Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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バルプロ酸は脳梗塞に有効?

2004年10月19日 | 脳血管障害
バルプロ酸(VPA;デパケン)は広く使用される抗てんかん薬であるが,HDAC(histon deacetylase)inhibitorとしての作用がある.すなわち,ヒストンの脱アセチル化を抑制し,アセチル化ヒストンの状態を保つことで,遺伝子発現(転写)が生じやすいようにする働きがある.
今回,ラットの脳梗塞モデル(MCA一過性閉塞モデル;いわゆるsuture modelで,虚血時間は1時間)に対し,VPAを300mg/kgずつ,12時間おきに皮下注し,その効果を24ないし48時間目に検討した.この結果,脳梗塞巣は著明に縮小し,caspase-3活性化の減少,アセチル化ヒストンH3の上昇,HSP70の上昇を認めた.すなわち,VPAは遺伝子発現の上昇とHSP70を介してneuroprotectiveに作用する可能性がある.
VPAをはじめ,HDAC inhibitorは以前より神経疾患への応用が検討されており興味が持たれる.実際にデパケンを内服されている患者さんの脳梗塞は予後が良いのでしょうか?あとHDAC inhibitorについても薬剤によってどのような転写が活性化されるのかを明らかにしておかないと,却って悪い方向に作用しかねないような気もする.

J Neurochem 89; 1358-1367, 2004
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