田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

わたしマトリガールズよ/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-06-07 08:52:28 | Weblog
第十九章 麻薬汚染

4

なにか、ときめく夢ほをみているようだ。
美智子のことばかり想っている。
ににか、女々しいようではずかしい。
 
隼人は街にでた。
街は新宿。
歌舞伎町。
日々進化する街
たとえそれが、破滅にむかう変転でも。
ひとは進化と思いがちだ。

美智子への想いをひめたまま隼人は街でた。
麻薬を取り締まるというより、その浸透がみたかった。
末端のごくふつうの人びとが麻薬をどのようにして入手しているのか。
じぶんの目でみたかった。

歌舞伎町スクェアに面したパチンコ屋の脇の路地。
黒服がたむろしていた。
「おにいつさん、イイクスリアリマスヨ」
中近東の男だろう。肌が浅黒い。
「ハっパもあるよ」
しきりと、執拗に誘う。

「ヤバイ。手入れだ」

そばで、だれかが、ひくく注意をうながす。
隼人にからんでいた男がさっと離れていく。
路地裏に逃げこんだ。
その姿勢のままバックしてきた。
男の目前にジーンズに皮ジャンの男が迫っていた。
刑事が麻取なのか?
バイ人は隼人を突きとばして走りだした。

隼人はよろけた。
よろけたまま、パチンコ屋の透明ガラスのドアを押した。
ブアンとした騒音。
熱気。
頭がくらくらとした。
いま目撃したことがウソみたいだ。
バイ人に声をかけられたことなど。
現実感がない。

「隼人、ケガなかった」
キリコだ。
「どうして、ここに」
「やだあ。グウゼンヨ。たまたま見かけたの」
「いまのひとたち、マトリ? なの??」
「わたし、麻取りガールズに仮採用されたの」
「えつえええ」
「無収入じゃ生きてイケナカッペナ」
「あの男をおいかけよう」
ふたりはパチンコ屋からとぴだした。
「美智子さんとこは……」
「心配ない。
百ちゃんたち、バンパイァ・バスターズに頼んでおいた。
わたしと隼人だけでは守りきれないよ」

「グッドアイデアだ」
ほめられてうれしかつたのかキリコはクスンと鼻鳴らした。
ふたりは走りだしていた。
バイ人を追って走りだしていた。
「顔は覚えているから」
隼人のタノモシイ言葉だ。



 
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