日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

まち歩きの達人と三軒茶屋から下北沢へ

2009-12-27 12:56:23 | 日々・音楽・BOOK

まち歩きの達人がいる。と思ったのは三軒茶キャロットタワーの一角にある世田谷線の改札口から下北沢に向って歩き始めて1時間ほどたった頃、ふと見上げた先に日差しに輝いているキャロットタワーを見たときだ。歩けば2分のところを1時間をかけて徘徊する。
達人Mさんはそんなルートを僕たちに楽しませた。

改札口を出てすぐ妖しげな路地に入り込んだ。一瞬昔の三業地かと錯覚しそうな大正ロマンっぽい意匠の店構えと看板を掲げたBAR、スナックや居酒屋が軒を連ねる。
写真好きの6人(+K太君2歳はバギーに座ってキョロキョロと目を向ける)が夢中になってシャッターを押し始めた。と映画のポスターが目に入った。「さそり」や「チェイサー」の粒子の粗いモノクロ写真を組み合わせたポスターに写真心が浮きたったのだ。無くなったのがもう一昔になってしまった銀座の`並木座`によく名画を見に行ったものだ。ここ三軒茶にくれば見損なった映画に出会えるかもしれない。
懸けるのは多分ちょっと捻った映画で、我が若き日の胸の鼓動を感じた。衝撃を受けた`尼僧ヨアンナ`。石の塀に擦り付けた血とヨアンナのあの眼、こんなところでノスタルジーを味わうのもなかなかいい。

発端は(というほどのものでもないが)三菱地所設計のOさんから、まちを歩いて忘年会をやらないかとメールが来たことによる。数点の彼の歩いてみたい場所に、僕にちょっぴり気を使って厚木や下北(下北沢)の名があった。即座に下北(しもきた)にしようと返信した。小田急線の高架・地下化工事が進んでいて、完成すると路地を壊して大通りをつくるとされている。撮っておきたいと思っていたのだが、わが家から小田急一本で行けるので楽しようとも思ったのだ。
すると数日たってMさんから、三軒茶屋から下北に歩くことにしたとメールが来た。エエーツ!三軒茶屋?と思ったら、奥さんと一緒にロケハンをしたという。流石!だ。Oさんからは当日世田谷線始発駅から三軒茶屋に向うと喜び勇んだメールが来た。両膝の調子がちょっと気になるが仕方が無い!

下北に着いたのは陽が翳りはじめた頃になった。何度か歩いたまち、小田急線と井の頭線が交差する駅をとりまく沢山の飲食店などとともに、画廊、古書店、劇場などの文化施設を内在し、その周辺に住宅や教会などが配された奥深いまち、土曜日の午後、大勢の家族連れや大人で溢れている様子に驚いた。
冬至に近い師走。4時半には暗くなった。人が変わった。気がついたら「若者のまち」になっていた。

開店を待ってあちこち覘いて吟味した居酒屋に落ち着いた。まちとカメラ談義に花が咲く。
ツアイスの25ミリをつけたOさんのM8をMさんがいじくりまわした。僕はRUMIX GF1にズミクロン90ミリをつけて顔のクローズアップを撮る。笑いがはじける。花が咲くとはこういうものかと嬉しくなった。

メンバーはこうだ。これが建築家だ!と言いたい建築家O、年末、ローマに旅している銀行員から証券会社に移行した達人Mとその夫人、雑誌の編集者で写真家尾仲浩二の弟子Kとその子息K太、Yさんの妻になり女に磨きのかかった照明設計者Y、それに僕だ。