Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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本当に最初のパーキンソン病患者さんの写真

2021年03月19日 | パーキンソン病
昨年「世界で最も有名なパーキンソン病患者の臨床像」というブログを書きました.教科書で目にしてきた有名なパーキンソン病のイラストに,Pierre Dさんというモデルが実在したという論文の紹介でした.タイトルは「Pierre D. and the first photographs of Parkinson's disease」で,左図が世界で最初のパーキンソン病患者さんの写真と書かれています(Mov Disord. 2020;35:389-391).このPierre Dさんは,1876~9年にかけて,パリのSalpêtrière病院に通院しています.そして臨床神経学の父,Jean-Martin Charcot先生の弟子であるSt. Legarが,1879年の論文のなかにその写真を残しました.それをもとに,ガワーズ徴候で有名な「史上最高の臨床神経学者」William R. Gowersがイラストに書いたものを,今日の私達はよく目にしているわけです.

ところがこの論文には複数の歴史学的な誤認があったようです.学会でご挨拶をさせて以来,親交のある神経学史研究で有名なOlivier Walusinski先生は,この論文に対するレターを執筆し,その中で以下の3点を指摘しています.Pierre Dさんは非パーキンソン性の振戦を有し,後年,症状はだいぶ回復していたこと,考察におけるJames Parkinson先生の医学的貢献に対し認識の誤りがあること,そして驚いたのはPierre Dさんの写真は最も古い写真ではないということです.正しくはAnne-Marie Gavrという女性の写真(右図)が最も古いもので,Charcot先生が実際に治療を行い,1875年の『L'Iconographie de la Salpêtrière』の第1巻に掲載されているのだそうです.Walusinski先生はとても穏やかな先生ですが,学問に対する厳しさを感じさせるレター論文でした.あらためて論文は,徹底的に勉強した上で書かねばならないと思いました.
Hurwitz B, et al. Light and Shade in Patrick Lewis et al's Paper on the First Photographs of Parkinson's Disease. Mov Disord. 2020 Oct;35(10):1880-1881.




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