Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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Redundant Nerve Roots signは腰椎脊柱管狭窄症の予後不良因子である

2019年02月25日 | その他
Redundant Nerve Roots (RNR;余剰神経根)は,MRI T2強調画像で,馬尾のあたりが図のように曲がりくねり,一部,点状にも見える所見である.水平断では横に走行する馬尾を認めることから,矢状断で点状に見える理由が分かる.

歴史的には1960年代の終わり,間欠性跛行を呈する症例に対して脊髄造影を行うと,蛇行する陰影欠損がみられ,手術をすると馬尾神経が「蛇がとぐろをまいている」所見が世界各地で相次いで報告され,この名称が使われるようになった.本邦では脳外科や整形外科系の医学誌で主に議論がなされていた.剖検によって,RNRは圧迫により力が加えられ肥大した神経根が,そり曲がり,たわんだ状態であることが確認された.現在はCT,CT myelography,MRIで診断が可能である.

除圧術を予定している腰部脊柱管圧迫症の約40%の症例のMRIにて,このRNRを認めると言われているが,腰部脊柱管圧迫症における臨床的意義については明らかではない.昨年,腰部脊柱管狭窄症におけるRNRの意義,つまり本所見を認める症例の特徴と,術後の回復への影響についてのメタ解析が報告されたので紹介したい.

システマティックレビューは2018年4月にPubMed,MEDLINEなどを用いて行い,RNRの有無で臨床的特徴や予後に違いが認めるかを検討した,前方視的ないし後方視的研究を抽出し,メタ解析を行った.2名の著者が独立して,研究結果とバイアスについて評価を行った.

結果は計1046名の症例を含む7つの研究(本邦の2論文を含む)を用いて,メタ解析を行った.その結果,RNRを認める症例はより高齢で(平均5.7歳;95% CI [2.2–9.2], p=0.001),より狭窄が強く(面積−12.2 mm2,95% CI [−17.7 to −6.7], p < 0.0001),症状出現からの時間が長かった(13.2ヶ月,95% CI [−0.2–26.7], p=0.05).術前臨床スコアはRNR+グループで悪い傾向を認めたが,有意差はなかった(−3.8点.95% CI [−7.9 to 0.2], p=0.07). 除圧術後の臨床スコアはRNR+グループで有意に悪く(−4.7点,95% CI [−7.3 to−2.1], p=0.0004),回復率も低かった(−9.8%,95% CI [−14.8 to −4.7], p=0.0001).

以上の結果より,RNRサインを認めた症例は,認めない症例と比較して,より高齢で,罹病期間が長く,狭窄の程度が高度であること,また術後の回復も不良であることが示された.つまりRNRは腰椎脊柱管狭窄症の予後不良因子と結論された.今後,術前に注意して確認すべき所見と考えられる.

Clin Neurol Neurosurg 174;40-47,2018; Arq Neuro-Psiquiatr 72;2014 



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