Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

挙動不審者たちの巣窟

2023-10-03 | 歴史・時事
承前)メタムジークという言葉が出た。悪く言えば楽屋落ちになって仕舞うが、広義には音楽のその営みを認識することになる音楽行為である。ボッフムでのヴェルトミューラーの新曲世界初演はトリエンナーレとバーゼルのシムフォニエッタの委嘱作ということで、後者の定期公演でアルザスで同じプログラムの中で再び演奏される。またビッグバンドがNDRの所属なのでその練習はハムブルクの第一スタディオで行われたようだった。そこで指揮者エンゲルと作曲家のヴェルトミューラーへインタヴューが為されてネットで公開されていた。

作曲家はスイス語を話していて、スイスで学んだあとにシュネーベルの下で作曲を学んでいる。音楽的にはコルトレーンやブルックナーなどを同時に扱っていて、実際に演奏者としても学んだオランダのコンセルトヘボー管弦楽団でも打楽器奏者として活躍する一方、ジャズ奏者としても活躍していた。

よって、長年のパートナーである高名なジャズサクソフォーン奏者ペーター・ブレッツマンに捧げられている。それが完成前本年六月に亡くなったようで、日本でも人気でトップジャズメンと組んでいたミュージシャンは、これまたルール地方の工業地域の出身者と知るとこれまた興味深い。
Peter Brotzmann Quartet - Jazzfest Berlin'95

Konzert – Free Music Production / FMP: The Living Music: Brötzmann solo — ここでもシャツを垂らしている作曲家。


Peter Brötzmann, Trio Infernal - Einheitsfrontlied von Hanns Eisler - 1973

Hanns Eisler/ Bertolt Brecht - Das Einheitsfrontlied/ Το τραγούδι της ενότητας (German/Greek lyrics)


更に古い映像などを観るとブレヒト作詞アイスラー作曲「統一戦線の歌」から即興演奏をしていて、典型的なその世代の上の人だと分かる。プログラムにあったようにロックなどだけでなくてフリージャズとかの背景がそうしたアナーキーなものであったことを考えると当然かと思う。そして公演前のNDRのインタヴューで、ブレッツマンへの作曲について語られていて、ドイツで最も破壊的な作曲家へスポスが彼の為にぎっしり楽譜を書き込んでいて完全に失敗したという笑い話があった。それを調べるとへスポスも昨年亡くなっていて吃驚した ― 一度正式に紹介されたことがある作曲家なので、やはりその決して機械の様に冷たくはない手の温もりを思い出す。
SonARTrio: Hespos - Zerango


個人的にはフリージャズの世界には疎いので、シュトックハウゼンの世界とも表裏にあるということが分かるぐらいで、それ以上ではないのだが、サウンドチェック中に会場から出て来たオヤジを見て、これは作曲家だなと直ぐに分かった。即ち、なにかスーツみたいなものは着ているのだが、その白シャツが股間まで垂れているのである。こんな人は健全な市民世界では明らかに不審者である。その顔つきもどことなくラリッた感じなのだ。

少なくともへスポス氏は鋼材彫刻職人の様な感じであり、まさしくその音楽そのものなのだったのだが、なるほどそれがフリージャスかとまではその場では判断できなかった。やはりそれを知らないからなのだ。

奇しくも今回のプログラムで採り上げられた三人とも身近で接している。グバイドリーナも現在はハムブルクの近郊に住んでいるようだが、嘗て日本へ初訪問の時に前後ぐらいの席に座っていて、その醸し出す雰囲気は今でも覚えている。またフィナーレを飾ったステンアンデルセンもピアノ協奏曲再演のフライブルクで目の前の席にガールフレンドと座っていた。これもなにか違うなというのは早めに分かっていた。身近で接した作曲家は数知れないのだが、結構距離が開いていたのだが、又予めその声だけはスイス語として聞いていたのだが、結構印象に残った作曲家としてリスト入りした。そしてその音楽はとなる。(続く



参照:
瞬間に拡がって、伝わる 2008-03-15 | マスメディア批評
旧産業からそして今 2023-09-22 | 文化一般
コメント
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