日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

父の日のプレゼント、大和骨董市の不思議な木彫

2009-07-05 16:51:15 | 日々・音楽・BOOK

この木彫はナンだろう。
相鉄線と小田急が交差する大和駅から二方向に広がる「骨董市」のテントの中で、にこやかでなかなか格好いい中年オヤジが言う。ネパールとチベットの間あたりのもので、子供が人形として遊んだもの「らしい」。そうかなあと首を捻ると、いやもしかしたら棚にでも置いて拝んだのかもしれないですねえ!
何だか頼りなく、それがまたいいのだが、要するにこの店のオヤジはよく知らないのだ。
この木彫に僕は魅せられた。

娘からメールが来た。父の日のプレゼント、骨董市で探すのはどう?
大和の市は毎月第三土曜日に開催されるのだ。娘と妻君は何度か出かけたことがあるらしい。
「いいねえ、雨の降らないことを祈る(笑)」と返信した。梅雨時の今、傘をさしてじゃあ芸が無いなあと思ったのだ。ところが快晴になってその代わりの猛暑。妻君も娘も、僕もかなりバテタ。
京都の北野天満宮や、世田谷の「ボロ市」に出かけたことがあるが、この大和の骨董市も出店が多いし、変なものを売っていてなかなか楽しい。

僕はアイレイのBOWMORE12年や余市(ニッカだ)をストレートで飲む小さなグラスを探そうと思った。
HOYAのシャープな切れ味のあるずっしりとしたクリスタルのグラスを持っているが、それはちょっと大きくて氷を少し入れて、ロックにするのがいい。江戸切子の逸品もあるが、それは時たま使うからいいのだ。
グラスも沢山出品されていて手にとってみたが、納得できるのが無い。やはりバカラでも探さないと駄目かなあ!と妻君にいうと、まあね!しょうがないねえ、とうなずく。

そしてこの木彫に出会った。これだけではなく、この店(店というのかなあ?)には、エスニックなものが沢山置いてあってなかなか面白いが、これはバランスがよいし値段も何とかなりそうだ。一回りしてくるよと言ったものの、戻るつもりは無かった。が、どうもこの姿が目に焼きついていた。
一回りして戻った。

三層の屋根上の頭部の宝塔の下に4面の顔が刻まれている。皆目を瞑っているように見える。でも歯をむき出して怒っているのがあり、口をへの字に食いしばったり、あざ笑ったりしているように感じるのもある。女性らしい。女って恐いのだと内心にやりとした。
まあこんなものだが「いいんじゃない」と妻君も娘もいう。そんなに古くはなさそうな気もするが、僕の宝ものになりそうだ。

娘は何も買わない。妻君に「買わなかったねえ」と言うと、給料前だからお金がないのよという。それなのに「父の日に」と僕はぐっときた。
時々思うのだ。娘には母の日と父の日があり、母と父の誕生日もある。その娘には誕生日しかない。僕たちにとっては娘にプレゼントされるのは何より嬉しいが、割に合わないのじゃないかと何だか申し訳なくなったりする。

ふとこんなことを思い出した。娘が言ったのだ。「うちは貧乏なの?」。
大学に行くとき奨学金をもらえるよう妻君が厳しく要項など検索したときだったかもしれない。昔は自信を持って貧乏だったと言えるが、今でも少なくとも裕福でないことは確かだからだ。

感心することがある。娘は無駄使いはしないが、欲しいCDやロックのライブには呆れるほどあっさりとお金を使う。ああ、我が娘(こ)だと思う。
漫画も買うが、いらなくなるとあっさりブックオフに持ってゆく。育英資金や奨学金はお金をためて全て返済した。ああ妻君の娘だと思うのだ。