日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

自然林は雪の中だろうか

2006-12-16 09:45:50 | 日々・音楽・BOOK

寒くなった。手を切るような冷たさというほどではなく、二週間ほど前からコートを羽織るようになった。東京の寒さなんてそんなものだ。そしてやっと銀杏が色づき落ち葉で僕のアトリエの近くの道が黄色くなった。今日の午後、委員会のために訪れた熱海の日向邸へ降りる階段は、真っ赤な`もみじ`の落葉が一杯で思わず見とれてしまった。12月の半ばだ。紅葉は毎年12月だったっけ・・・

10月25日に伺った上遠野邸の黄色く色づいた紅葉が余りも美しいので見入っていたら、この2,3日だけ、明日になると散り始めてしまうよと上遠野さんが慈しむようにいう。一年で3日間、そういう日に来合わせたのは何か縁があるのだと思った。
その札幌は雪だという。あの魅かれた植物園も雪に覆われて真っ白になったのだろうか。

ホテルのベッドの中でぐずぐずと考えた。こうやって何もせずぼんやりしているのもなかなか出来ない贅沢といえるのではないか。夕方北大の教授と僕を札幌へ招いてくれた専門学校のMORO先生と一緒に一杯やるのだけど、それまでの半日ぽっかり時間が空いた。
でもやはり起き上がった。観てないというと呆れた顔をされ、あそこは素晴らしいと親しい建築家が言う「植物園」に行ってみようか。そうだ赤レンガの「旧道庁」も見てない。

自然林をバックにした芝生の中に、何棟もの重要文化財に指定された素地のままだったりブルーグレーに塗られた板張りの建物が建っている。開拓時代の貴重な建築群だ。でも僕はそれを横目に見て自然林に分け入る。そして「自然林の追跡調査」書かれた建て看板に見入る。その後この植物園の中にある「北方民族資料館へようこそ」と書いてある表示板を見て、関わるいずれも北大の研究者のスタンスに感銘を受ける。心のどこかでああ来て良かったと思うのだ。

「この植物園は開拓以前の植生の残る場所、もとはハルニレ林だったが97年の調査では低木や林の下にはハルレニではなく、エゾイタヤ(イタヤカエデ)が増加していた。平成16年9月8日の台風18号の強風で、大半の樹木が根から倒れ幹が折れた。暗かった林床に光が届くようになり、植物たちの新たな生存競争が始まった。倒れた樹木は片付けない」
世代交代。しかし油断もすきもあったものではない。老木の思いやいかに。研究者の溜息と好奇心に僕の好奇心もゆらゆらと立ち上がる。自然の摂理か。「新たな生存競争が始まったと」いう一節にぐっと来たのだ。

「明治初期の北海道は、本州に住む人にとっては未開地、先住民族であるアイヌ民族の文化の知識がなかった。開拓使や昭和初期の大学の研究のための収集なので、特殊なものしか収録されていない。当時のアイヌ民族感に留意する必要がある。アイヌ民族やその文化は `失われていくもの` という今では考えられない意識で収集されており、他の博物館や文献等も参照して考察しなくてはいけない」という。
僕が文化人類学の講義を聴いて学んだ「知識論」の実証が此処にある。真摯で平衡感覚のある研究者の歴史感に触発される。それにしてもこの収集された器具や道具のなんと魅力的なことか。

「旧道庁」そこの展示に立ちすくんだ。「又8月がやってくる」というコトバから始まる戦後の樺太の惨事に。郵便局の交換台を守り「これが最後です。さようなら  さようなら」という言葉を残して9名の若き交換手が自決した。

考え込み、感銘を受けたあとの仲良しとの一杯。しょうたと染められた朱の渋い暖簾をくぐる。時を語るのには日本の酒だ。アイヌ民族文化を考えるのはなかなか難しいのサ、と角教授が言う。MOROさんは毛綱モンタの反住器が黄色と黒だったと教授から聞いて愕然としている。


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2 コメント

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私も (xwing)
2006-12-17 21:09:47
札幌に住んでいながら植物園に入ったのは随分昔のことです。現在、北海道立近代美術館で「アイヌ紋様展」開催中ですので見に行く予定なのですが、最近少し忙しく、なかなか足を運べません。
「反住器」なんとか中を見学させて頂きたいものですね。ちょっと頑張ってみようかと思っております。(細~いコネが・・・)
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きれいな花 (penkou)
2006-12-19 10:16:13
札幌駅の近く、市の中心地にこういう植物園や北大キャンパスがあるのが素晴らしいですね。北大キャンバスの中にも、開拓使時代の建築が自然の中に幾つも大切に残されていますし。
この植物園も北大管轄だそうですが、研究者や植物に興味のある人ではないとなかなか地元の人は訪ねようとは思わないかもしれませんね。でもいつでも行こうと思えば行けるというのはうれしいことだと思います。
花がとてもきれいでした。写真に撮った花の名前を教えてもらったのですがメモがどこかにいってしまったのが残念。
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