名物に旨いものなし、と良く言われるが、いや旨いから名物といわれるようになるのだとも言う。
米子の「米屋(こめや)吾左衛門鮓」、つまり「米吾」の寒鯖を酢で〆た山陰名物、僕がお土産に頂いた「昆布巻鯖鮓」は旨い、旨いのだ。厚みのある鯖の酢〆の加減が絶妙だし、北海道産の昆布だというのは、その昔の北前舟の伝統を受け継いでいるのだろうか。
あまり旨いというものだから、あきれた妻君が食べようと思っていた一切れを僕にそっと譲ってくれた。
箱に入っていた小さなパンフレットを見る。「漬け鯵」があり`漬けに技あり`「燻し鯖」は新感覚のスモークでワインやウイスキーにも良いなどと書いてある。どれもまた旨そうだ。
米吾の歴史は江戸時代の廻船業にまでさかのぼるのだという。味わいのあるレイアウトの箱(パッケージ)に由来が書かれている。「船底一枚下は地獄」といわれた航海の安全と、船子の健康に配慮した「船内食」が今に繋がる。そこには船乗りの熱い命とたぎる心意気がこもっているというのだ。
食べるのは翌日までにと、時間まで指定されている。ご飯が硬くなるので冷蔵庫に入れないでくださいとあるが、ついつい入れてしまった。でも硬くなったとも思えない味わい。すっかり米子フアンになってしまった。(我ながら単純だ、僕は!)
その米子は大雪、プレゼントしてくれた東京女子大のOG、井山さんは元気だろうか。
米子市公会堂のシンポジウムに僕を呼んでくれた来間さんによると、地方都市の例にもれず米子も高齢化が進み、雪かきが思うようにいかなくてなかなか大変だという。
若き来間家は大丈夫か?などと心配をしていたら、国道で立ち往生して列を成している車の人たちにトイレを貸したり、毛布やお湯を配り、ありったけの米を炊いておにぎりをつくるなどをしているという、米子に近い国道沿線琴浦町の人々の姿が新聞で報道された。「琴浦町はそういう土地柄です」という一言にぐっと来るものがある。
寒いが東京は快晴。旨いすしを食った余韻を味わっている新年、なんだか申し訳ないような気もしてきた。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます