日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

生きること(4) 一歳になった

2006-07-09 00:52:45 | 生きること

「初の誕生日に・父の感想」
紘一郎よ
お前が生まれてから丁度一年になる。お前が大きくなってから知ることだが、今は日本にとって非常に難しい時で、すべての物が統制。自由にものが買えない時代なのだ。そしてお父さんはメトロ電気工業といふ小さな会社の一サラリーマンに過ぎない。あれも買ってやりたい、これも買ってやりたいと思ひ乍ら、思った通りの事が出来ないのだ。
だけどお前は元気にすくすくと育ってくれる。嬉しいことだ。
会社から疲れて帰っても、お前の笑顔を見るとそれで救われる気持ちだ。この一年間にお前の写真を何枚撮っただろう。生まれた時からの写真で、お前の成長振りがよくわかる。
これから先も元気でうんといたずらをしてくれ。

「母の感想」
紘一郎が生まれて一年たった。本当に早い。病気にもならず、元気に発育も早く、大きくなってくれた。紘一郎が生まれて家の中がにぎやかになった。紘一郎を相手にしていると、面白くて楽しくて。
本当に子供の可あいさがしみじみわかった。いろいろなものが不足で紘一郎が気の毒だと思うが、でも元気に大きくなったので何より有難い。

父へ
僕は大きくなって、父が迎えることができなかった還暦も過ぎて、この日誌をよんでいる。そして父や母の想いを書き記している。母がまだいるときに書いておきたいのだ。
日誌によると、生まれて三十六日目に高円寺の写真屋さんにいって写真をはじめて撮った。お天気がよくて暖かいので写真屋さんにいった、とあえて書くところに両親の気持ちが読み取れる。この「吾が児の生立」の冒頭の写真だ。父はこの写真を持って会社に行き、皆に自慢しているようだ。うれしかったのだろう。
時々阿佐ヶ谷の従兄弟に来てもらって写真を撮ってもらったりしたようだが、7月にとうとうカメラを買ってしまった。

「この間お父ちゃまが写真機をお買いになって、盛んに紘一郎をうつしていらっしゃる。大きくなるとよい思い出になるでしょう」
有難いことだ。でも吾が愛妻は僕が娘を父にも増して撮っているのに、うつして 「`いらっしゃる`」とは書かないだろうな。