田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

超短編 20 青白い月の光  麻屋与志夫

2012-10-15 07:17:46 | 超短編小説
20 青白い月の光 

「吸血鬼でも出そうな夜だ」

なぜか、Kがふい、ボソッとつぶやいた。

首筋にジットリと汗がふきだしている。

肩を組んでいた。

飲み過ぎていた。

それでも倉橋は「もう一軒と」若さから応えていた。

「なんだか、いやな夜だ」

Kはおびえている。

「おれがついている。心配ないって」

雑居ビルの立ち並ぶ裏路地をぬけた。

飲み屋街にでた。

焼き鳥。

もつ鍋。

おでん。

エビを焼く匂いが狭い路地にたちこめていた。

倉橋はまだ飲み足りなかった。

「今晩は。わたしのこと呼んだかしら」

夜の街に生きる女が近寄ってきた。

Kは道端に吐いていた。

「きれいだ。きれいだ」

吐きながらKは女に声をとばしていた。

「うれしい……」

その女の口紅はとてつもなく赤かった。

白いきれいな歯をしていた。

夜の闇を彷徨する女だった。

女はさいごまで、言葉を紡げなかった。

雲がきれた。

満月があらわれた。

満月の青い光が狼憑き(リカントロープ)をひきおこした。

倉橋は犬歯をクサビのように女の首にくいこませていた。

 




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