日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

東北巡り(1) 女川の駅舎と盛り土

2015-05-01 14:50:20 | 自然

5月に入った初日、何をするでもなく事務所に出てきたが、晴天の春日和、暖かくて夏日和とでも言いたくなった。
山形県米沢市の山奥白布温泉の西屋旅館に、若いスタッフの運転で建築家本間利雄さんに案内して頂いたときには、道の両側にはまだ雪が盛り上がっていて驚いたのがほんの二週間前だったのかと、思わずカレンダーをめくって確認してしまった。

さて、週初めに、購読している日系アーキテクチュア(4-25号)が届いてパラパラと頁をめくった。フォーカス建築の項に、´羽ばたく姿の膜屋根に復興への思いを托す´と題した「女川駅、女川温泉ゆぽっぽ」が紹介されている。
前項で「釈然としない形状」と書いた女川駅(宮城県)の駅舎の設計者が、世界で活躍し、2014年には国際的な評価とされるブリツカー賞を受賞している坂茂(ばんしげる:敬称略)だということをこの特集で知った。

実は建築誌では、阪神・淡路大震災時に復興時のための仮設の住まい構築に尽力した坂の活動や作品群を見ているが、建築の実態を見るのは初めてで、これが坂なのかと憮然とせざるを得ない。
津波への対応のために線路も敷地も7メートルのかさ上げをし、屋根を膜屋根として夜になると周辺から浴場を組み込んだこの駅舎が町のシンボルとして光が浮かび上がるのだろう。浴場(温泉!)を組み込んだのは、復興に取り組んでいる女川町長の強い要請によるとのことだ。

山並に対応したという屋根の形状は、坂のつくってきた建築言語のひとつともいえるのだろうが、何やら気味が悪い。復興に必死で取り組んでいる作業に、通りすがりの僕が何も言えたものではなく具体性のないいい方になるが、どこかに毅然とした建築家としての姿を読み取りたかったと思う。

住宅地、街並みを復興するための盛り土作業のために大型のダンプカーが行き交っている。2年前には建っていた駅周辺の建物は全て撤去されていて、倒れた交番だけを記録として残すとこの特集に記載されている。盛り上げた土地は、津波はともかく大きな地震に対処できるのだろうか。