非国民通信

ノーモア・コイズミ

安全性の社会的な基準

2012-06-17 11:05:17 | 社会

暗すぎるLED電球、3分の1以下も…措置命令(読売新聞)

 消費者庁は14日、「白熱電球60ワット相当」などと表示したLED(発光ダイオード)電球が表示よりも暗いとして、販売元の業者12社に対し、景品表示法違反(優良誤認)で再発防止を求める措置命令を出した。

 製品の大半が半分程度の明るさで、中には3分の1以下の光量しかない製品もあったという。同庁は「ワットは消費電力の単位で、LED電球を選ぶ際は、光量の単位のルーメンを基準に選んでほしい」と呼びかけている。

 

白熱電球の販売自粛要請へ 政府 照明メーカーなどに(産経新聞)

 経済産業省と環境省は13日、節電効果の高いLED(発光ダイオード)電球の普及を呼びかけるとともに、白熱電球の販売自粛を照明メーカーや家電量販店などに要請する。夏場の電力不足に備え、小売業界による販売を含め、切り替えを前倒しする狙い。

 同日、都内で開く会合には、政府側から細野豪志環境相や、経済産業省の中根康浩大臣政務官が出席。民間側からは照明メーカーなどで構成する「省エネあかりフォーラム」の恒川眞一代表(東芝ライテック取締役)や、ビックカメラの加藤周二顧問らメーカー、量販店が参加する。

 

 そう言えば自民党政権時代にも「白熱電球を蛍光灯に取り替えよう」みたいなキャンペーンがあったことを思い出します。あれは安倍だったか福田だったか、それとも麻生の時代だったでしょうか。世間の反応は随分と冷めたもので、むしろ反・自民党色の強い論者からは噛みつかれることも多かったように記憶していますけれど、例によって民主党政権は自民党の真似を繰り返しているわけです。音頭を取るのが民主党であったり省エネにも脱原発が絡んだりすると、同じことを自民党が提唱したときとは全く正反対の態度を見せる人も少なくないとしたら、まぁ肩をすくめるほかありませんね。

 大学時代、「蛍光灯の光は目に悪い」との理由で、日の差している時は教室の蛍光灯を消したり、あるいは蛍光灯が点いているときはサングラスをかけて授業をしていたイタリア人の先生がいました。ヨーロッパあるいはイタリアでは、そういう人もいるのかなと思ったものです。まぁ、蛍光灯が100%安全かどうか、ありとあらゆる側面から完璧に証明されているわけでもないのでしょう。蛍光灯を至近距離で長時間凝視し続ければ確実に目が悪くなりそうですが、そこへ世間に流布する誤解されたLNT仮説的な考え方を当てはめれば、どんなに僅かでも蛍光灯の光は目に悪い、と言うことにもなります。それを言うなら太陽光の方がずっとヤバイというのはさておき……

 ではLEDの安全性はどうなのか。この頃は液晶モニタのバックライトもLEDが主流ですが、従来の冷陰極管を使ったモニタよりも目が疲れるという人もいます。たぶん粗悪なLEDモニタは不自然に青味が強いところに問題があるように思うのですけれど、一方でLEDの光は目への刺激が冷陰極管に比べて強いのではないか、目にダメージを蓄積させやすいのではないかと考える人もいるわけです。どうなのでしょう、LEDの安全性は証明されているのでしょうか? 安全性が完全に証明されているのでない限り、それが使用されることはあってはならないみたいな反原発論者のロジックに沿うなら、LEDは避けるべきもの、原発よろしくLEDは全廃されるべきものとなりそうなものです。

 あるいは「放射能に効く」「放射能を除去できる」との触れ込みで「EM菌」の活用、散布を呼びかける人もいます。あろうことか、実際に自治体ぐるみで取り組むところもあるそうです。しかし、このEM菌の安全性は証明されているのでしょうか。EM菌を推進する人に言わせれば「EM菌は2000℃の高温でも死なない」そうです。これほどの超高温でも殺せないような菌って、要するに放射性物質なんかよりも格段に除去が難しい代物ということになります。そんなもの、絶対に拡散させてはならないですよね、2000℃でも除菌できないものを撒き散らしてしまえば取り返しの付かないことになりますから。

 それでも、EM菌の布教者達は放射「能」の脅威を説く一方でEM菌の危険性、安全性に関しては考えようともしていないようです。原発事故なんかよりも茶のしずく石鹸の方が、あるいはBSEなんかより生レバーなんかの方がずっと深刻な健康被害をもたらしたりもしているわけですが、我々の社会が危険視する順序は必ずしも危険性の度合いとは一致しないのが常です。むしろ、反比例しているとすら言っても過言ではないのかも知れません。結局、我々の社会から「安全ではない」として排除されようとするものは、必ずしも危険だからではなく、単に理解されていないからであり、逆に何の疑問もなく我々の生活に入り込んでいるものにこそ、少なからず見過ごされているものがあるように思います。

 「安心」が「安全」に優先しているとも言えます。一般に「安全」と信じられていれば、その実態には未検証な点があろうとも不問に付される、逆に「安全ではない」と信じられていればいかに検証を繰り返されようとも受け入れられないわけです。「安全」かどうかではなく、国民を「安心」させられるかどうか、そちらの基準が優先されているのではないでしょうか。客観的に見て危険性の度合いが高いものではなく、自身が危険だと信じているものを排除するために行動する、昨今の反原発論などはまさしくそういう方向に邁進していますけれど、そこで得られるのは「安心」であって「安全」ではありません。本当に安全性を気にかけるのなら、LEDなりEM菌なりの安全性だって危惧されてもおかしくないはず、しかるに我々の社会が追求しているのは「安全」よりも「安心」であり、そのためにことごとく判断基準が狂わされているような気もします。

 

 ←応援よろしくお願いします


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 元・若者 | トップ | これもまた、脅しの結果 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (くり金時)
2012-06-17 19:30:32
確かに、LEDは、「虫が寄らない」とか、「長寿命で経済的」なんて言われてますがね。夜中に走っている車のライトにLEDが使われていたりすると、すれ違う際、私からすればまぶしすぎて、かえって危ない。環境にやさしくとも、目には優しくないのかもしれんが。あのPCBやDDT、AF2だって、過去には、もてはやされた頃もあった。LEDには、そういった道を歩んで欲しくはないのだが。最近は安全性でさえ「エコだから安心。」の一言で片付けられてしまうのが、どうにも納得がいかない。少し考えて欲しいのだけど。無理だろうね。
返信する
Unknown (非国民通信管理人)
2012-06-17 21:16:41
>くり金時さん

 私の家でも一つだけ照明用に使ってますけれど、直視したときの刺激が強い感じなんですよね、LEDって。別に日常生活上で直視することはないので気にはしていませんけれど、実際はどうなんでしょう。それから、「(農薬で)虫がつかない」野菜は危ないと考えるような人だっているのに、「無視が寄らない」照明に同様の嫌疑がかけられないのは何故なのか、世間の受け止め方には、ちょっと釈然としないものがあります。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

社会」カテゴリの最新記事