日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

植田実写真展 「空地の絵葉書」

2010-02-14 14:23:52 | 建築・風景

最終日の夕方になってしまったが、青山のギャラリー「ときの忘れ物」での植田実写真展に出かけた。タイトルは「空地の絵葉書」。
植田さんは編集者として数多くの建築誌や建築書そしてご自身の著書で僕たちを触発してきたが、おそらく日本で一番、数多くの建築家と出会いそして数多くの建築を見てきた人だと思う。そして建築家を発見した。其れはつまるところ、その建築家の魅力を多くの人に伝えてきたということだ。眼力があるのだ。だから植田さんと建築の話をするのはちょっと恐いところもある。

「空地の絵葉書」。植田さんらしいロゴだ。
会場の挨拶パネルには、沢山の写真を撮ってきたがどうやら「絵葉書写真」としかいいようが無い、といったような、そうかな?と思いながらも読む僕たちを何となく納得させてしまうような名文が書かれている。いただいた案内葉書には細いペン字でこう書き込まれている。`送ってくださったデジカメの美しい組写真には参りました。これ、時代遅れの写真展なり`。

昨秋、OZONEと組んで行っているDOCOMOMOセミナーで、僕が司会をやって植田さんと建築家室伏次郎さんの対談を行い、室伏さんの設計したコンクリート打ち放しの「鷺宮の家」:デザイナー中森陽三邸の見学をコーディネートして中森ご夫妻との笑いに溢れた座談会を行った。そのときの、デジタルで撮った写真を組んでお送りしたのだ。
植田さんは建築を見ることと同時に膨大な写真を撮ってきたが、それは全てアナログ。フィルムはリバーサルで会場にいた奥様、やはり編集者の松井朝子さんに聞くと、ネガファイルは数百冊に及ぶという。

写真展はそのなかからセレクトして世界各地の建築の醸し出す光景をセレクトして展示した。植田さんは、僕は写真家ではないので!と謙遜するが、これはハイキーにしてとか、この部分を焼きこんでつぶしてとラボに指示したこだわりを僕に披露し、どうだろうね!と問いかけられた。
一見無造作に並べてあるように見えるが、実は周到に構成して展示してある。多分植田さんの中には自分の見てきたことを伝える物語が組まれているのだろう。
会場は植田さんを慕う人で溢れていた。建築学会「雑誌」の編集長になった早稲田大学準教授の中谷礼仁さんもいて、久し振りに話し込んだ。話題は三菱一号館特集問題。

松井朝子さんは、建築誌コンフォルトで僕のことを書いてくれたが、以来僕がコーディネートしたシンポジウムにパネリストとして話していただいたり、何となく内輪の人といった感じがしている。
その松井さんは、旦那には、とっくに70を過ぎたのだから、好きなことを出来る時にやったほうが良いのよといっているのだという。僕の眼からみると常に好きなことしかやっていないんじゃないの、といいたくなるが、いわれてみると僕もしょっちゅう妻君からそういわれているなあ!と苦笑したくなった。

室伏さんから相談があり、2月18日、ぼくはJIAの会議室で、JIAが発行する「JIA 日本建築大賞:優秀建築選」の冒頭に掲載する座談会の写真を撮ることになった。その座談会には、室伏さんたちと共に編集のサポーター・顧問として植田実さんも参加するのだ。オヤオヤ僕はカメラマンになってしまった。