日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

山百合と丹沢里山の日本蜂蜜

2009-07-19 21:19:37 | 日々・音楽・BOOK

伊勢原の人里を遠く離れて`樹林に分け入り`と書きたくなるが、「幻の蜂蜜」の郷は思いがけず近い。
国道246号線裏手の集落の樹木に囲まれた細道をほんのちょっと上ると、覆いかぶさった枝葉の中に入り込めないように鎖を巻きつけたアルミ格子戸が現れた。案内してくれるHIRANOさんから、箱ごと盗む奴がいるのだと嘆かれたことを思い出した。

僕は薮蚊に愛されていて、ちょっと油断するとすぐにそこらじゅうが刺されてしまう。車に積んであった黒い毛布を身体に巻きつけ、頭にネットをかぶった。
様ないねと案内してくれたHIRANOさんと一緒に行った妻君に笑われる。
日本蜜蜂は小ぶりで、刺激さえ与えなければ人を刺すことはほとんどないそうだが、刺されるのはやはり恐いのだ。

昨年の晩夏、永年の友、そうだなあ出会ってから五十数年にもなるHIRANOさんが「こんなのができた」とビンに入れた蜂蜜を持ってきてくれた。
シールが貼ってある。「丹沢里山の蜂蜜・日本ミツバチの蜂蜜 糖度78.1 飛良野養蜂」とある。

僕たちが普通に味わうのは、西洋蜜蜂の蜂蜜なのだそうだ。
西洋蜜蜂は花ごとに区別して1,2週間ごとに春に採取される。ところが野生の日本蜂蜜は、通常1年から2年、長いものでは3年ごとに立秋から晩秋にかけて採蜜し、その間様々な花の蜜が貯蔵され巣の中で熟成されていく。味わいが違うわけだ。
1年前に持ってきてくれた蜂蜜があまりにも美味しかったので、この春(春に採取すると思い込んでいたので)まだ採れないのかと催促したら、もう少し寝かしておきたい、つまり採取は早くても秋になってからだと言われた。ところが「採れたよ!と電話がきた。

why?
呆れたことに巣箱ごと盗んでいく人間の泥棒がいるし、泥棒蜂がいるのだという。盗られる前に採ってしまおうと考えたそうだ。
西洋蜜蜂は日本蜜蜂の巣も襲うが、巣に戻ってきた日本蜜蜂の口から口移しで蜜を吸い取ったりする。その現場をHIRANOさんは見たという。何だか今の社会世相を反映しているような気がしてきた。

「幻の蜂蜜」の郷は刺激的だった。大きな木の切り株や足場パイプや垂木材で組んだ台の上に、幅が45センチくらい、高さが7,80センチの木の箱の蜂の棲家が乗っかっている。
出入り口があり、塞いでいる扉を開けると、透明アクリルを透して巣の様子がわかるようになっている。窓だ。その廻りをすだれや塩ビの波板で囲っている。残材を使用しHIRANOさんが丹念に時間をかけて造作した。
蜂が群がっている棲家(箱)もあれば、一匹もいないのもある。蜂は一家を成している。それが棲家なのだ。蜂の集落、団地である。

なにやら言葉にできない感動に包まれながら日本蜜蜂の郷を出ると、見事な山百合が咲いていた。


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2 コメント

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蜜蜂に黒は! (moro)
2009-08-06 13:57:09
蜜蜂は黒い色をめがけて刺しますので、黒い毛布は被らない方が良いと思われます。(笑)
家にパリのオペラ座の蜂蜜が有るのですが、2年以上経ってしまい、空けるのが怖いです。(笑)
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9年前の! (penkou)
2018-03-03 21:33:53
MOROさん
9年前になるこの此の一文を時折り見遣って、いつも『オペラ座の蜂蜜」はどうなったのか!などと問いかけたくなります。さてさて、どうなったのかな!
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