日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

四国建築旅余話(2) 出会い! 鳴門の張力 高知駅と新百合ヶ丘駅 

2009-12-23 21:58:18 | 建築・風景

四国を訪ねたのは7月31日から8月3日、盛夏だった。それから4ヵ月半が過ぎて師走。あと9日で新年だ。
枯葉が舞い寒い。季節はちゃんと巡るのだとふと思ったりする。札幌の上遠野事務所の梅村さんから雪で庭が真っ白になり、コルテン鋼でつくられた上遠野邸が地上から浮かび上がっているように見えるとメールが来た。

今年の四国の建築旅も最終回にしたい。
幾つか心に留まったことを書いておこう。

(1)写真を掲載した(四国建築旅7で)坂出人口土地にある小さな祠(神社)。長く住み地の人の心を捉えた団地だから生み出されたのだと感慨深い。塩田作業者の住む集落だったこの地に、地の神を祀る神社があったのかもしれないが、この人口土地はここに住む人の故郷になったのだ。

(2)センターコア形式で弥次郎兵衛式に中央の二本の柱から跳ねだした梁の先端を支えていると見た鳴門市庁舎のH鋼柱が、コメントをくれた工法の研究者toshiさんが、もしプルーべの解析した張力(支えているのではなく引っ張っている)を担っているのだとしたら、建てられた時代を考察すると大変興味深いと述べたことが気になっていた。僕の読んだ設計者増田友也御自身も参加した座談会や、研究者のこの庁舎につについての記述では構造解析に触れた例を目にしていない。
親しい工法の研究者、宇都宮大学の名誉教授になった小西敏正さんと飲んだときに問いかけたら、先端のH鋼柱に張力を担わせると構造が安定するんですよとこともなげに図示してくれた。
もしかしたら僕と藤本さんはその貴重な日本の先駆的な事例を眼にしたのかもしれない。

(3)陽が落ち明かりのついた「高知駅」を見た。この駅舎は内藤廣の設計による。集成材と鉄を組み合わせた見ようによっては無骨な梁を大胆に使って円形の屋根を作り、打ち放しコンクリートの柱で支える構成は、牧野富太郎記念館のコンセプトに通じる。
2008年度の鉄道建築協会賞や高知のランドマークを形成したと日本鉄道賞のランドマークデザイン賞などを取った。僕の親友篠田義男さんの設計した「小田急線新百合ヶ丘駅舎」が鉄道協会賞を同時受賞(佳作)した。

新百合のプラットホームに円の組み合わせによる文様が掘り込まれているが、彼はそれを八王子の方向に向う多摩線の発車地にちなんで八王子の絹の道をイメージして繭を描いたのだという。それを設計者の特権として楽しんだのだろうが、受賞の原点は、コンコースの光の呼び込みや駅舎の自然の空気の対流を考察した空間構成である。
駅舎も建築作品で建築家の思いがこもっているのだ。

今夏の旅で四国が身近になった。旅の帰りに立ち寄った砥部市の建築家和田さんから電話があった。鬼北町(旧広見町) 役場を訪ねたという。
思い立って出かけると友人ができる。終生の。人と出会うのが旅だ。
四国、四つの国はそれぞれ気質も違うし建築感も違うのだといわれた。
土佐の先輩、親分肌のいごっそうが身近にいるのでなるほどとは思ったが、駆け足では四国が掴めない。でもそういわれると好奇心が刺激されるのだ。さて・・・