日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

東北を・・(6)小屋取港から見る「女川原子力発電所」

2012-11-01 13:21:28 | 東北考

女川町からひと山越える小屋取に向かった。坂道を登り始めた右手の傾斜地に、プレハブで建てた二棟の仮設住宅があった。住宅の見えない山間地で近くにコンビニなどの店舗もない。坂がきついので自転車も使えないだろうしバス停もない。周辺に人気が感じられないがどうやって生活しているのだろうと気になった。

豊かな山林の中を原発建設のために拡幅整備された曲がりくねった道路を走りながら、20年前にこの道を夜中に7時間も歩いて集落に取材に行ったという小岩さんの話を聞く。何をしているのだと、通りかかった村民にいぶしかられ、「まあ乗ってけや」と同乗させてもらい、仕方がないなあ!と自宅に泊めてもらったこともあったという。車を買う金がなかったのだ。
通ううちに村民の信頼を得ていったのだと思うが、その後意を決してスクーターを手に入れたという小岩さんの今の車は、中古の小ぶりの四駆である。

この道の下の沿岸沿いには、横浦や飯子浜という集落と漁港がある。しかし2011・3・11。これらの小さな集落はほぼ壊滅してしまったという。

小さな堤防があり、晴天の中で数隻の漁船が舫っている小屋取港のさざ波のたつ海の色が鮮やかだ。でもここで魚を釣ることはできない。気になっている対岸の逆光の中に見える女川原子力発電所は、何事もないような姿でひっそりとたたずんでいた。無論人気はない。
その東北電力女川原発。巨大地震と津波にもかかわらず安全に停止したと伝えられ、HPにもそのように記載されているが、5系統ある電源のうち4系統が落ち、翌月4月7日の余震でも4系統が落ちた。
安全停止したのではなく、かろうじて止まったと小岩さんも言う。

帰りの山林の中で奇妙だが心に残る光景を目にした。道路は樹林が伐り開かれて時折日差しが注がれる。その中を車の高さで「シロセキレイ」が右に左に舞ながら僕たちを誘導してくれるのだ。スクーターで走った小岩さんは何度かそういう体験をしていて、シロセキレイにはそういう習性があるようだという。
あれからひと月を経た。小鳥が嬉々として舞う様子がさらに鮮やかに、この一文を書いている僕の目の前に浮かび上がるのだ。