日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

愛しきもの  マレーシアのスプーンとフォークとバターナイフ

2011-12-18 15:33:54 | 愛しいもの

柄にマホガニーと思われる茶褐色の堅木を埋め込んだ真鍮のスプーンとフォーク、そしてバターナイフがある。いつの間にか数が少なくなってしまったが、気に入っている食器達だ。
大きさも重さも手に馴染み形もいいが、見ているだけでも体温を受け止めてくれるような暖かさを感じるのである。

このスプーンなどとともに、金の小ぶりな三角錐をぶら下げたネックレスを妻君にプレゼントしたことも思い出した。こういうアクセサリーを身につけない妻君は苦笑したが、時折取り出してこれもあんたのもになるよ、なんて娘に言っている。
クアラルンプールのお店の店員との談笑しながらのやり取りをうっすらと憶えている。談笑といっても値引き交渉だったのだろうけど。

ところでいつマレーシア(クアラルンプール)を訪れたのかよく憶えていない。保管してあるパスポートを取り出してめくってみたら、25NOV1990とある。21年前になるのだ。ところでこのスプーン達はともかく、この旅は奇妙なエピソードに満ちていた。

事務所の慰安旅行をかねて、大学の後輩や、親しい知人のグループを誘い十四、五人でツアーを組んだ。目的地はシンガポール。屋台で初めてのクロコダイル・ワニの肉を食った都市だ。丹下健三の設計した大学や超高層オフィスビル見学などを組み込んだ。ところが直行便が取れずマレーシア航空便になり、クアラルンプールでトランジットして美人ぞろいのスチュワーデス (無粋な客室乗務員という呼称ではなく、当時はまだそう言っていたのではないかと思う) 揃いだという楽しみなシンガポールエアラインに乗り換えることになっていた。

ところが乗り継ぎ手続きのもたつきにハッとなり、係員に強要して裏通路から (緊急無手続き出国ということになる) バッゲージルームに行ってみたら、止まっているベルトコンベーアーの脇に、僕たちの荷物が一塊になってひっそりと置かれていた。

さて帰国(クアラルンプールに立ち寄り夜行便で帰国)。飛行機が怖い嫌がる所員を無理やり連れ出した報い(?)のためか、彼女の体調がおかしくなり、ツアーメンバーをバスに残して待機させ、迎えに来た救急車で近くにあるという病院に向かった。
僕は異国の病院とその診療体制を見ることができると浮き浮きしたりしたが、患者はでこぼこ道で跳ね上がる猛スピードの車に、悪態をついた。僕たちは、モスクの見学や繁華街を案内してもらってスプーンを買ったりしたが、患者は空港のホテルの一室にて静養させる。

成田の入国は僕の押す車椅子。手続きが終わると彼女はけろりとして帰宅。あれはなんだったのかと思い起こすと、なんとも申し訳ないような気持ちになるが、其の所員は帰国後すぐに退所してしまった。
バブル期のお粗末な一幕である。