田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

黒服の総攻撃/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-06-13 10:47:12 | Weblog
第二十章 酒の谷唄子

4

「二階よ!!」
それまでなにか考えていた。
沈黙していた百子が叫んだ。

「襲撃だ!!」
隼人の脳裡にこのところ戦いつづけている黒服の姿がうかんだ。
どうして、やっらはこうも執拗に襲って来るのか。
百子と隼人は、同時に行動していた。

まだほほにやつれの残っている翔太郎が唄子をかばっていた。
窓からは死角になっている壁際にいた。
ふたりは壁に背を押しつけていた。
「わたしこわいよ、こわいよ。死にたくない」
さきほどまで死ぬことを考えていた唄子がふるえていた。
「死にたくない。死にたくない」
猫のモーが毛を逆立ててうなっている。
猫にしかわからない。
異様な気を感知したのだろう。
「だいじょうぶ。わたしたちが守るから」
唄子を励ましながら、百子は窓から外を覗いている。
街灯の明かりの中でクレーンがみえた。
小型のクレーンのうえには人影が。
「そのまま動かないで。敵は高いところから狙っている」
隼人は拳銃をかまえた。
しかし暗闇でうまく標的をとらえられない。
敵は暗視装置つきのライフルを使っている。
のだろう。
大通りを小型のクレーン車できた。
二階の窓よりは少し高い場所から狙撃している。
唄子がぼそぼそひとりごとをいっている。

バシッバシッと壁に銃弾が撃ちこまれた。

「心配ないぞ。みんながついている」
翔太郎が衰弱しているはずの体から、元気な声をだす。
「みんながいるから。唄ちやんのこと守ってくれる仲間がいる」
それでも唄子のおびえはおさまらない。
唄子だけではない。
翔太郎も狙われているかもしれないのだ。
百子の携帯が鳴った。
「リーダ。大丈夫ですか」
美智子の家のガード任務についていたマキからだった。
「黒服。ワンサカきています。警備やぶられました」
「黒服が攻めこんでくるよ」
隼人がクレーンに向かって発砲した。
ピストルで狙うには距離がありすぎる。

「タマをムダにしないで。わたしに作戦がある」
百子は裏の非常階段に走る。
門扉が開かれた。
黒服がなだれ込んでくる。
 
隼人は眼下の黒服を撃つ。
玄関に迫った男が倒れた。
「キリコ!! 二階にあがれ」
隼人は大声で階下へ叫んだ。
「きこえたわよ」
キリコの声がした。



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