Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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非定型的パーキンソニズムにおけるBicycle sign

2011年01月08日 | パーキンソン病
Lancet誌に非定型的パーキンソニズムとパーキンソン病の鑑別に有用な方法が報告されている.ただ「自転車に乗れますか?」と質問するのである.

診断が確定していない156名のパーキンソニズムを呈する患者に対し,前向き観察研究が行われた.最初の段階で111名が自転車に乗れた.罹病期間が30ヶ月経過した後,臨床的にパーキンソン病45名,非定型的パーキンソニズム66名(MSA 35名,PSP 9名,LBD 3名,CBS 2名,血管性パーキンソニズム 17名)と診断された.パーキンソン病では2名(2/45;4.4%)が自転車に乗れなくなっていたが,非定型的パーキンソニズムでは34名(66;51.5%)が自転車に乗れなくなっていた.

これをBicycle signとして,診断への有用性を評価すると,感度52%,特異度96%,AUC(area under curve)0.74と良好な結果であった.回帰分析では年齢,パーキンソニズム,失調は有意な相関を示さなかった.

自転車に乗るという行為はバランス,協調運動,下肢のリズミカルな運動などが相互作用し可能になるが,非定型的パーキンソニズムでは黒質以外にも変性が生じる結果,バランスや協調運動にも障害を来すため,自転車が乗れなくなるのではないかと推測される.

昨年のNew Eng J Med にも,すくみ足症状が強くても自転車に乗ることができるパーキンソン病患者さんのレポートがあったが(過去ブログ参照),今回は同様の現象を診断に応用したものといえる.「自転車に乗れますか?」は,今後,問診の際にチェックすべき質問といえよう.

Lancet. 2011;377:125-126.
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