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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

Autechre / "Quaristice"

2008-03-28 06:20:00 | music6
Quaristice


□ Autechre / "Quaristice"

Simmm
Tankakern
Outh9X

Release Date; 12/03/2008
Label; Warp
Cat.No.; warp333
Format: 1xCD

>> http://www.autechre.ws/
>> http://www.myspace.com/myslb


>> t   Rac  k l i S t   i    Ng.

01. Altibzz
02. The Plc
03. IO
04. Plyphon
05. Perlence
06. SonDEremawe
07. Simmm
08. Paralel Suns
09. Steels
10. Tankakern
11. Rale
12. Fol3
13. fwzE
14. 90101-5I-I
15. bnc Castl
16. Theswere
17. WNSN
18. chenc9
19. Notwo
20. Outh9X



弛緩と断続のリフレックス。
9th Albumに至ってAutechreの生成する『音楽』は、非形而のシステムに噛まされた20片に渡る「軋みと揺らぎ」のアナモルフォーシスである。

"Quaristice"の特徴とも言うべきものはクラスタのアラインメント、とりわけその軌道運動の断続性についてであり、あらゆる楽曲において一連の旋律は微小時間コヒーレンスを維持し、俯瞰すればfixed patternを描くが、その連続性は、楽曲に照らして明らかに不相応でカオスなランダム・シークエンスのスライドによって断ち切られている。


Autechreの作品群の中で鋭角的にカオスを極めた映像作品"Gantz_Graf"の再解釈ともとれる"Fol3"や、アンビエント・シーケンスの挿入が巧みな"simmm"、メタリックなドラムパターンが高揚感を煽る"Tankakern"、聴いてるだけで不整脈を誘発しそうな"90101-5I-I"など、楽曲毎のパターンが安定して聴き取れる。

Aphex TwinのAmbient Worksを想起させるイントロから、Monolake調の風洞音でフェードアウトする"Outh9X"は思わず頬が緩んでしまう。普通に奏でればカッコイイフレーズを、あえてペラペラにして盤上にパンチングしていくようなユーモアにセンスを感じる。


ポスト・オウテカと評されたRichard Devineが、ある意味愚直なまでに「電子音楽」の先鋭性を追求し、ソフト開発に腐心したのに対し、そうした姿勢を嘲笑うかの如く(数理演算ソフトを用いてるとは言え)、とぼけた旋律やブラックミュージックの残骸を散りばめるAutechreの求心力は、常に注目される作曲アルゴリズムとソフトウェアのアップデートとは、本質的に別の次元からやってくるものなのかもしれない。

近年The Hafler Trioとのコラボレーションも実現させ、IDMシーンのフロントラインにおいても大きな影響力を再認識させたAutechre。"Quaristice"の序盤5曲では、昨今の新進エレクトロニカ・レーベルのアーティスト陣に目配せ、あるいはお手本を提示するような音色が聴かれるが、同時にAutechreの祖型ともいえる黒人音楽へのオマージュも匂わせる点に、このジャンルのオリジネイターとしての自負が感じ取れる。


未だ一般化され得ぬ音楽の感覚と可能性を開拓する立場にありながら、Autechreが理論家たりえないのも上述の点に由来する。例えば"Quaristice"の楽曲が全てバッハのリミックスだったとしても「さもありなん」だが、これがGioseffo Zarlino(ルネサンスの作曲家・音楽理論家、バロック音楽の数理的な基礎を草創した最初の人物とされる)のモテットのリミックスだと聞いて誰が納得できるだろうか。新たな様式ではあっても、そのフレームを定めようとはしていない。循環論法的だが、彼らは"Autechreが奏でるもの"としての楽曲の聴こえ方、『落としどころ』を聴覚的に依存して判断しているのであり、そのセンスこそがAutechreたる由縁なのである。



Aeltd

5000枚の限定リリースだった"Quaristice"の仕様は、ボーナスCD付きの金属製ジャケット。ランダムにスペースを空けてタイピングされた文字列が、アルバムの楽曲のメタファーとなっている。


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