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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

Stéphane Pompougnac /"Hotel Costes X"

2007-10-17 04:00:48 | music6
Costesx



□ Stéphane Pompougnac / "Hotel Costes X"

Benny Sings / Coconut
Goloka / Save Me Tonight
Zimpala / Adios

Release Date; 25/09/2007
Label; Pschent Music
Cat.No.; 824173
Format; 1xCD

>> http://www.hotelcostes.com/


>> tracklisting.

01. Angus & Julia Stone / Paper Aeroplane
02. $olal / Psycho Girls & Psycow Boys (Haaksman & Haaksman remix)
03. Dephazz / My Society
04. Stephane Pompougnac feat. Charles Schillings / Sunday Drive (Remix)
05. Goloka / Save Me Tonight
06. Peder feat. Anne Trolle / White Lilies
07. Zimpala / Adios
08. DJ Disse / Taxi To War
09. Louie Austen / Glamour Girl
10. Deep Dive Corp. / Little Ditty
11. Elijah / Afterlife Feat. Neve
12. Laidback / Happy Dreamer (Happy Horse Mix)
13. Orsten / Fleur blanche
14. Benny Sings / Coconut



夕暮れの冷気と喧騒に沈んでいく
紅く染まったマロニエの街路樹の間に
煙る秋の空を仰ぐ


今やホテルそのものより有名になってしまった感のある、Lounge/Luxury Musicのマエストロ、Stéphane Pompougnacによるパリのラグジュアリー・ホテル、"Costes"のコンセプト・コンピレーション。カフェやレストランが自身のコンセプト・アルバムをリリースし、高級ホテルにも独自のコンピレーションCDが一枚必ず備えられているという流行の走りとなったシリーズであり、今作はその記念碑的な10作目にあたります。

Hotel Costesは、Gilbert & Jean- Louis Coste兄弟によって創られた、パリの高級ホテル。世界中のアーティストやモデル、映画界のセレブリティ御用達の、斬新で格式高いスノッブな空間です。
↓の写真参照。

http://www.kiwicollection.com/property/hotel-costes


プレミア・クラブやセレブリティのパーティ、ファッション界においても、絶対的な支持と知名度、実績を誇るStéphane PompougnacのDJスタイルは、ある意味愚直なまでにラウンジ・ミュージックとしてのムード享受に徹底した選曲センスと、ブレない安定感。同じ傾向で活躍するDJでも、Thievery Corporationはもっとワールド・ミュージックを取り入れた実験的なスタイルを模索し、世界的にも折からのオリエンタル・モダンテイストやバレアリックの流行を取り入れたコンピレーション・アルバムの採用が著しい。

そんなトレンドの中心に身を置きながら、Stéphane Pompougnacはあくまで世界中からParisの文化に向けられた視線、ステロタイプ的と言ってもいい「イメージ」を大切に迎え、ホテルの来賓をもてなす如く、地元に根差した音楽的ルーツに裏打ちされる極上のホスピタリティと新鮮な刺激で優しくリスナーを包み込む。

しかしどちらかというと、そのMixテイストは、ホテル内での豪華絢爛で甘ったるい体験を具現化したというよりも、寧ろゲストがパリに至り、去るまでの旅情やドラマ性、その舞台としてのホテルを介した、まるでゲストの人生の切り抜きを追体験させるような、リスナーありきのコンセプトだと思えるところに好感を抱いてしまいます。


さて、このコンピレーションとしての"Hotel Costes"シリーズの特徴はと言えば、初期の頃の、如何にもセレブに向けられた、噎せ返るような官能の香りや、艶やかで華やいだヌーベル・ハウス、ゴージャスで煌めくようなダブ/チルアウトのラッシュサウンドは、リリースを重ねる度に徐々に陰を帯びるようになって、"8"では背徳的なダークさを、"9"では切ない慕情までも香わせる変化を遂げて来ました。

実は彼、これまでに2枚のオリジナル・アーティストアルバムを発表しており、今年発表された"Hello Mademoiselle"では、自身の直接のルーツと思われるEnnio Morriconeのカヴァーや、哀愁のシャンソン、ロック・バラードを披露しており、"Hotel Costes"シリーズのリリースを重ねる裏での、心境の微妙な移ろいが見て取れます。


そして今回の"X"では、ややシックで線が細くなりがちだったシリーズの傾向に、トリップ・ホップ、エレクトロニカ的要素を多分に取り込んで、アンダーグラウンド方面への目配せまでも行い、新しい時代に迎合しようとする向きさえ感じられます。でもそこはPompougnac、"Costes"ブランドとしての品位と純度を決して損なうことなく、ソムリエばりの嗅覚で、格調高く抑制の効いた、危うさのない厳正なテイスティングを怠ってはいません。

アルバム中でも異彩を放つGoloka / "Save Me Tonight"のゴシック・ニューウェイヴ色から、やや妖しく危険の香りのするアーバン・ハウス的Louie Austen / "Glamour Girl"。フランスにおけるトレンドの一つである、ワールドダブ/クロスオーヴァーの書法に沿ったPompougnac / "Sunday Drive (Remix)"。スペインの情熱と哀愁が漂う Zimpala / "Adios"、そしてイビサ・チルの大御所、Afterlifeの新曲"Elijah"のフィーチャー。


こういうトリップホップ/ダウンテンポ的な音が、いわゆるセレブリティのクラブやバーで高級視されるようになったのは本当にごく最近のことで、一昔前にそこあるのは例えばジャズだったり、ボサノヴァやフュージョンでした。

そもそも、あの1990年にENIGMAが"MCMXC a.D."(それ以前ではArt of NoiseやAlan Parsons Project、以降においてはKOOP等。その他2000年前後に流行ったジャズ・エレクトロニカムーヴメントに凌駕的因果が認められる)で打ち出した、宗教音楽と民族音楽、そしてクラブ・ミュージックの倒錯と折衷における『背徳的な官能と愉悦』というテーマが、後年に渡ってイビサを始めとするハウス文化によって育まれていなければ、そして後発のフォロワーが、その方法論を追随していなければ、今のトレンドは言わずもがな、少なくともそこにいる一部の人間のセンシビリティに触れるものがなかったとしたら、この"Hotel Costes"シリーズのコンセプトの萌芽さえ、存在していなかったのかもしれません。



Stéphane Pompougnacですが、なんと年末には東京と関空間を新たに結ぶ『黒い飛行機』、"Star Flyer"の就航を記念したコンピレーションCDをリリース予定。そして、実際の"Hotel Costes"内でBGMとして使用されている楽曲をコンパイルした、"Hotel Costes Presente...bon Voyage"という企画アルバムも、同じく国内盤として年末にリリースされる運び。こちらはホテル内の雰囲気に相応しいアンビエントな曲が連なっているのだそうです。


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