田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

あなたの背にも死神が? /三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-06-16 12:56:20 | Weblog
第二十章 酒の谷唄子

8

唄子は麻薬をやっていた。
野外パーティで両手をあげてハシャいでいた。
夫婦で踊りまくっている同じ映像。
なんどもテレビで放映されている。
オチメのタレントほどかわいそうなものはない。
人気が一日で逆転する。
そうなると風評被害もともなってとめどもなくおちていく。

日輪教団に捕らえられていた。
あのときマインド・コントロールにかかっていた。恐れがある。
なにをゆっても、ムダみたい。
それでも「帰ってきて」と呼びかけた。
「そこは危険なのよ」

わたしはパニックルームにいる。
外にはでられない。
庭には黒服がおおぜいいる。
死闘はつづいている。
母も里佳子おばさんも、キリコも隼人も百子もみんな戦っている。
長押にかけてあったナギナタ。
床の間の刀。
あれがみんな真剣だった。
知らなかった。

パニックルームが役に立つなんて。
想像もしなかった。

こうしてフツウの生活をしている。
フツウの家が襲われるなんて恐怖。

戦いをモニターで見ているだけのわたし。
なんの役にもたたない。
歯がゆい。
悲しい。

黒服が一団となって襲ってきた。
わたしたちの憩いの庭に侵攻してきた。
平穏な日常が、いかに酷くくずれるか。
破壊されるか。
バラの庭がもうめちゃくちゃだ。
春にはまたバラが見られると。
みんなで楽しみにしていたのに。
理不尽だ。
なんてことが、起きたの。
黒服。
まるで津波のよう。
そう黒い津波。
黒服は溶けあって黒い波。
魔の波動となった。
庭に満ちている。
黒服は集まって融合した。
悪魔として凝集した。
暗黒の津波となって。
わが庭に充満している。

平凡な家を。
平凡な家庭の団欒を。
悪の津波は破壊した。
わたしたちを殲滅しょうと襲ってきた。
この黒服の襲撃を悪魔の所業と思った。
嗅ぎ取った。
認識した。
美智子は黒服の集団の巨大さに慄いた。
そして黒服の波動は……。
唄子ものみこもうとしている。
部屋の床からたちのぼってくる寒気に美智子は戦慄した。
わたしたちは、歴史のターニング・ポイントに。
いつしかさしかかっていたのだ。
いままでのなんの変哲もない日常。
消えようとしている。
不安MAX。

美智子はあいつぐトラブルに襲わた。
DNAのなかに潜んでいた能力に目覚めたようだ。
唄子があぶない。
唄子は死神にとりつかれている。
憑依されている。
唄子の背中の死神が。
見える。


 今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。

にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へにほんブログ村
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人形であるはずがない/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-06-16 06:57:16 | Weblog
第二十章 酒の谷唄子

7

美智子はパニックルームにひとりとりのこされた。
二階、トイレの隣から。
玄関の脇から。
何箇所か入口はある。
広い地下室だ。

モニターをつけた。
すさまじい戦いだ。
みんな無事にもどってきて。
神に祈った。
なんの気なしに、門の外にきりかえた。
そこで、美智子は息をのんだ。
さいしょはわからなかった。
舗道の暗闇に――。
いくつも人形が倒れていた。
まだ動いている。
人形であるはずはなかった。
クノイチ48。
彼女たちだ。
クノイチ48。
彼女たちが門扉の外で黒服と死闘をくりひろげていたのだ。
クノイチ48。
彼女たちが黒服が門扉からなだれこむのをくいとめていた。
だから狙撃されてから門扉が破られるまでにタイムラグがあったのだ。
美智子は泣いていた。
涙がながれていた。
とめどもなくながれた。
ひとは、だれかに支えられている。
そのだれかの名前も顔もわからない。
でも、そのひとたちの支えで、
そのひとたちとの絆で、
救われている。
わたしたちが、
今あるのは、
そうしたひとたちのおかげなのだ。
わたしの映画を三年も待ってくれたフアンがいた。
ありがたい。
うれしい。
ありがとう。
そして。
クノイチ48のメンバー。

救急車が到着した。
みんな、助かって。 

警官が到着した。
パトカーが来た。

ふいに携帯がなった。
唄ツピーと名前がでている。
「ブジ帰れたから。家にいるから」
「どうして? どうしてわたしのところにいなかつたの」
「迷惑かけられないから……」
「わたしのところのほうが安全だから」
「わたしの部屋でないとモーがおちつかないのよ」
「わたしは、唄子さんにあこがれて芸能界にはいった。
あたたかく、唄子さんは迎えてくれた。
それからずっと世話になってきた。
こんどは、わたしが守る。唄子のことまもるから」



 今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。

にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へにほんブログ村
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする