間にか「民主党の勝利」が究極の目標になっているケースも多々あるわけです。そうした人からすればどうなのでしょう、「橋下と手を携える民主党」の勝利もまた待ち望んだ未来なのでしょうか?
「誰が総理に相応しいと思いますか」みたいなアンケートで、疑惑発覚以前の小沢一郎は麻生太郎の上にいました。ところが上には上がいて、「小泉純一郎」が小沢一郎よりも多くの期待を集めるなど、「その手の」政治家の人気は依然として高い、「敵」を見立ててそれと「戦う」政治家を性懲りもなく歓迎しているのが世論でもあります。
一方で政府与党こと自民党は三代続けて小泉政権時代の「負の遺産」に苦しめられ続けてきたわけです。同じ路線を続ければ国民の歓心を買うことは出来ても、その破綻を取り繕うことは出来ない、否応なしに現実と向き合わざるを得なくなったのが現在です。だからこそ、小泉「カイカク」路線の見直しが自民党内ですら進みつつあるのでしょう。しかるに「カイカク」や「抵抗勢力(いつのまにやら「既得権益」なる新しい言葉が使われるようになりましたが)」との戦いを期待する声は治まっていません。そこに乗じたのが橋下であり、河村であったりするわけですが……
民主党大阪府連は橋下をシンポジウムに招くそうです。曰く「知事が民主党の政策を支持するという意思表示をしてくれれば」とのことですが、それはつまり、民主党の政策も橋下の政策も同じ様なもの、あるいは同じものにするつもり、ということでしょうか。確かに鳩山の言動――自民党政治そのものではなく「官僚政治」を敵に見立てて非難し、自民党がダメな理由は自民党そのものではなく「自民党では官僚政治を打破できないから」と語る――を鑑みると、むしろ麻生より鳩山の方が橋下との距離は近そうにも見えます。
たぶん、「勝利」のため、ひいては「政権交代」のためには、それが最適なのでしょう。小泉、橋下、河村の路線が勝利への近道、それは各種世論調査や選挙結果が証明するところです。しかるに民主党が勝利を求めて政策面でも橋下に擦り寄り、一方で自民党側も政権を失うまいと、カイカクの見直しを中止して再び小泉路線に回帰する(まさに橋下が訴えるとおりに!)、そうなると再び「改革を競う」時代が到来するのかも知れません。国民が新しい小泉を待ち望む中、どちらが「新しい小泉」に近づけるか、それを自民と民主で競い合う悪夢の到来です。
自民にしろ民主にしろ、どちらかの「攻勢」で状況が変化するよりも、一方の「敵失」で反対陣営に指示が流れるのが常でしたからね。与党の分断策よりも前に、鳩山兄の失策から亀裂が広まる可能性の方が高いかも知れません。
でもって社民党と共産党については「与党 野党分断狙う」(毎日新聞6月12日号5ページ)としてさらなる分断策が用意されている模様です。憲法審査会についての記事ですが、ほかの点でも野党は分断されそうな…というか与党がなにもしなくても勝手に分断しそうな気がします。
小沢一郎の時はまだ、その気配は乏しかったのですが、鳩山となると「そっち方面」に転びそうなフシがあるんですよねぇ。しかもそれが「有権者のお墨付き」で行われてしまうと、もう「抵抗勢力」の頑張りに期待するしかないのかと、そういう状況になってしまいそうです……
次の選挙はどうも民主党が有利らしいですけど、勝つために自民と民主が「小泉的」「橋下的」なものを追い求めるなんてことになる可能性がほんとにありそうですよねえ。「石原的」なものは、さすがに後継者は希薄ですが、小泉や橋下ならまねしたがる馬鹿がたくさんいますし、あんなのを支持する馬鹿有権者もたくさんいますから、これはかなりやばそうです。
石原慎太郎とその支持層が「三国人」は差別用語ではないと強弁していましたが、辞書的な定義とは別に実際の用例としてはまた別だったりするのですよね。そうした意味では「カイカク」という言葉も、昨今では随分と警戒が必要な言葉になりつつあるような気がします。平時であれば許されないであろう暴論を正当化するための錦の御旗として「カイカク」という言葉が使われてきましたから……
>観潮楼さん
しかし選ぶ側ってのは、改善に時間が掛かることを理解せず、「従来の(普通の)政治家ではダメだ!」と言って、よりタチの悪い政治家を選んじゃうんですよね。なんとなく、小泉前夜に逆戻りする気配が濃厚です。
>GXさん
まぁ議席を増やすことも重要ですから気持ちはわからないでもありませんが、しかし橋下と組むような政党が政権の座に就くようでは、それが自民党であろうと民主党であろうと……という気にもなりますね。むしろ有権者の支持を得ている人ほど、ロクデナシ度合いが高いように感じられてしまう昨今ですし。
「前に鳩山さんが代表の時も小泉と改革競争に走ったな。
いい加減状況が変わったのを認めたらどうなんだ。
いつまでも人気取りやってる場合じゃないでしょ。
選ぶ側もいくら生活が苦しいからって大衆ウケに走ってる場合じゃないでしょ。
現状は改善に時間がかかるもんなんだから。
その意味では小さくともキラリと輝く国民新党に・・・ってわけじゃないぞw」
>「橋下と手を携える民主党」
何か「勝たないと国民に何言われるかわからないからオリンピックでドーピング」と似てるなと思いました。その場では勝てるかもしれないが副作用は生涯残ってしまうわけで。
しかし、「改革」って言葉、歪んでしまったなぁと思います。