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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

san.drine / "Janvier"

2008-03-24 20:30:06 | music6
Janviercover


□ san.drine / "Janvier"

La Neige
Until December
Janvier (Orka Veer mix)

Release Date; 14/03/2008
Label; Drine Machine Music
Cat.No.; DM3499
Format: 1xCD

>> http://www.san-drine.com/
>> http://www.myspace.com/sandrineonline


>> tracklisting.

01. La Neige
02. Until December
03. Janvier
04. Not Around
05. L'envie
06. Me With You
07. To Have
08. Ainsi Font
09. Les Rues De Novembre
10. Janvier (Orka Veer Mix)



Guest Artists.

Angina P       >> www.myspace.com/anginap
Bitstream Dream     >> www.bitstreamdream.com/
Christian "Wicked" Wicht  >> christianwicked.com/
Govinda    >> www.govindamusic.com/
Orka Veer   >> www.myspace.com/orkaveer
Plat      >> www.myspace.com/platmusic
Summer Kelly  >> www.myspace.com/suissemodular


Brent Arnold (cello) >> www.myspace.com/brentarnoldmusic
Dana Leong (cello) >> www.danaleong.com/
Mazz Swift-Camlet (violin) >> www.mazzmuzik.com/
Annas Allaf (guitar) >> www.myspace.com/michaelannasallaf
Bei Bei Zheng (gu zheng) >> www.myspace.com/beibeizheng


Artworks:

Miss Miza.com >> www.miss-miza.com/
J.Adam McGalliard (photo) >> www.mcgalliard.net/



ジュネーヴ出身でブルックリン在住のフレンチ・エレクトロニカ/トリップ・ホップ・アーティスト、san.drineの2nd Album。"Janvier"(1月)の名を冠したアルバムを体現するかの如く、楽曲全体が冷たく暗い憂愁に染め上げられ、薄氷の張りつめる凛とした夜の透明な空気感と、寂寥を湛え淀んだ心象風景のコントラストを描く。


フレンチ・フィメール・エレクトロニカの最前線アップカマーとして今最も注目を集めているsan.drineだが、トリップホップの特色として良く挙げられる「脈絡のないサンプリング音の羅列」、「霧中を漂うような捉えどころのないヴォーカル」といった共通要素は漏れなく踏襲している。

ダークでイルビエントなアトモスフィアに、陶酔したヴォーカルが絡む様は、PortisheadやMassive AttackからEmilie Simon、あるいはStina Nordenstamの直接の影響をうかがわせるが、シベリウスやライヒにも通じる、近現代音楽的なフィドルのまぶし方には、とりわけ後者の作風に近いものを感じられる。


SleepthiefやGovinda、Summer Kelly(Suisse Modular)にもヴォーカルワークを提供しているsan.drineだが、自身のアルバムにおいては、多方面のゲストミュージシャンの協力を仰ぎながらも、多くの楽曲で彼女がプログラミングやキーボード、ミキシングを手掛けている。

生音やエフェクトが巧密にブレンドされた難解で複雑な音像を描くビートワークが主張する割に楽曲自体は非常に聴きやすく、胸の内にストンと落ちてくる切ないメロディが目立つ。インディーズでありながら前作"Histoires d'Eau" が、2006年度のiTunes Top 100 Electronica albumに選定されたのも、普段このジャンルを聴かない多くのリスナーの琴線に触れるものを兼ね備えているからだろう。


1曲目"Le Neige(雪)"は最もカオティックかつ鋭利な感情に彩られた、アルバムの導入としてこの上なく相応しい楽曲。罅割れたピアノの狂気的なリフレインに重ねて、ノイズに濁された壮大なスケールのオーケストラが、壊れた旋律を降り積もらせる。静かに、しかし切実に請うヴォーカルに救いは訪れない。アイスランドの新進気鋭IDMプログラマー、Platとの共作。

同様に6曲目"Me With You"でも古風な楽曲にイリーガルなビートワークが融け込んでいる。複雑怪奇なサンプリングビートは、この手の楽曲における方法論としては最もしっくりくる。もしかしたら小手先の装飾ではなく、それこそがトリップホップたる由縁であり、代替不可能なものなのかもしれない。


2曲目以降は、グラミーノミネート歴もある実力派プロデューサー、Christian "Wicked" Wichtがミキシングを手掛けている。ピチカートと美麗なピアノリフがリードする"Until December"ではライヒ的なチェロの切り込みがアクセントとなっている。奇怪な音色を様々に変化させるビートサンプリングが秀逸なトラック。

表題曲"Janvier"でも同様のストリングスワークが目立つが、もっと優しく、普遍的な心情を描いた良質のアコースティックナンバー。"Not Around"も耳馴染みの良い哀愁のPOPナンバーだが、コーラスエフェクトの光茫が一線を画している。


アルバム中でも異彩を放つDrum & Bassトラック"L'envine"は、オーストリア・ウィーンで活動する女性IDM/electronicaアーティスト、Angina P.とのコラボレーション。抑揚の効いたリズム・アクセンチュエーションに絡めたビートの音色の変化が楽しい。

"To Have"は、ニューエイジ方面の切り口からアンダーグラウンドテイストのクラブ・ラウンジトラックを創造するGovindaをフィーチャー。その筋では最早知らないものは居ないほどのネームだが、その作風は"Janvier"の雰囲気に合わせてワールドミュージック的なエッセンスは極力抑えられている。ゆったりとした肉感的なリズムと、噎ぶような官能の匂いの漂う蠱惑的なムードトラック。


"Ainsi Font"は"Not Around"を踏襲した、フェミニンな佇まいを匂わせるしっとりとした曲。クリックハウス的なビートが耳を惹く。中国の伝統楽器『古箏 (Zheng)』の弾き手、Bei Bei Zhengをフィーチャーした"Les Rues de Novembre(11月の街路に)"は、san.drineのアンニュイな歌声に古箏のセンチメンタルな音色が見事にマッチングしている。


そして、このアルバムで最も評価に値する"Janvier (Orka Veer mix)"がアルバムを締めくくる。ロサンゼルスのオルタナ/エクスペリメンタル・エレクトロニカ・コンポーザー、Orka Veerによるスムースなアンビエント・リミックス。カットアップされたsan.drineのウィスパーヴォイスの破片がストリングスに乗って、遠く哀愁を響かせる。


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