新建築4月号の特集「東京2010・110人による東京建築案内」はなかなか興味深い。どんな建築が東京という大都市に存在しているかということではなくて、誰がどの建築を選んだのか?という好奇心が刺激されるのだ。
巻頭には`110人の建築家・専門家の方々にそれぞれ3つの建築とそれらを廻るルートを選定して推薦してもらった、これまでとは違うガイドブック`だと記された。
新建築社からのメールでは、東京の建築をみに来た人に見てもらうために・・あるいは、建築を志す若い世代に東京の建築を伝えたいという編集長の想いも読みとれる。見てもらうために建っている場所をマップに落とすという。
原稿締め切りは一週間後、ちょっとあせった。プライバシーが気になる住宅や、社寺などでもいいのか?と「選定基準」を聞きたくてメールした。編集長からはジャンルは問わないが、まあそれなりの見識を持って的な、でも住宅だとマップに記載出来ないかもしれないですねえ、と記されていた。
僕はこう考えた。誰もが選びそうな建築を選んでも面白くない。といっていい建築を伝えたい。3つとはいえその3つには何かの関連性があって物語があったほうがいい。さて!
自作を臆面も無く掲げている建築家もいるが、思いがけずオーソドックスな選定で「ふーん」と驚いたのもある。一番数多く推薦を受けたのが「国立代々木競技場」。「ヒルサイドテラス」更にあのガラスブロックを驚異的な技術で構築した「プラダ ブティック青山店」そして「塔の家」。納得できる。
「青木淳」。長沢浄水場(山田守)、目黒区区役所(旧千代田生命本社ビル・村野藤吾)、パレスサイドビル(林昌二+日建設計)。オーソドックス!
ところで今の日本を代表する建築家「槇文彦」が選んだのは?
1、上野の森(西洋美術館、東京文化会館などなど・ここは建築の宝庫なのだ)、2、東京駅―日比谷を繋ぐ領域。東京駅を出て日生劇場に至る様々な分野の建築群。多様な建築の魅力として推薦。3、表参道エリア・国立代々木競技場(丹下健三の代表作というだけでなく日本の建築を世界に伝えた記念碑的な建築!)からスタートして表参道、プラダに至ると記されている。秀れたモダニズム建築をきちんと伝えたいという思いに溢れている。
「藤森照信」。国立代々木競技場、そうかやはり!東京の建築を語るときには欠かせない。旧前川邸(小金井の建物園・僕だったらその後建てたRC造の自邸だけどなあ!)そして藤森さんらしい`うかい鳥山。僕は行ったことがあるが知っている人はほとんどいないだろうなあ!
では「鈴木博之」は?明治神宮宝物殿、国立代々木競技場(やはり欠かせないか?)、根津美術館(コメントは2010年の現在を知る好例、つまり和風表現を知るにはいいとある。そしてこの青山一体を歩いて青山学院に足を伸ばしてもらえば研究室でお茶ぐらいは出してあげるかも、なんて書いてある。大丈夫か!
ところで、青山ではねえ!と悩んだ僕も青山だ。
僕はこう書いた。「青山は時代にトライする現代建築のメッカだ。一味違う建築の存在も味わっていただいた後、旧山田守自邸の喫茶店で、美味しいコーヒーをどうぞ」
僕が選んだのは、大谷幸夫の「旧東京都児童文化会館」「フロム・ファーストビル(山下和正)」そして「旧山田守自邸」。山田守事務所に電話して所長からマップ掲載の許可を得た。ところが僕のほかに推薦者が二人もいた。なかなかいいのだ、この建築。コーヒーもほんとに美味しいし・・・
<写真 児童館のパーツ:こういう窓、ちょっと懐かしい)
山田守自邸の喫茶店!11月上京時に行かなくては!
選定者の視点も面白いのですが、たくさんの、様々な建築(都市は建築で構成されているので当たりまえとはいえ)があることに改めて考えさせられました。連休、お天気はまあまあのようですのでぜひ建築散策を!
MOROさん
其の当時、フロムファーストビルにすごく影響を受けました。というか楽しく建築をつくることが出来るのだ、というここと、そこに入居した店など格好良いと思ったこと、それはいまだに続いています。いくつか僕も其のコンセプトで計画案を立てたこともあるのですが、一つも実現できませんでした。容積率などこのやり方だとなかなかクリアできないんです。場所ですかね?