日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

旅 トルコ(11) イスタンブール歴史地区を歩く①イエニ・ジャーミィから

2007-04-26 14:49:37 | 旅 トルコ

イスタンブールの旧市街、つまり世界遺産になっている歴史地区にも触れよう。
このトルコの旅は、DOCOMOMO世界大会に参加するために出かけることにしたのだが、イスタンブールという名前を聞いただけで心が動いた。

ヨーロッパとアジアの入り混じった街。かつてスパイが暗躍し、アガサクリスティの愛した都市。街の喧騒とともにベリーダンサーの妙なる肢体が目の前に浮かんできたりする。冒険・スパイ小説に少々毒されていると我ながら思うが、帰国して半年も過ぎるとさすがに印象が少し薄れてきたものの、それでも書き記したメモや撮った写真を見ると、一つ一つが鮮やかに蘇ってくる。

帰ってきて感じたのは、僕たちが行こうが行くまいが、トルコはトルコだということだ。イスタンブールもアンカラもカッパドギアも。
そこに行けば変わらない姿でいつもそこにある。時が紡ぎだしてきたそれが歴史なのだろうか。
その感慨は日本の街、つい最近訪れた沖縄や金沢や札幌、そして京都、1300年を経た法隆寺の建つ奈良などとも少し違う。異国からの旅人の僕をすぐに同化させてしまうエネルギーと無頓着な深い懐とでも言いたくなる街。ニューヨークでもない街。コーランに満ち満ちているが、それさえも僕のもののような気がしてくるから不思議だ。

ところでイスタンブールを歩いたのは初日と最終日の2日間である。
初日は、ホテル ぺラ・パラスを出た後新市街に迷い出てしまったが、今となってはそれも楽しいことだった。
現代美術館のレストランで食事をした後、トプハーネ駅から路面電車トラムヴァイに乗ってガラタ橋を渡り、エミノユで降りる。
乗り方がわからないので、駅の前の広場の石垣に腰掛けてぼんやりと様子を窺っていたら、後ろの椅子に腰掛けていた叔父さんが近寄ってきた。何を言っているのかわからないが、そのうち写真を撮ってくれという。立ち上がって2枚撮ったもののそれだけだ。不思議が始まる。

アナソフィアもブルーモスクも素晴らしいが、僕が最も感銘を受けたのは、ガラタ橋の前に建つ1663年に完成したという「イエニ・ジャーミィ」だ。両サイドに塔が建ち大きなドームと小さいドームのバランスもいいが、内部のドームに張られたタイルは繊細でえもいわれぬ美しさだ。
壁を背にした片隅に大勢の人が座っていて、中心にいる人が見事なバリトンでコーランをうたっている。それがドームの中に累々と響き渡る。
一廓の天井のタイルを筆を持って4人の女性が修復していた。昔見せてもらった日光東照宮陽明門の修復工事を思い出す。ここもこうやって歴史を伝えてきたのだ。

隣にあるエジプシャンバザールに入りその賑やかさ、その店員のノー天気な明るさに思わずにやりとしてしまう。そうだここでお土産を買ってしまおうと思った途端、つい店員に乗せられた。お菓子をつまみ口に入れる。美味いじゃないか。数箱に分けて様々な種類を詰めてもらうことになった。まあいいか!

人をかき分けながらこのバザールを抜けて、坂を上ってスュレイマニエ・ジャーミイに行く。ガラタ橋からイエニ・ジャーミィとその背後の丘の上に見える姿がとても美しかったからだ。ここは人が閑散としていてそれはそれで居心地がよい。
庭に出ると付属屋のドーム屋根の修復をのんびりやっていて見とれてしまった。

イスタンブールは喧騒に包まれて活気に充ちているが、時間が止まっているなあ。
はてドームはこんな土(?)を固めてできているのか?