日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

四国の建築 四国鉄道文化館と十河信二記念館

2011-03-06 16:03:58 | 建築・風景

愛媛県宇和郡の、レーモンド事務所が設計した鬼北町庁舎の存続を検討する「鬼北町庁舎再生検討委員会」が3月3日に結審し、まちが新たに諮問する次年度の委員会(詳細は未定)に引き継がれることになった。僕が委員として関わったこの委員会の経緯は興味深く、広く伝えることは大切だと思うので、公開できる時期がきたら報告したいと思っている。

四国の風景は多彩でそこに建つ建築にも好奇心が刺激され、委員会に出席する毎に時間をとってみて歩いた。この機会にその幾つかを紹介してみようと思う。

JR予讃線の伊予西条駅に隣接して(構内だそうだ)、木造による「四国鉄道文化館」と「十河信二記念館」が建っている。
設計したのは、鬼北町庁舎の再生検討委員会の事務局(この委員会は建築学会四国支部に委嘱された)を担った砥部町に在住する建築家・和田耕一さんである。和田さんは八幡浜市の日土小学校の保存再生の実施設計を行った現在では、四国を代表する建築家の一人だと僕は考えている。

この二つの建築は`第六回木の建築賞`を受賞していてその存在は知っていた。
竣工したのは、2007年、0系新幹線とDF501ディーゼル機関車を展示する大きな空間を、地元に産出する杉の丸太を大胆にアーチ状に曲げて骨格を造り、その外側の外壁部には柱の中にガラスをはめ込んで均一な採光と、更にその外側にこの木の構造を支える柱とブレース(筋交い)による端正なフレームを林立させた。
パンフレットに掲載された写真を見ると、日が落ちると電灯に照らされた内部空間が浮かび上がってきて幻想的な風景が現れるという。ちなみに`四国照明賞`(照明学会)を受賞している。

僕が気になっていたのは、四国鉄道文化館の手前(駅寄り)に建つ十河信二記念館のガルバリウム鋼板縦ハゼ葺きの屋根が、文化館とは異なっていてほとんどフラットで、外壁が同じく土佐漆喰ヨロイ塗りとはいえ大壁風で、文化館とは意匠が異なっていてその調和だった。
そして今回も建築は観なくてはわからないということになった。このデザインはいい。

二つの建築の南面は予讃線の線路に面しているが、広場をはさんで、昭和初期の木造建築が建っている。観光交流センターとして使われているがシンプルな切妻屋根の建物、この建築をどう捉えるか、というのが和田さんの一つの課題だった様な気がする。そして現代の木造にトライした。単なる切り妻にはしなかったのだ。
和田さんによると、太い丸太を曲げたのは構造の相談をした増田一眞さんからの示唆によるのだという。ちょっと無理っぽいが創ったという実感があるだろう。呻吟しそして創った建築家の喜びが伝わってくる。

文化館にはNゲージの鉄道模型がある。案内してくれた人が動かしてくれた。子供たちは大喜びだろう。ちなみに第四代総裁として国鉄を率い、新幹線計画を実現した十河信二氏は、西条市第二代市長を勤めた地元の誇る偉人である。

さて一言、パンフレットにも展示室にも設計した建築家の名がない。施工者の名もあったほうがいい。
建築を観るたびに思うのだが、これは建築界の課題だ。