非国民通信

ノーモア・コイズミ

第9波

2023-09-03 22:45:27 | 社会

 昨今は学級閉鎖になるところも増えているようですが、スポーツなんかでも感染症罹患で離脱する選手が定期的に出てきます。我々の社会では感染症対策を緩めることを「経済活動優先」と呼び習わしてきたものですけれど、その結果はどうなのでしょう。少なくとも感染症対策の基準を引き下げた結果として主力選手の病欠が相次ぐようなチームが勝利を優先しているとは思えませんし、看板スターのコロナ感染で興行を中止や延期している団体が利益を優先しているとも考えられません。

 日本社会が最後にコロナを恐れたのは、中国がゼロコロナ政策を終了した時でしょうか。その当時から日本人の移動はスルー、中国「以外」の国からの入国も実質ノーチェック、ただし中国人の入国にだけは厳格な検査体制を敷いていたわけです。差別を差別と思わない大半の日本人は当時のことなど覚えていないかも知れませんが、こうした対応があるからこそ今の意趣返しがあるとも言えます。処理水の海洋放出に対する中国政府の対応は、決して安全性の問題だけではない、そこに至るまでの対立ありきであることは意識されるべきです。

 HPVワクチンを巡る大規模な反動に代表されるように、日本は新型コロナウィルスが登場する前から世界に冠たるワクチン忌避大国でした。そんな我が国の地金が、新型コロナの5類感染症に移行によって政府の抑えが消えたことで今まさに露になっていると言えます。新型コロナの感染拡大当初に私は、感染症が収束するのではなく「社会」が免疫を付けてしまう方が先に来る可能性を予測しました。感染症の拡大という目下の危機を感じなくなってしまう、まさに今、3年前の予見が現実になっています。

 はしかや水疱瘡のように、1回の罹患で免疫が概ね永続するものもあるわけですが、新型コロナに関しては複数回の感染を繰り返す人も珍しくありません。最新の研究では、むしろ感染を繰り返すことによってリスクが蓄積され増大していくとも考えられているようです。例えば蜂に刺されると抗体が出来て、むしろ2回目以降に刺されたときの方が症状が重くなります。悪化のメカニズムは違っても構図は似たようなもの、新型コロナについては身体の免疫には期待すべきではない、むしろ一層の警戒が必要だと考えられるべきでしょう。

 一方で社会的には、コロナに感染しても平気な人がいます。それは症状が軽いから平気と言うことではなく、「本人にとって気にならないから」平気であるパターンですね。例えば自分が病気をもらって、そこから家族や同僚を感染させてしまったとしても「お互い様」ぐらいにしか思わず良心の呵責を覚えない人もいます。電車や狭い店舗の中でも人目を憚ることなくノーマスクで咳き込んでいる人には毎回遭遇するわけですが、こういうのは典型的なバターンですね。

 あるいは出社しても喫煙や雑談、間食で時間を潰してろくに仕事をしていない、でも通常勤務だけではなく飲み会や社内行事は皆勤して昇進を重ねているような人は皆様の勤務先にも多いことと思います。こうした人々は、コロナで仕事を休んでもノーダメージです。本当に忙しい人は病気療養で1週間も仕事に穴が空いたら大打撃ですが、オフィスの中で忙しいフリをしているだけの人にとっては痛くも痒くもないでしょう。むしろ、ちょっと症状のある段階で出社して、辛くても頑張る自分をアピールする好機ぐらいに考えているかも知れません。

 コロナの後遺症としては味覚異常などがよく挙げられますけれど、流行りものを持ち上げているだけで自分の舌では良し悪しを判断できない味音痴は少なくないわけです。いわゆる「情報を食っている」ような輩にとって味覚なんてあってもなくても同じ、コロナの後遺症など恐れるに足らず、というところでしょうか。また咳が続くなんてのも、元より咳を吐き散らすのが習慣みたいな人からすれば実質影響なし、ブレインフォグなんてのも頭など使ったことがなくコミュニケーション能力だけで押し通してきた類いの人にとってはノーダメージと言えます。

 なお新型コロナの罹患によって生殖能力が損なわれる可能性も示唆されています。この辺の認識が広まれば、今までコロナを恐れなくなっていた人にほど有効かも知れません。原発事故なんかの際も、「放射能で子供が産めなくなる」みたいなデマは幅広い層に受け入れられました。仕事に穴が空いても平気、味覚消失もブレインフォグも怖くない、そんな人ほど生殖能力の低下は気にすることでしょう。感染症について真っ当な理解を広めるのは難しいだけに、ある種の層が大いに気にするであろうリスクを前面に押し出していく、公衆衛生のためにはそういう方向性も必要になりそうです。

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