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Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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抗ヒスタミン薬によるジストニア

2006年01月16日 | その他の変性疾患
個人的な話で恐縮だが,私はアレルギー持ちだ.お世辞にもきれいと言えない某病院の当直室に泊まると,たとえ平穏な当直を過ごしたとしても,決まって翌朝は最悪の気分だった.私は第2世代の抗ヒスタミン薬のお世話になっているが,これらの薬は中枢神経への移行が少なく,さらに抗コリン作用が弱いため,眠気や口渇といった副作用が少ないと言われている.ところが,今回,第2世代抗ヒスタミン薬のひとつセチリジン(商品名ジルテック)による意外な副作用がカナダから報告された.
患者さんは4歳の女の子で,アレルギー性鼻炎に対しセチリジン 5mgを内服開始して18日目に,右目のチック(dystonic tic)が出現,翌日には肩をすくめるようなジストニアが出現した.その翌日には間欠的な頚部後屈が出現し,さらには上肢を外転させるような不随意運動もみられた.家族歴として母親はプロメタジン(商品名ピレチア;抗ヒスタミン剤/フェノチアジン系)およびプロクロロペラジネン(ノバミン)の使用にてジストニアの既往があり,父方の祖父はメトクロプラミド(プリンペラン)でアカシジアの既往があった.結局,セチリジン内服中止後,徐々に症状は改善し,8週後にはほぼ消失した.しかし後日,市販の去痰剤を内服したところ,数日後に同様の不随意運動が出現した.その市販薬には第 1 世代抗ヒスタミンであるメピラミンが少量配合されていることが判明した.
 セチリジンのおもな作用は当然H1受容体拮抗作用である.ではなぜ,ジストニアが起きたのだろうか?著者らはセチリジンがD2遮断作用を有している可能性を考えている,というのはセチリジンは向精神薬であるピペラジンの誘導体らしいのだが,この ピペラジンがD2遮断作用を有しているため,セチリジンにもD2遮断作用が残っているのではないだろうかという推論である.実際,文献的にセチリジンがoculogyric crisis(注視発作;上外側への発作性,攣縮性の共同性眼球偏位.dystoniaや眼瞼攣縮などを伴う)を来たしたという報告もあって,その可能性は高いのかもしれない.本例では父方,母方の双方に家族歴があり,セチリジンによるジストニアの出現には何らかの遺伝的要因が関わっている可能性が疑われ,誰にでも生じうるという副作用ではないのかもしれないが,抗ヒスタミン薬という使用頻度の高い薬の話でもあるので,一応,覚えておいてもよい知識かもしれない.

Neurology 66; 143-144, 2006
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